特急運行路線と特色
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近鉄路線501.2kmのうち、その約8割にあたる405.8kmにおいて特急運用を行なっている。運行路線の中には、大和八木駅付近の橿原線と大阪線を直通するための新ノ口短絡線、伊勢中川駅付近の中川短絡線、鶴橋駅付近の奈良線と大阪線を連絡する渡り線等、特急専用軌道も存在し、さらに近鉄名古屋駅に近接する米野車庫も半ば特急専用の折り返し整備基地となっており、頻度の高い特急運用を行なう近鉄ならではの設備がある。 特急運行路線の内、標準軌線区間が340.8km、狭軌線区間が65.0kmで、後者が大阪阿部野橋駅 - 吉野駅間系統(吉野特急)に該当し、他の系統とは一線を画している。また、運行路線の大部分が複線で、単線区間は志摩線の一部と、吉野線に限られている。 特急は区間によって110km/h以上130km/hまでの高速運転を実施することから、地上設備においても架線の改良、ATS上限速度向上、軌道強化によって対応している。なお、130km/h運転は、カーブの多い近鉄路線の中ではごく一部区間に限られている。 本記事「特急運営について」で見た通り、近鉄路線の採算面における脆弱さから、鉄道事業継続のためには特急料金収入は大切であり、そのため特急優遇とも取れるダイヤが各路線で展開されている。それが顕著に現れるのが大阪線榛原以東から志摩線までのローカル区間で、時間帯によっては急行以下の列車本数と特急本数が同等か、あるいは特急が上回る場合もある。また、特急優先ダイヤを設定したため、急行以下の列車を追い抜いて、特急の高速輸送を可能にするための待避線を多くの駅に設置している。 大阪線桜井駅以東と山田線は、参宮急行電鉄によって建設された路線で、大阪と伊勢を直結させることを当初の目標とした。免許取得時点では現在よりも南寄りのルートだったが、地形上の問題や将来の名古屋進出を見越して伊賀盆地、布引山地を越えるルートに変更された。そして、大阪 - 伊勢間の所要時間を2時間30分と見込んだことから伊賀盆地と布引山地の前後区間における急峻な勾配区間も高速走行が要請され、このため大出力モーターと電気ブレーキ装備の2200系が製造されている。そして、この条件がそのまま近鉄に受け継がれ、後年、新青山トンネルの開通で若干負荷が軽減されたものの、それでも今なお、近鉄路線では最大の難所とされている。この山越えに対する特急車の対応策については「特急車両のメカニズム」を参照のこと。 難波線は通勤通学輸送が主体。このため特急の乗り入れには一定の制限がある(大阪難波駅) 難波線直通特急は大阪難波駅ないし阪神なんば線桜川駅構内の引き上げ線で折り返す。(桜川駅) 現在、特急が大半の路線で共通運用可能とされているのは、度重なる路線改良工事の賜物である。近鉄は合併の繰り返しによって形成された歴史を持つため、各社各様の仕様を引き継いだことから、軌間や建築限界、架線電圧が各線で異なっていた。これを大阪線、山田線の仕様に統一するため、幾多の工事を経ることになった。古くは名古屋線改軌に始まり、奈良線、橿原線、京都線の昇圧及び建築限界拡大、志摩線の改軌や、ベースとなった大阪線の全線複線化も含め、1950 - 70年代にかけて大掛かりな工事が連続した。この改良工事によって標準軌線の仕様が統一され、特急車両の全線共通運用が可能となったことで運用効率が向上し、併せて線路容量増大によって高頻度運転も可能となった。 大阪側の末端線である難波線は大阪上本町駅から大阪難波駅に至る2.0kmの全線が地下路線となっている。建設目的が鶴橋駅、上本町駅における難波方面への市電と市バスの乗換時の混雑解消であったことから難波線は通勤通学需要に応えるべく奈良線の一般列車の乗入れを優先とされた。従って同線への特急乗入れはこの通勤通学輸送を阻害しない範囲で検討されたことから乗入れ特急の選定に当たっては日帰りビジネス客の需要が多い名阪特急と賢島直通の阪伊特急に限ることとした。1994年 - 2003年には伊勢志摩への玄関口を上本町駅に統一する近鉄の施策によって、日中の阪伊特急(甲・乙とも)が全て上本町駅発着となったものの、その後は阪神なんば線開業後の現在に至るまで概ね踏襲されている。なお、現時点では定期特急の阪神電鉄線への直通運用はないため(団体列車の乗入れについては後述)、特急列車は大阪難波駅引き上げ線あるいは桜川駅西側の引き上げ線にて折り返し運用となっている。 特急運行路線特急運行路線 例(左から):路線記号、路線名(区間:キロ程:経由する系統)、路線内の特急停車駅※ Aは接続路線で路線記号で表示。例えば、布施D ならば布施駅で大阪線と接続の意味。 但し、路線記号が重複している路線の場合は右上の数字で補記する。例えば、難波線と奈良線の場合はAで重複するため、難波線をA1、奈良線をA2と表示する。 駅の呼称は省略した A1 難波線(大阪難波 - 大阪上本町:2.0km:名阪、阪伊、阪奈) 大阪難波 - 大阪上本町D D 大阪線(大阪上本町 - 伊勢中川:108.9km:名阪、阪伊、阪奈、京伊) 大阪上本町A1 - 鶴橋 - 布施A2 - 大和高田 - 大和八木B4 - 榛原 - 名張 - 桔梗が丘 - 伊賀神戸 - 榊原温泉口 - 伊勢中川EM5 A2 奈良線(布施 - 近鉄奈良:26.7km:阪奈、京奈) 生駒 - 学園前 - 大和西大寺B3B4 - 近鉄奈良 B3 京都線(京都 - 大和西大寺:34.6km:京伊、京橿、京奈) 京都 - 近鉄丹波橋 - 高の原 - 大和西大寺A2B4 B4 橿原線(大和西大寺 - 橿原神宮前:23.8km:京伊、京橿) 大和西大寺A2B3 - 西ノ京 - 大和八木D - 橿原神宮前F8F9 E 名古屋線(伊勢中川 - 近鉄名古屋:78.8km:名阪、名伊) 伊勢中川DM5 - 久居 - 津 - 白子 - 近鉄四日市K - 桑名 - 近鉄名古屋 M5 山田線(伊勢中川 - 宇治山田:28.3km:阪伊、京伊、名伊) 伊勢中川DE - 松阪 - 伊勢市 - 宇治山田M6 M6 鳥羽線(宇治山田 - 鳥羽:13.2km:阪伊、京伊、名伊) 宇治山田M5 - 五十鈴川 - 鳥羽M7 M7 志摩線(鳥羽 - 賢島:24.5km:阪伊、京伊、名伊) 鳥羽M6 - 志摩磯部 - 鵜方 - 賢島 F8 南大阪線(大阪阿部野橋 - 橿原神宮前:39.8km:吉野) 大阪阿部野橋 - 古市 - 尺土 - 高田市 - 橿原神宮前B4F9 F9 吉野線(橿原神宮前 - 吉野:25.2km:吉野) 橿原神宮前B4F8 - 飛鳥 - 壺阪山 - 吉野口 - 福神 - 下市口 - 六田 - 大和上市 - 吉野神宮 - 吉野 以下は臨時運行路線 K 湯の山線(近鉄四日市 - 湯の山温泉:15.4km) 近鉄四日市E - 湯の山温泉H 天理線(平端 - 天理:4.5km) 天理 以下は団体専用列車運行路線 阪神なんば線(尼崎 - 大阪難波:10.1km) 尼崎 - 西九条 - 大阪難波 阪神本線(神戸三宮 - 尼崎:22.3km) 神戸三宮 - 西宮 - 甲子園 - 尼崎 特急専用線の鶴橋駅付近のポイントを渡る名阪特急 特急専用線の新ノ口短絡線を行く京伊特急左の直進線路は橿原線 特急専用線の中川短絡線を行く名阪特急 志摩線の単線区間を行く22000系(上之郷駅付近) 最高速度130km/hを許容する標識(東松阪駅付近) 待避線を持つ駅は多数存在する(櫛田駅)
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