滑走路延伸構想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/10 10:00 UTC 版)
1995年に北海道および札幌市が滑走路を1,400 mから2,000 mに延長する方針を示したが、騒音増大を危惧する住民運動が活発になったこと、それに加えて自衛隊による活用の幅が広がることを危惧する左派が強く反対したこと、一都市圏にジェット機が離着陸する空港を2つも抱えることの是非なども問題となり1997年にジェット機化を断念するに至り、最終的に滑走路の延長計画は当初より縮小され1,500 mとなった。 2012年10月には、札幌商工会議所が「札幌広域圏の総合交通体系グランドデザイン」を策定し、札幌市、北海道、北海道開発局、北海道運輸局に提言書を提出した。北海道新幹線の札幌延伸を契機に、本州⇒道央⇒道内各地との交通ネットワークを強化するため、この提言書では「札幌駅と札幌北インターチェンジを直結する都心アクセス道路の整備(国道5号創成川通)」「丘珠空港の機能拡充と地下鉄東豊線の空港乗り入れ」「札幌駅前再整備」の3構想が盛り込まれた。新幹線札幌駅の乗降客数は約2万人/日が見込まれているが、関東・東北・道北・道東・アジア・極東との連携で乗降客数を3万人に増やす目標を掲げている。 2015年12月、札幌商工会議所は、丘珠空港の滑走路延伸事業を含む「さっぽろ成長戦略〜Sapporo引力」の提言書を秋元克広札幌市長と山谷吉宏北海道副知事に提出した。丘珠空港のジェット化に向けて、最低でも滑走路を300 m延伸する必要があるとしており、期待される整備効果として下記の点を挙げている。 国内線の増便:小型ジェット機の通年運航が可能になる。また、格安航空会社 (LCC) の参入により、新規需要が見込める。 新千歳空港の国際化促進:一部の国内線を丘珠空港に移すことで、新千歳空港の国際線発着枠を拡大できる。 近距離国際線の乗り入れ:防衛上の理由から新千歳空港への乗り入れが規制されている中国やロシアからの国際線の受け皿となる。 防災拠点化:緊急物資輸送の主力となっているC130-H輸送機が離着陸できるようになる。必要な滑走路延長は1,600m。 医療拠点化:ドクターヘリによる道内各地への医師派遣、メディカルウイングによる札幌市内の高度医療施設への患者搬送、海外からの医療観光に対応できる。 後背地の活用:統合型リゾートや国際会議場が立地する可能性がある。 その後2016年6月にはフジドリームエアラインズが滑走路延長の検討を提唱し、北海道と札幌市の「丘珠空港の利活用に関する検討会議」での2018年2月の試算ではFDA機の通年運航を可能とする1,800 m案で総事業費98億円・札幌市負担7億円、より多くの機種の通年運航が可能となる2,000 m案で総事業335億円・札幌市負担25億円と試算された。札幌市側は2018年度より市民アンケートや地元説明会・パネル展示を行い地元の理解醸成を図り、北海道新幹線札幌駅延伸による観光客増加を見越して2030年度末までの滑走路延伸竣工を見込んでいたものの、2020年時点では新型コロナウイルスに伴う航空便の減便による需要減少や住民対話の停滞が生じ当初の想定スケジュールでの建設案の策定が困難となっている。 2020年6月には、学識経験者や住民による「札幌丘珠空港利活用検討委員会」の報告書がまとめられ、2,000 m延伸が望ましいとする一方で「現実的な対応を考慮する」として先行し1,800 mの延伸を早期に供用開始し2,000 m延伸を将来的な検討課題とする提案がなされた。 2020年7月には、北海道経済連合会(道経連)が「丘珠空港利活用に向けた需要予測等に関する調査と調査結果をふまえた今後の丘珠空港のあり方」に関する報告書を公表した。新型コロナウイルス感染症の収束後を見据えて、2030 年以降を視野に入れた長期的な視点で、北海道経済の発展に寄与する丘珠空港のあり方を提案する内容となっている。また、秋元克広札幌市長に対して、「東京を含めた道外大都市圏路線の開設等、空港の拡張性が大きく向上し、幅広い運航ニーズに対応が可能となる 2,000 m以上への滑走路延伸」と「空港ターミナルの新設や地下鉄東豊線の空港ターミナル乗り入れの検討」の2点を提言した。道経連は、「2,000 m以上への滑走路延伸の検討」と「札幌市が今後取りまとめる空港将来像の実現に向けた取り組みへの支援」を国土交通省に要望している。 2022年5月、札幌市は、新たな土地の確保や障害物になる建築物の撤去が必要ない1,800m案を採用した利活用方針をまとめた。滑走路延長により、夏季限定だったリージョナルジェットが冬も離着陸でき、通年で運航できるようになる。およそ10年後の整備を目指し、総事業費は250億~350億円を見込む。滑走路関係の費用は、国と地元(市・道)が85対15の割合で分担する見通し。空港の運用時間は前後30分ずつ延長し午前7時~午後9時とすることを国に求める。道外と結ぶ路線を、現在の3路線(三沢空港・静岡空港・松本空港)から10路線程度に増やすことを目指す。市の関係者によると、新たに誘致が検討されているのは名古屋飛行場・神戸空港・新潟空港・隠岐空港便だという。発着便は現在の1日最大約30便から約70便まで増え、年間旅客数は現空港ビル開業後でピークだった2006年度の約38万人の3倍近い100万人に増えると想定されている。市は、利活用案計画を5月23日開会の札幌市議会定例会で提示した後、地域住民への説明会やパブリックコメントを実施する。9月の市議会定例会で正式決定されれば、国に滑走路の延長を要望する。2030年冬季オリンピック・パラリンピックの札幌誘致を視野に入れた構想でもあり、「温度差はあるが国との協議はおおむね順調」だという。
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