構造、作動、型式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 01:50 UTC 版)
「九六式二十五粍機銃」の記事における「構造、作動、型式」の解説
九六式二十五粍機銃の構造はおおまかに銃架と銃身に分けられる。連装機銃及び三連装機銃は旋回銃架を用いた。まず礎台と旋回盤が最下部にあり、この上に架構が置かれる。架構は側板で銃の俯仰部分を支持し、銃鞍を載せている。銃鞍は銃身を搭載し、保持する。連装、三連装とも、架構を後方から見て右側に旋回手席、左側に射手兼俯仰手席が置かれる。旋回手は旋回ハンドルを受け持ち、射手は俯仰ハンドルを受け持つ。また座席の下部にはそれぞれ旋回電動機、俯仰電動機が置かれた。 重量44.8 kgの銃身は放熱筒付きで先端には閃光覆がつけられている。銃身下部にはピストンロッドを納めたガス誘導室、左右には発射の反動を緩和するため、駐退器兼推進器となるシリンダーが一本ずつ設けられている。銃身長は1,500 mm、ライフリングは右回り12条、250 gの弾丸を初速900 m/sで撃ち出す。作動はガス圧利用方式で、銃身と銃身下部のガスピストン、尾栓が後退と前進運動を行うことにより、装填、尾栓の閉鎖、発射、薬室からの撃殻排出を自動的に繰り返す。発射時、弾丸を押し出すガスの一部が銃身下部の孔からガス誘導室内部に入り、ピストンロッドへと導かれる。ピストンロッドはばねにより銃口方向へ力をかけられているが、ガス圧によってロッドがばねの圧力に対抗して押し下げられ、ピストンと連動して尾栓も後退する。撃殻排出後、尾栓とピストンロッドはばねにより前進を開始し、尾栓が弾倉から弾薬包を押し出して薬室に装填する。こののち尾栓が閉鎖される。 アメリカ側の作成資料では作動を以下のように説明する。トリガー機構が動かされると、シアがガスピストンのベントから外される。これでピストンと尾栓が前進後退運動可能になる。前進時、尾栓の前面が弾倉口から弾丸を一発押し出して薬室に押し込み、尾栓が固定位置まで来る。自由な状態のガスピストンがさらに前進すると尾栓が銃身に固定される。これは尾栓に取り付けられ、引き込められた状態にある2個のヒンジ状ロッキングラグが、銃身内部に強制的に押し上げられることによる。尾栓と接続したガスピストンはまた、尾栓前面から突き出るよう作られた打針も動かし、弾薬の雷管を突かせる。発射の瞬間、尾栓は閉鎖状態にある。弾丸発射後、薬室のガス圧が最大になるまで閉鎖が続く。弾丸が銃身内部のガスベントを過ぎるとガスがガス誘導室に入り、ガスピストン前面を押す。ピストン後退に伴って尾栓のヒンジ状ロッキングラグが下げ外され、尾栓が解除される。残留ガス圧が尾栓およびガスピストンの複合体を後退させ続け、後退ばねを圧縮する。このとき空薬莢が抜きだされ、エジェクターを叩いて機銃の下方へ排出される。機銃が弾丸を撃ち尽くすと、尾栓が後退し、コックしたままの状態で射撃を停止する。機銃には安全、連射、単射の切り替え装置がついている。駐退器兼推進器は液体とばねを併用した。弾倉は15発入りで全備重量は16.37 kgだった。アメリカ側の資料では、材質は圧延鋼板製、W字状のスプリングを内蔵している。空虚重量14.75ポンド(6.69 kg)。弾薬は無起縁式である。 動力は電動および手動である。従動照準の場合には電動が用いられるが、銃側照準の場合には手動も用いられた。ハンドルによる旋回速度は毎秒15度、1回転で5.5度旋回する。またハンドルでの俯仰速度は毎秒12度、1回転で3.5度俯仰した。資料により連装機銃の旋回速度は1秒に13度、俯仰速度は1秒に9度とも記述がある。アメリカ軍側の作成資料では、俯仰はギア式で軽快に操作でき、指一本で操作するクラッチと摩擦式ブレーキが設けられているとしている。旋回ハンドルは操作がやや遅く使用が難しかった。指一本で操作するクラッチと固定用クランプが設けられている。射撃は射手足下のペダルで行う。ペダルは銃のトリガーと機械的に接続されている。外方のペダルは中銃以外を操作する。内方のペダルは中銃を操作する。両方のペダルを踏み込めば3挺同時射撃が可能と推測される。しかしながらこの件については乾氏の調査研究によって左側のペダルで左右銃。右側のペダルで中銃。両方で3挺から発射されることが写真図面等から明された。(乾2015 20頁) 型式として、二十五粍機銃には単装、連装、三連装が存在する。単装機銃は銃身を両側面で支持する銃架と架台が結合したもので、銃の後方から見て銃身左側に肩付け式の支持部、その前方に大型の環型照準器が設けられている。銃身下部後方には銃把と引き金が設けられた。機銃弾は15発入りの箱形弾倉を用いて給弾し、銃身上部からはめこんだ。全体重量は三型で250 kg。銃身の重量自体は44.8 kgである。また弾入りの弾倉は16.37 kgの重さがあった。単装機銃は機銃員1名が銃側照準により人力操作した。開発時期は昭和19年半ば頃である。連装、三連装と比較すれば重量が軽く、狭い艦上のスペースにも銃架を設けられることが利点だった。単装機銃の採用理由は連装型の銃架の生産が間に合わなかったこと、高速で不規則な機動をえがく敵機に照準を合わせるには、LPR照準器ないし手動ハンドルでの旋回では追尾が間に合わなかったことなどが挙げられる。艦に向かって飛来する敵機は見越し角の計算がほぼ不要であり、機敏な銃側照準ができる単装機銃はLPR照準器より有利ともみなされた。ただし銃架に防盾などは設けられず、戦闘時の損害は大きかった。 連装機銃はホチキス社が開発した原型の型式である。一型の重量は1,290 kg、二型の重量は1,650 kgである。射撃時は左右の銃を交互に発射し、弾丸の切れた銃の弾倉を適宜交換して連続発射を維持した。機銃員5名が操作に当たる。 アメリカ側資料では、三連装機銃の大きさは全高約4フィート6インチ(144.34 cm)、全長8フィート6インチ(259.08 cm)、全幅7フィート4インチ(223.52 cm)である。銃身は空冷式、後座は約5インチ(12.7 cm)である。艦艇に搭載された三連装機銃は機銃員9名で運用し、給弾には給弾員が補助に当たった。重量は二型で2,828 kgである。銃座が大型で2 t超の重量を持つことから、搭載には強度が確保できる場所が必要となった。1銃あたり毎分150発程度の連射能力を持つ。機銃のシールドとして、空母では煤煙避盾がつく場合があった。また他に、敵弾を防ぐための防弾板を射手の前に立てた型がある。大和型戦艦では、主砲発射の際に発生する爆風から身を守るために機銃を覆うように付けられた非防弾の爆風避盾を採用した。戦争が激化し、敵航空機の脅威が高まるにつれ艦艇への機銃搭載数は増加する傾向にあった。
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