東西の違い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/19 04:21 UTC 版)
「通勤形車両 (鉄道)」の記事における「東西の違い」の解説
私鉄各社では、戦後の混乱期が終わる頃から次第に各社ごとに違った車両を作り出してきた。その際、少しずつではあるが、関東地方と関西地方では傾向に差が生まれるようになっていった。 違いとしては、以下の点が挙げられる。 関東では車体規格が20m4扉が主流になっていったのに対し、中京圏、京阪神圏では18 - 19m3扉のままの会社が多い。関東では、東武鉄道や小田急電鉄などで国鉄63系電車の割り当て以来、20m車が入線可能な設備の整備が進められ、西武鉄道や京王帝都電鉄など急激な利用客増加への対策として車両の大型化を選択する会社も多かった。東京急行電鉄の20m車導入は比較的遅く(1969年)、1961年に最初の区間が開通した営団日比谷線の乗り入れ規格を設定する際には、東武が20m車規格を提案したものの、結局東急・営団の主張する18m車規格が採用されたため、東急東横線でも20m車が主流になってからはドア位置がずれるなど、地下鉄乗り入れ車の規格の違いが禍根を残す結果となった。最終的に東横線は2013年3月から副都心線との相互直通運転を開始。これに伴い日比谷線直通列車を廃止し、20m車での統一を図っている。日比谷線以後の営団(現:東京メトロ)東西線・都営6号線(現:三田線)など東京の地下鉄新線建設ではリニア式である都営大江戸線を除き20m車規格で建設されている。 一方、大阪を中心とした関西では、山間部や在来市街地での急カーブを設置せざるを得なかった事情から、すでに戦前(昭和初期)から20mクラスの車両を運行していた近鉄(大阪線・南大阪線)や南海(現在では高野線の橋本駅以南を除く)を除き、物理的に20m車の導入が難しかった。なお、近鉄奈良線や橿原線などの奈良線区、南海高野線の河内長野 - 橋本間、阪神(なんば線開業時)でも20m車が走行できるようにするための改良工事が行われた。一方、阪神なんば線では近鉄側が21m、阪神側が19mと相互直通運転を行いながら車両仕様の統一が図られていないが、自社線内の運用を配慮するため統一させなかった、という事例も存在する。 関東では、東京急行電鉄・小田急電鉄・京王電鉄に代表されるようにステンレス車体が、関西では、近畿日本鉄道・阪急電鉄・京阪電気鉄道に代表されるように鋼鉄・アルミ車体が多く採用される傾向がある。ただし、京浜急行電鉄(新1000形の6次車以降はステンレス)や営団地下鉄(現:東京メトロ)ではアルミニウム車体を、ステンレス車体を導入していた東武鉄道や西武鉄道がアルミニウム車体へと方針を転換し、関西でも南海電気鉄道(南海本線用の7000系・7100系を除く)や大阪市営地下鉄(現:Osaka Metro)はステンレス車体を、アルミニウム車体を導入していた神戸電鉄や近年まで普通鋼製車体を導入していた阪神電気鉄道がステンレス車体へと方針を転換しており、一概に言い切れない。 関東では、JRに倣った車両やメーカー標準設計を基にした車両の導入が盛んだが、関西では自社開発が主流である。しかし、これは2000年代に入り関東各社が経年劣化した車両(主に1970年前後=昭和40年代に製造された車両)の交代期にあたることや、1992年のJR東日本の209系の登場をきっかけとした国土交通省・経済産業省の主導もあり、車両製造会社が大量生産を可能にして1両あたりの製造コストの削減を目指した施策でもあり、必ずしも鉄道事業者各社が自社開発を放棄した訳ではない。また、関東地区では私鉄と地下鉄の相互乗り入れが多いことや保守などの理由から、同一設計・規格の車両を導入したほうが良いという事情もある。 関西でも、経年劣化した車両が首都圏よりも多く存在するが、鉄道事業者の経営事情が厳しいこともあり、そのまま継続して車両を使うことがある。また車両の更新を行って寿命を延ばすことを行っている。 関東では、制御車やユニットM車が多く、関西では、制御電動車や単独M車が多い。これは関東と関西の鉄道の発展の経緯の違いに起因している。関西の場合、短編成で登場したものを増結で現在の長さにしたケースも少なくなく、また、分割・併合運用がある場合も多かったために制御電動車や単独M車が不可欠だったのである。この経緯は正面形状の違いにも出ており、関東は非貫通あるいは非常用として左側に寄せた貫通扉を装備した車両が多いのに対し、関西は連結・通り抜けを前提として中央に貫通扉を有した車両が多い。
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