手塚作品のテーマとは? わかりやすく解説

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手塚作品のテーマ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 06:05 UTC 版)

手塚治虫」の記事における「手塚作品のテーマ」の解説

手塚は自らの戦争体験によってもたらされた「生命の尊厳」を自身テーマ一つとして挙げている。 手塚は、自身マンガ置いて時代流れ合わせ転向繰り返す転向者であるとした上で、「ただ一つこれだけ断じて殺されても翻せない主義がある。それは戦争ご免ということだ。だから反戦テーマだけは描き続けたい。」と語っている。 手塚子供を「未来人」と呼び、以下のように語っている。 私は、暗い時代といわれた昭和初期なかでも、実に恵まれた環境子ども時代をすごせたと思ってます。しかしそれも、青春期には、空襲窮乏生活によってほとんど失ってしまいました。父は戦争とられるし、勉強はできず、腹をすかせ、大勢友人失いました空襲襲われ周囲が火と死体の山となったとき、絶望して、もう世界終末だと思ったものです。だから戦争終わった日、空襲の心配がなくなっていっせいに町の灯(ひ)がパッとついたとき、私は思わずバンザイをし、涙をこぼしました。これは事実です。心の底からうれしかった。平和の幸福を満喫し生きていてよかった思いました。これは、当時日本人のほとんどの感慨だと思いますもう二度と戦争なんか起こすまい、もう二度と武器なんか持つまい、孫子(まごこ)の代までこの体験伝えようあの日あの時代、生き延びた人々は、だれだってそういう感慨をもったものです。ことに家や家族失い、また戦争孤児になった子どもたちは、とりわけそう誓ったはずです。それがいつの間に風化し形骸化してまたもや政府が、きな臭い方向向かおうとしている。子どもたちのために、当然おとながそれを阻止しなければならない同時に、子ども自身がそれを拒否するような人間はぐくんでやらなければならないと思うのです。それは結局先に述べたように、子どもに生きるということ喜びと、大切さ、そして生命の尊厳、これを教えるほかないと思うのです。人命だけでなく生命あるものすべてを戦争破壊悲惨から守るんだという信念を子どもにうえつける教育、そして子どもの文化そのうえに成り立つものでなければならない。けっして反戦だの平和だのの政治的のみのお題目では、子どもはついてこない率先して生命の尊厳から教えていくという姿勢大事なのではないでしょうか手塚作品の中で天使と悪魔二面性や、異民族間、異文化間の対立抗争などを繰り返しテーマにしている。手塚戦後間もない頃、酔っ払ったアメリカ兵にわけもわからず殴られ強いショック受けたことがあり、これがこのテーマ原体験になっているのだとしている。もっとも、『ジャングル大帝』などにおける「分厚い唇、攻撃的なイメージ」といった類型的な黒人観は批判されており、手塚死後の1990年には「黒人差別をなくす会」により糾弾受けている。これ以後手塚単行本には差別受け取られる表現について弁明する但し書き付けられるようになったまた、漫画を描く際にプロ・アマ、更には処女作であろうベテランであろう描き手が絶対に遵守しなければならない禁則として、"基本的人権化さない事"を挙げ、どんな痛烈且つどぎつい描写をしてもいいが、「戦争災害犠牲者をからかう」「特定の職業見下す」「民族国民、そして大衆馬鹿にする」だけはしてはならない、「これをおかすような漫画がもしあったときは、描き側からも、読者からも、注意しあうようにしたいものです」と述べている。 夏目房之介は、手塚追い求めたテーマを「生命」というキーワードに見出している。夏目手塚小中学生の頃によく見たという以下のような夢を紹介し、この夢が生命変身不定形エロス世界との関わり方といった「手塚作家資質」をほとんど言い切ってしまっているとしている。 .mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}子供のときの僕の夢は空飛ぶとかそういうのはあまりなくて、やたらに見ているものがどんどん変わっていくような、また変わるものセクシャルで僕の興奮につながるような……。[略]常に形が一定しないで、いろいろなものに変わる。たとえば僕と一緒に歩いている相手がいるんだけど、それは何かわからないが常に形が変わっている。僕に対して仕掛けることが常に違う。その恐怖感同時にセックスアピール感じる。[略]本当に異次元的なものですね。宇宙人なのか女どもなのかわからないが、僕の周りにとにかくそれがいるんです。それが常に変わる。僕は宝塚住んでいたんですが、学校帰り道にちょっと寂しい沼があって、そこを通って家に帰るんです。小学生とか中学生のころそこを通る夢をよく見ました沼地の横で得体の知れないものがブルブルふるえながら僕を待っている。それをつかまえて自分の家連れてくる。逃げ出すと困るから雨戸閉めて、ふすまを閉めて絶対に出られないようにして、僕と物体向かいあったところでたいてい夢がさめてしまう。その間も僕がそいつを見つけ、そいつが僕のところに寄ってきて、つかまえて家に帰るまでに、何だかわからないけどそいつがいつも変わるんです。[略]だから女にもなるし、男にもなるし、化け物にもなる。[略]つまり、常に動いている楽しさみたいなものがある。動いているのが生きているのだという実感があるわけです。つまり、しょっちゅう変化していることによって、変化しながら進化しているとか、何かに働きかけようとしているとか、つまり、一つアクティブ感じを受けるんです。で自分はどうかというと常にパッシブでそれを見て感じるとか受け入れるとかいう形で、それを見ているだけなんですが、相手は何かの形で次々流動しているんです。 —「ヒゲオヤジ氏の生と性?」石上三登志定本 手塚治虫世界所収東京創元社2003年 夏目によれば1950年の手塚はこのような不定形変身をし続け生命原型」を、描線込めて漫画全世界拡張したことで密度の高い作品生んだ。しかし劇画影響などから描線自由度失われると、描線では実現できなくなった生命観を理念として作品のテーマとしていき、『火の鳥』現れるような汎生命思想描かれることになったのだという。 鳴海丈書いた書籍萌え起源』(PHP新書 2009年)によると「萌え文化日本誕生した理由手塚よるもの大きいとし、その理由を「ボクっ娘」「萌え擬人化擬人化)」「ケモノ」「ロリ系」等といったジャンル日本漫画黎明期から"意図的に"漫画の中で多用してそれが広がったことを上げている。

※この「手塚作品のテーマ」の解説は、「手塚治虫」の解説の一部です。
「手塚作品のテーマ」を含む「手塚治虫」の記事については、「手塚治虫」の概要を参照ください。

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