導入注意点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/15 14:32 UTC 版)
電子カルテシステムとしては「いつ」「誰が」「どこに」「何を」記載したのか、それを履歴として残すようになっているが、一部のシステムは、端末のシステム日付を変更する事により、履歴を残さずに過去所見の書き換えが可能になっている。 フールプルーフ(ヒューマンエラー抑止機能)がシステムに実装されていない場合がある。実装されていても、エラーチェックがかかっていない事例があり、医療記録が破綻している場合がある。 フェイルセーフ(異常検知即時停止機能)がシステムに実装されていない場合がある。実装されていても、連動したシステムへの異常通知等を行わずエラー停止する場合が多く、基幹システムの異常が他のシステムに波及する場合がある。 システムから出力可能な紙媒体が法制に対応できていない場合がある。監査時の紙出力時に不備が発見される場合が多い。各メーカーの電子カルテにおいて1号、2号、3号等の紙媒体の出力書式が定まっていない。 昨今の流れで重視されている指導管理、服薬指導、患者サポート等の記載記録においても、電子カルテ上に機能を有する物は少なく、電子カルテ外で情報管理する流れが発生し整合性が取りづらい状況がある。 システムによっては1号、2号、3号用紙に必要とされる記載事項が出力できない場合がある。 部門システムも内包している病院情報システム(HIS:Hospital Information System)の場合、放射線照射録、手術記録、等の諸記録上にも、不備が発見される場合がある。 医事会計システム、電子カルテ、看護支援システム、その他の部門システムが分かれているシステムに多い事象として、各システムから出力される出力物の記載時間に齟齬が存在する場合がある。具体的には、電子カルテ及び各部門システムが基準としている時間がNTPサーバ(Network Time Protocol)等の時刻管理サーバを基準として動作している場合においては問題視されづらいが、時刻同期サーバを導入されていない場合は、時刻管理作業をシステム管理者の手に委ねられており、システムにおける日時の真正性の確実な保証がされていない構成で運用されている場合がある。視点を変えた事例として、患者の一括受付処理等で一括受付を行った患者の時間が全て同一になる場合がある。本来人の手によって受付等の処理が逐次なされた場合、完全に同一になる事は発生しづらいが、システムの一括処理を行う以上、回避できないものと考えられる。 診療録に残される記載日時が記入した職員の勤怠状況と異なる事がある。職員の超過勤務の記載内容と齟齬が発生する事に始まり、カルテ開示時においてのカルテの真正性の破綻、看護体制の虚偽申請等の露呈まで波及する場合がある。時刻同期サーバを一度導入することにより確実な時間管理のきっかけを生むが、紙ベースの情報媒体のように日時の扱いに関して脆弱な管理は許されなくなっている。 看護支援システムを導入している施設にて、各病棟看護師が記入する看護必要度を直接患者の状態を見ていない職種である事務職員、事務管理職員もしくは看護部長、看護副部長等のユーザーIDにて、常に看護必要度を上げる修正が行われている状況が発生している場合がある。月末に偏って看護必要度を上げる修正作業を特定のユーザーが集中的に行った場合や当該患者の看護必要度を退院後に増分修正を行う等の操作があった場合も看護支援システムの修正記録として履歴に残る。 本来、医師が患者病名(疑い病名・確定病名)を患者診療録に記載することが前提だが、医師の日々の業務量の兼ね合いもあり他者(医療事務、事務員、メディカルクラーク)等の人員が医師の指示により代理記載している事例があるが、システムの記録上、同一部署、同一ユーザーによる病名記載が多数見受けられる場合、医師以外の他者が保険病名を独断にて記載していると判断される場合がある。他者の記載した病名を医師が最終承認する流れがシステム上存在しても、他者が記載した履歴の次に医師が承認したという履歴が医師法、療養担当規則によって認められるかは疑問が残る。 部門システムとの連携数が多い電子カルテにおいて各マスター管理作業が非常に乱雑になり整合性を合わせることが難しくなっている。さらに診療機関間の情報の受け渡しにおいてSS-MIXを用いた場合に、各医療施設内のマスターが独自のコード体系で構築されている場合があり、診療情報、オーダー歴等のデータの受け渡しを難しくしている。 各電子カルテにおいてクリニカルパス、セットオーダー等の入力を簡素化する方法が実装されているが、これらのマスタ更新作業(処方、注射、医療材料等)において非常に乱雑になっており、各社改善を進めているが抜本的な解決を導き出せていない。定期的なクリニカルパスの更新作業ならびにセットオーダー更新作業を実施するにあたり、セットオーダーの使用率の算定、クリニカルパス適応時においてのバリアンス発生に伴う離脱等を勘案しシステムが直すべきマスタを使用者に促す、発展すれば機械学習にて適切なセットオーダーならびにクリニカルパスを模索する機能も求められるが現時点では確立していない。 無線ネットワーク上にて運用される電子カルテに多い事例として、無線途絶による記載途中の診療録、看護記録が保存できない事例がある。アクセスポイントを増設するだけでは根本的な解決にはならず、アクセスポイント切り替え時間が発生しない無線ネットワーク機器を導入しネットワーク切断を回避している事例が増えてきているが、刷新タイミングならびに費用の問題等で無線ネットワークを使用している医療施設の大多数で対応できていない。 医療施設内の電子カルテ用ネットワークとインターネット用ネットワークを物理的に分けている場合、ネットワークインフラ構築ならびに維持運用コストが高くなっている場合がある。昨今の流れでは電子カルテ用ネットワーク、インターネット用ネットワーク機器構成を共通化し、VLAN等の方法にてセキュアな構成にする方法も実現されつつあるが、医療機関において既設のネットワークインフラの更新費用が高くなるため刷新の流れには至ない場合が多い。旧来の物理的なネットワーク分離方式がセキュリティ上強いという解釈もありネットワーク刷新への弾力に乏しいところもあるが2種のネットワークを物理的に切り離しているがための具体的な事例として、電子カルテ上の診療情報を元にインターネット上の統計収集サイトへのエントリを行う流れがある。この場合、電子カルテ端末もしくは電子カルテサーバーにUSBメモリ等の媒体を使用しデータを取得したのちインターネット側の端末に受け渡しを行った後、統計収集サイトにエントリを行う流れがあるが、患者情報をインターネット接続端末に残してしまうことが懸念される。インターネット端末が仮想化された構成である場合は、インターネット端末に患者情報を残したままになる点は払拭されるが、仮想環境提供サーバーの構築に伴い費用の拠出が求められる。
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