仲間らの奔走――創作集刊行とは? わかりやすく解説

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仲間らの奔走――創作集刊行

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 02:46 UTC 版)

梶井基次郎」の記事における「仲間らの奔走――創作集刊行」の解説

1931年昭和6年1月、「交尾」が、小野松二主宰雑誌作品』に発表された。井伏鱒二はこの作品を、「神わざの小説」と驚嘆して賞揚した以前揉め尾崎士郎からも好評葉書来て、基次郎嬉しさ感じ〈必生〔ママ〕の作品書き地球へ痕を残すつもりです〉と返信した。 しかし流感発熱続いて寝込む日々続いた月末見舞いに来た三好達治は、痩せて頬のこけた基次郎衰弱ぶりに驚き生きているうちに友の創作集の出版淀野隆三相談し2人奔走した。淀野は『詩・現実』の版元古書店武蔵野書院から出版できることを基次郎知らせた。基次郎は、2人版元に渡すため原稿用紙に写す作業をすることを心苦しく思い、〈僕の本のことで いい時間使ふことをやめてほしい〉と気づかうが、友の好意を〈涙が出ます〉とありがたく受け取った2月中旬にやっと熱は下がるが、基次郎は床に伏したままであった。淀野からの問い合わせに基次郎答え作品集タイトルを『檸檬』に決めて構成など方針を、母の代筆書き送った3月、『作品』の作品評で井伏鱒二が「交尾」を取り上げ、「水際たつてゐる」と高評した。この頃次郎は、大便便所立って行けるようになり、ようやく寝床起きて食事ができるようになったが、春過ぎまで寝たり起きたり日々続き枕元ラジオをよく聴いていた。 4月作品集校正刷り出来上った時、基次郎は「橡の花」を〈レベル以下〉として削除するように頼んで、淀野らに労を詫びた川端康成が『読売新聞』に「芸術派明日作家――芸術派雑誌同人批評」で基次郎の名前を挙げた5月小野松二も『作品』の文芸時評で基次郎作品触れた。基次郎健康になるため、近所の人が殺したというマムシを母に拾ってきてもらい食べた5月15日、初の創作集『檸檬』刊行された。基次郎18日届いた本を一日眺め暮し、〈「これからだ」と自分励まし〉ながらも病気のことを考えて絶句〉した。淀野らは『檸檬』を作家らに寄贈した下旬に、『中央公論編集部田中西二郎から作品見たい手紙が来た。これは新人作家八重樫昊が基次郎推薦したためで、その話を同誌4月号に「北方」が推薦され北川冬彦から伝え聞いた次郎文壇総合文芸誌デビューできる嬉しさ味わった6月創作集『檸檬』反響表われ、『詩・現実第5号丸山薫が「『檸檬に就いて」を載せ井上良雄も『詩と散文』で激賞した中旬紀州親類兄嫁実家)が湯崎捕まえ送ってくれたマムシ生き肝を飲むが、2、3日後に浮腫となり腎臓炎診断された。 7月、『新文學研究第3集伊藤整が「三つ著書」として百田宗治の『パイプの中の家族』、横光利一『機械』と共に檸檬』を好評した。中旬届いた淀野隆三佐藤正彰訳のプルースト『失ひし時を索めて』の第1巻スワン家の方』を基次郎読みプルーストを〈狭い世界大物〉と賞讃した。基次郎井上良雄書評喜んだことを北川冬彦書き送り、〈僕の観照仕方に「対象の中へ自己再生さす」といふ言葉を与へてくれただけでも、僕は非常に有難いことだつた〉と告げた8月創作集の印税75円を受け取った。基次郎家族からせっつかれ、なかなか入らなかった印税版元催促するよう淀野に頼んでいた自分恥ずかしく感じた生活費困り印税をあてにして母は蚊帳買って布団作りたいと言い末弟参考書ほしがっていた。9月雑誌作品』にプルーストの『スワン家の方』の書評「『親近』と『拒絶』」を発表した。基次郎は、〈回想といふもののとる最も自然な形態にはちがひない〉と評価しつつ、プルーストの〈回想甘美〉を拒否し自分の〈素朴な経験世界〉へ就こうとする姿勢示したその頃家の中では兄嫁・あき江が、子供らが基次郎になついて離れにしばしば遊びに行くことを嫌がり姑のヒサと時々衝突することがあった。そして9月下旬ヒサ留守中、「そばに寄った病気が移る」と子供注意した一言聞いて怒った次郎揉め兄嫁子供2人連れて実家帰ってしまう事件があった。10月、弟・勇が基次郎引き取り来て、母と共に大阪市住吉区実家戻った。 基次郎浜寺畿内療養地がないかと考えたが、すぐ近く住吉区王子町2丁目13番地(現・阿倍野区王子町2丁目17番29号)に空き家があったため、そこに移住したボロ家で狭かったが、実家から2分ほどで、食事の面倒も母に見てもらえた。一応は独立した家に「梶井基次郎」と自筆表札掲げ1人で住むことに基次郎感慨覚えた千僧からの引っ越し荷物中に、『中央公論』からの12月号への正式原稿依頼があったのを見つけ、間に合わないために新年号に延期してもらった

※この「仲間らの奔走――創作集刊行」の解説は、「梶井基次郎」の解説の一部です。
「仲間らの奔走――創作集刊行」を含む「梶井基次郎」の記事については、「梶井基次郎」の概要を参照ください。

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