レギン_(北欧神話)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > レギン_(北欧神話)の意味・解説 

レギン (北欧神話)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/01 08:55 UTC 版)

レギン
レギン殺し:Sigurd dödar Regin (The slaying of Regin) [注 1]
悪巧みを気付かれたレギンはシグルズに討たれる。
これは、ノルウェースターヴ教会の一つであるヒュッレスタードスターヴ教会英語版ポータルに伝わる、『ヴォルスンガ・サガ』を表現した木彫の一部分[注 2]
絵画石碑の一種「シグルド石碑」[注 3]の一つであるところの、スウェーデンセーデルマンランド地方のラムスンド[注 4]に遺る「Sö 101」の、線刻画「シグルズリストニンゲン(Sö 101 ラスムンドカーヴィング)」[注 5]のうち、首を刎ねられたレギンを描いた箇所。『ヴォルスンガ・サガ』にまつわるもので、1030年頃の作と推定されている。

レギン (Reginn, Regin) は、北欧神話に登場する人物[注 6]

父はフレイズマル英語版、兄はファフニールオッテル英語版、姉妹にリュングヘイズ、ロヴンヘイズがいる[4]

なお、『シズレクのサガ』では、人物の続柄が逆転している部分があり、レギンに相当するのがミーメ、ファフニールに相当するのがレギンとなっている[5]

概要

父フレイズマルはロキが殺害したオッテルの賠償金として、オーディンたちから黄金を得た[注 7]。レギンは兄ファフニールと共に黄金の分配を求めたが、断られたため、兄と共謀して父を殺害する。ところが、黄金はファフニールに独り占めされてしまった[7]

レギンはその後、正体を隠してデンマークの王ヒャルプレクの下で鍛冶師として働き、フラグランド王シグムントの遺子シグルズの養育を任される。養父となったレギンは、シグルズに様々な知識を教える一方で[2]勇士として育て上げ、ファフニールを殺害させて黄金を奪おうと考えた。レギンは剣グラムをシグルズに与え[8][注 8]、ファフニールを倒させた[10]。その後、シグルズが先に父の仇討ちを果たしたいと言うとその旅にも同行したが、ファフニールとの戦いが始まる時には事が終えるまでその姿を隠していた。そしてレギンは自身にも責任があるとしたうえで兄を殺したことを非難し、ファフニールの心臓を炙って食べさせてくれとシグルズに頼んだ。

しかし、シグルズは心臓の焼き加減を確かめるために親指を押しつけた際、火傷してしまい、親指についたファフニールの心臓の血(脂)を舐めたことで言葉が分かるようになった。そのことから、シグルズは自分を殺して黄金を独占しようというレギンの悪巧みに気付き、眠っているレギンの首を刎ねて殺した[11][12]

レギンのギャラリー

ミーメ

リヒャルト・ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』(1874年完成)の第2日「ジークフリート」には、レギンに相当する侏儒のミーメが登場する。

ミーメ
砕けた剣ノートゥングを鍛え直すミーメ。

ミーメのギャラリー

このセクションに掲載した画像はいずれもイギリス挿絵画家アーサー・ラッカムによる水彩の挿絵である。1911年刊行[13]

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ Sigurd dödar Regin はノルウェー語で「シグルズによるレギン殺害」の意。括弧内は英語で「レギン殺し」の意。この木彫のこの箇所に特定の名称があるわけではないが、このように呼ばれることが多い。
  2. ^ 教会は12世紀後期もしくは13世紀初期に創建され[1]、扉もその時のものであり、17世紀になって破壊を伴う形で取り外され、保管されていた[1]
  3. ^ Sigurd stones(シグルドストーンズ、シグルド石碑)は、シグルズにまつわる絵画石碑である。スウェーデン語(現地語名)は Sigurdsristningar
  4. ^ ノルウェーのチェルスンにあるラムスン (en:Ramsund, Norway) ではない。
  5. ^ Sö 101 は係る絵画石碑の考古学的管理名称(分類番号)(cf. ルーン石碑#分類)。Sigurdsristningen(シグルズリストニンゲン)は係る絵画石碑に刻まれた線刻画のスウェーデン語名(現地語名)で、「シグルド彫刻」の意。「ラスムンド彫刻」の意で Ramsundsristningen(ラスムンズリストニンゲン)ともいう。Sö 101, the Ramsund carving(Sö 101 ラスムンドカーヴィング)は同じくこの線刻画の英語における通称で、「Sö 101 ラスムンド彫刻」の意。日本語では「ラスムンド彫刻画」の名が見られる
  6. ^ 『レギンの歌』では小人であるが、『ヴォルスンガ・サガ』では特に明記されていない。また、前者では知恵者で魔法に優れるとされているが、後者では兄弟の中で一番劣ると自ら称している[2][3]
  7. ^ この黄金はアンドヴァリから奪ったものであるが、最後に奪った腕輪(あるいは指輪)にアンドヴァリは2人の兄弟の死と8人の王の不和の原因となるよう呪いをかけた。このうち「2人の兄弟」がファフニール、レギンである[6]
  8. ^ 『レギンの歌』ではグラムが鍛え直される描写は無いが、『ヴォルスンガサガ』ではシグルズは竜退治のために剣を鍛えるようレギンに頼み、先に作られた2本の剣を折ったのち、父の遺品グラムの所在を訊ねられ、レギンに預けて鍛え直す形で与えられた経緯が描かれている[9]

出典

  1. ^ a b Hylestad stave church - Viking Archaeology
  2. ^ a b ネッケル & 谷口 (1973), p. 133, 「レギンの歌」序文.
  3. ^ 谷口 (1979), p. 551, 「ヴォルスンガサガ」第13章.
  4. ^ ネッケル & 谷口 (1973), p. 134, 「レギンの歌」第9節-第10節.
  5. ^ 石川 (2004), p. 68.
  6. ^ ネッケル & 谷口 (1973), 134頁台5節、137頁 訳注6.
  7. ^ ネッケル & 谷口 (1973), pp. 133–134, 「レギンの歌」序文-第9節.
  8. ^ ネッケル & 谷口 (1973), p. 135, 「レギンの歌」第13節-第14節.
  9. ^ 谷口 (1979), pp. 554–555, 「ヴォルスンガサガ」第15章.
  10. ^ ネッケル & 谷口 (1973), pp. 138–140, 「ファーヴニルの歌」序文-第22節.
  11. ^ Byock (1990), pp. 65–66.
  12. ^ ネッケル & 谷口 (1973), p. 142, 「ファーヴニルの歌」第31節-第39節.
  13. ^ Wagner & Rackham (1911).

参考文献

関連文献

関連項目

外部リンク


「レギン (北欧神話)」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「レギン_(北欧神話)」の関連用語

レギン_(北欧神話)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



レギン_(北欧神話)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのレギン (北欧神話) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS