ゴログラスの城編
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「ゴラグロスとガウェイン」の記事における「ゴログラスの城編」の解説
(222~1362行) 糧秣を満載したアーサーら一行は、川沿いの岩山の上に、城壁で囲まれ三十三もの塔のそそり立つ美しい城砦都市を通過する。アーサー王は、城主と、その城主の上にたち冊封を授けている君主は誰か、ぜひ知りたいという。物識りのスピナグロス卿 (Spynagrose) が言うに、ここの城主(のちゴラグロス卿 Schir Golagrus と判明)は、代々、どの君主にも従わずに土地を治めてきたとのことだった。アーサーは、「これはしたことか、ならば、巡礼を終えたあかつきにはここへ戻り、必ずや城主を屈服させ主従の礼をとらせよう」、と意気込む。スピナグロスは、相手が手ごわすぎると諫言するが、アーサーが一度誓った決意は揺るがない。 キリストの聖地からの帰り道、王らは、ゴログラスの都市の近くに天幕を張り、作戦を考える。交渉決裂の場合の攻城戦も視野に入れ、まずガウェイン、ランスロット、ユーウェイン(イウェイン)を使節に立てて送る。しかしスピナグロスは、この3人を合わせた力を持つ騎士だろうと、奴にはかなわないという。「しかし気性からしていたって穏やかな御仁ではある。だから、穏便なことばで交渉することを勧める」、と言った。三人の使節は、ゴラグロスに快く迎えられ、ガウェインが、伝令を伝えた。すなわち、アーサー王が比類なき君主であり、檄を飛ばせば12人の強大な王が馳せ参じること、そしてゴラグロスの名声はかねてから聞いており、その友好を求めており、それを得るためならなんぞ褒美は惜しまない、ことなどを。しかしゴラグロスは厳粛な顔で、「もしかつてのこの地の城主たちが臣従の礼をとった前例があったならば、アーサーへの服従も承諾したろう。だが、わが先祖たちは代々そういう拘束を受けずに栄えてきた。そんな私が臣従の例をとったなら、それは縛り首に値する」と言った。(337-453) 使節らはアーサー王のもとに戻り、着々と攻城戦の用意がはじめられた。砲弾(pellok)や青銅の大砲、研ぎ澄まされた矢(ganye)、トランペットの音が騒々しい。木は伐採され、木柵が打ち立てられた。ゴラグロス側の軍も脛当て(グリーブ(Greis n. pl. Greaves)や膝当て(Garitour1 OF. garete Armour for the knee.)を着用し始めた。ちらと見ただけでも140の盾が並び、どの盾にも丈夫な兜が載っかり、槍がきらめいていた。各騎士の紋章バッジも明らかで、その名も記されていた。(-493行) 城から音が鳴り響き、見るとラッパを吹き鳴らした男が塔に向かった。硬い鋼鉄の兜、金銀の針金であしらえた盾、太い槍を抱えていたが、まもなく立ち去った。王がその意味を尋ねると、スピナグロス卿は、あの男は自分が愛する女性のために武勲を示したいのです、ですからこちらから対戦相手をさしむけてやってください、と説明した。 王はガウディフェア Gaudifeir という騎士にその役を命ずる。対する城の騎士はガリオット Galiot だった。ガウディフェアは 、ベリーブラウン色の馬(または鹿毛) に乗り、もう一方は白馬に乗っていた。両者は最初の一撃で落馬し、剣を振るった戦いでは血の中を動き回った。だがついにガウディフェアが勝利し、ガリオットは守りで固めた場所に連行された。(-583行) ゴラグロスはリーガル卿 (Schir Rigal of Rone)を呼びつけて雪辱戦に送り出した。アーサー王側はラナルド卿(Rannald)で対抗した。ラウナルドは、鎖帷子とバシネット(英語版)型の兜を着こなし、具足も馬も金と赤の色調で整えた。翌日が明けた。二者は馬に乗り、お互いの槍をぶつけ合って盾を砕いた。剣での戦いとなり、ラナルド卿は相手の襟首を断った。だが決着はつかず、両者が血泡を吐いてもなお、勝負は二人がともに命が尽きるまで終わらなかった。二人の騎士はその日、おのおのの側により埋葬された。(-651行) ゴラグロスは、ルイス卿、エドモンド卿、バンテラス卿 (Bantellas)、サングウェル卿 (Sanguel, Sangwell)の四人を用意させた。アーサー側は、ライオネル卿、ユーウェイン(イウェイン)卿、ベディヴィア卿、ギロマランス(Gyromalance)卿でそれぞれ対抗した。アーサー側は、ライオネルが負けてルイスの捕虜となりベディヴィアはバンテラスに剣を投降したが、ギロマランスがサングウェルを捕虜とし、ユーウェインがエドモンドを地べたにのす、という結果を得た。試合としては五分の結果だが、イウェインは重傷を負うかわり、エドモンドは戦死している。(-730行) ゴラグロスは、遅れをとりもどそうと、いきがる。アガルス卿(Agalus)、ユーモンド卿(Ewmond)、ミチン卿(Mychin)、メリゴール卿(Meligor)、ヒュー卿 (Hew)の5人を指名。円卓の騎士側からはコーンウォール公カドル(英語版)、オウェールズ卿、イウェル卿、ミレオト卿の4人が出場した。(ただし、エメル卿 (Emell)という5人目の円卓騎士が出場するという説がある)休戦などはなく戦いはおこなわれた。オウェールズ卿、イウェル卿は敵城に連行されたが、アーサー側は、アガルス卿とヒュー卿を捕虜に得た。(-769行) ゴラゴラスは眼を怒らせたが、朗々と「いざ我が戦いにいどみ、終焉をもたらすべし」と言った。城の鐘塔から2つの鐘が鳴り響いた。この鐘鳴りについて、スピナグロス卿は、ついに城主(ゴラゴラス)自身がお出ましであることを意味する、と説明した。そして、城主は、このあたりでは比肩無き剛の者を自負している、こちらも相当な強者を選ばねばなりませぬぞ、と進言した。このとき志願したのがガウェインだった。スピナグロス卿は、相手が相手なためガウェインの安否が案じられてしょうがなく、つい悲観的な言葉が口を突いて出てしまう。こちらは、みなが尊敬する戦の器量が確かなガウェインどの、いくら身代金を積もうと手加減などしてもらえませぬぞ、などと念を押す。ガウェインは、もし勇敢に死のうならば傷も少ないというものじゃ、たとえ相手が怪力のサムソンその人だろうがのう、などと言う。しかたなく、スピナグロス卿は、実戦のアドバイスなどを伝授する。まず、槍はまっすぐに狙いをさだめ、相手が衝撃を受けて大声を出し、熊のようになってもひるまず、その連打を盾に浴びても、どんな次第になっても耐えて、相手の打撃がとぎれたら反撃せよ。相手の息が上がったところで打てば、相手の動きをとめる衝撃打を浴びせることができる、などと。(-835行) 相手がおらず手持無沙汰なケイ卿は、褐色の馬の騎士と対決し、降参させて捕虜とする(-883行)。 ついにゴラグロスが登場する。純金やルビーをあしらえた甲冑を着ており、重代の家宝を幾つもつけ、絹の縁飾りも立派だった。乗っている白馬は、黄金やベリル石でちりばめられていた。ゴログラスは長身で、誰よりお半足は背が高かった。二人の騎士は、槍を突き合わせて馬で激突した。そして馬から降りて剣での戦いが始まった。ゴログラスの一撃は、ガウェインの喉当てに命中し50もの鎖を砕いた。しかしガウェインの反撃は、盾の角を割き、鎖帷子と胸板と縁を貫いた。黄金の鍍金がはげ落ち、血が流れ出た。ゴログラスの怒りをつのらせガウェインに躍りかかった。凄まじい一撃に、盾をかざしたが、みるまにベリル石が飛び散った。アーサーは甥のために、主に祈りをささげた。宝石が飛び、鎖や拠り紐が落ちる。獅子のような攻撃に、ついにガウェインの盾は20余のかけらに千切れていた。ガウェインは怒り涙して打ちしてやまぬ猛反撃に出た。(-974行)。戦いの描写がしばらく続くが、ついにゴラグロスが勾配の上に屈んだところをガウェインが剣で打ちつけ、ゴラグロスは足を踏み外して地面につんのめり、起き上れる前に、ガウェインが短剣を突きつけていた。(-1029行)ガウエィンは相手に降伏せよとせまるが、ゴラグロスは、そんな生き恥をさらすよりは死んだ方がましだ、と答える。ゴラグロスの城の男女たちのあいだに悲痛が走る。ガウェインは、敗北を認めて、わが王の元に行けば、公爵に封じられてそれなりの栄誉を得るからよいではないか、と説得を試みる。ゴラグロスは、どんな条約をもちかけても、利益を得られても、面目を失うことができないという。(-1089行)。ガウェインは、ならば、どうすればその面目とやらは保たれるのか、と尋ねる。ゴラグロスは、そこで一計を講じ、ガウェインには負けたふりをしてもらい、自分の城に来てもらいたい、決して危害はくわえさせないと誓うから、ともちかけた。ガウェインは、今まで見知らなかった相手に身をゆだねるのは危険であるが、信じよう、と承諾した。(-1115行) そしてしばらくの間、見せかけの戦闘を続けたのち、ガウェインは城に足を踏み入れたので、見ていたアーサー王や臣下は嘆き悲しんだ。城の中では、祝勝のムードが漂っていた。食事の用意がされ、ガウェインも壇(英語版)(中世では食事テーブル代わりの台)のもと、席につかされた。しばしするとゴラグロスは、テーブルを棒で打ちつけて一同の注意を引き、こう尋ねた:「ここにいる男爵領や町の統治者の方々には、忌憚ない意見を行ってもらいたい。わしが戦場で捕えられてしまうのと、わしが戦場で命を落とし別の領主に治められるのとでは、どちらの選択がよいと思うか?」と。集まった諸侯は、その言葉を聞いて、彼らの領主が敗北したのだと事態に気づき、悲しくなった。そして「あなた様に領主でいてもらいたいです、」と答えた。(-1193行) ゴラグロスは、60の騎士を伴い、城を出てアーサー王に挨拶をし、じつはガウェインに任されたことを告げ、アーサー王にたいし臣従の礼をとると告げた。アーサーは喜び。ローヌ川の城では、祝杯が挙げられ、騒々しい宴がくりひろげられた。さて、アーサー王がついに帰途につくことになった。すると王はゴラグロスの土地全てを、自分への服従から解放する、と宣言した。(-1362行 終)
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