ゲイのコミュニケーション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 07:34 UTC 版)
「日本における同性愛」の記事における「ゲイのコミュニケーション」の解説
太平洋戦争後、ゲイは時代の中でマイナーな存在であり、ゲイ情報と言えば、太平洋戦争後初期は「アドニス」(1951年)などの会員制ゲイ雑誌や、ノンケ(異性愛者男性)向けSM雑誌「風俗奇譚」(1960年)などのゲイコーナー、その後は、1970代に創刊ラッシュを迎える薔薇族などの商業ゲイ雑誌などからしか得られなかった。そのゲイ雑誌は新聞などに広告が掲載されなかったため、書店で偶然発見するなどの手段しかなかった。運良くゲイ雑誌を発見できたなら良かったものの、多くのゲイにはゲイ雑誌の存在自体知られておらず、「自分は異常ではないか」と人知れず悩むゲイも少なくなかった。 それが1990年頃からマスメディアでゲイブームが起き、文藝春秋の「クレア」(1991年2月号「ゲイ・ルネッサンス」)などの雑誌やテレビの情報番組などでゲイに関する事柄が比較的多く取り上げられ、ゲイにとっての情報源は次第に拡大した。その中でゲイ雑誌や新宿二丁目の存在も知られていった(但しその前にも1970年代にはフジテレビ系「3時のあなた」に、薔薇族の伊藤文学が出演したりインタビューに答えることがあり、それでゲイ雑誌の存在を知った人もいた)。 出会いツールの変遷 ゲイ雑誌の通信欄(1960年代 - 1990年代前半頃まで) 出会いツールも大きな変化を見せた。太平洋戦争後初期は口コミで広がった公園などの野外や映画館の暗がり、またそこで出会った人に教わったゲイバーなどに頼るしかなかった。そのゲイバーといっても女装者がノンケを接待するバーが全国に数えるほどあるだけで、ゲイ同士で出会える店は皆無に等しかった。それがゲイ雑誌(風俗奇譚含む)が創刊されてからは文通欄で出会えるようになり、出会いに革命がもたらされた。薔薇族にはゲイ同士の交際欄、サークル欄、未成年ゲイの友人募集覧「少年の部屋」、レズビアンの為の「百合族コーナー」などがあった。ただ出版社の編集部を経由するので実際に会えるまで数週間から数ヶ月はかかり、切手を貼ったり写真を同封するなど手間もかかった。自宅宛に送られてくるので家族に見られる不安もあり、実際に息子宛てに送られてきた手紙を両親が見てショックを受け、薔薇族編集長の下に相談に訪ねたなどというエピソードもあった。 伝言ダイヤル & ダイヤルQ2(1980年代後半以降) そんな中、1980年代後半になるとゲイ専用の伝言ダイヤルやダイヤルQ2が登場することで様変わりし、自宅の電話から見知らぬゲイ同士が出会えるようになった。携帯電話やポケベルは既にあったが普及していない頃なので、予め目印や着ていく服装を決めて会っていた。ただゲイダイヤルの番号は殆どがゲイ雑誌に載っていたため、ゲイ雑誌を購入した人にしか知られていなかった。 インターネット(1995年以降) Microsoft Windows 95が発売された1995年以降、それまでは一部の人々が利用するにすぎなかったインターネットとパーソナルコンピュータ(パソコン)が爆発的に普及する。この頃から「MEN'S NET JAPAN」(1996年開設)などに代表されるゲイ専用出会い系サイトが急激な普及をみせ始め、1998年には携帯電話でもインターネットサービスが始まり、「ゲイモード」などのゲイ向け出会い系携帯サイトも広まり始めた。インターネットは自宅にいながら誰でもゲイに関する情報を調べたり、ゲイ同士で出会うことを可能にし、世間体を気にしていた人や地方在住者、さらには外国人らとも交流が容易になった。また気軽に見ることの出来なかった男性ポルノや成人漫画も見る事が可能になり、インターネットを切っ掛けにゲイとして自覚する者も多くなった。 スマートフォンのアプリ(2009年以降) 2009年からは従来の出会い系サイトが更に進化し、SNS機能も兼ねた「Jack'd」(ジャックト)、「Grindr」(グラインダー)などのゲイ向け出会いアプリも登場した。スマートフォン(スマホ)向けに開発されたもので、登録するとGPS機能を使って、近くにいるゲイを検索できる。なお従来の出会い掲示板が国内向けが中心だったのに対し、それらのアプリは世界中のゲイが同じものを利用しているため、地球規模での出会いがより容易になった。 但し、最近はこのアプリを悪用する異性愛者の男女が増え、同性愛者と偽って登録し、近くにいるゲイを探し、友人に笑いや話のネタで報告したり、ネットで晒したりする被害事例が相次いでいる。2013年6月28日放送BSジャパン『大竹まことの金曜オトナイト』ではこのアプリが見世物のように取り上げられ、収録現場に潜入取材したテレビドガッチは「(番組で)ゲイ向けSNSの存在を知って『登録してみたいよね』なんて声があがるなど、自分でも思わず実践したくなるようなトピックが満載」と、ゲイ向けアプリの異性愛者の興味本位の利用を促すように紹介された。因みにこの番組が放映された日のBSジャパン公式サイトでは、同番組がアクセスランキング1位になっていた。 出会い詐欺・女版ネカマ かつてはゲイ雑誌の文通欄、今ではネットで、異性愛女性がゲイを装ってゲイ男性に近づいたり、彼らを騙す犯罪紛いの行為(出会い詐欺)も起きている。1959年に大阪で創刊された会員制ゲイ雑誌「同好」にも実話が紹介されていて、文通欄で「16歳の高校1年男子」と名乗り、知り合ったゲイから郵送で金を無心していたのは、当時40過ぎの女だった。
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