インテグラル・ヴィジョンとは? わかりやすく解説

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インテグラル・ヴィジョン(ウィルバーⅣ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/21 21:01 UTC 版)

ケン・ウィルバー」の記事における「インテグラル・ヴィジョン(ウィルバー)」の解説

1995年出版された『進化構造』(Sex, Ecology, Spirituality)において、ウィルバーは、自己の思想活動をその端緒より特徴づけていた「個人」と「集合」の領域相互に有機的に関連するものとしてひとつの包括的な理論構想のなかに統合することに成功する。そして、この理論構想は、『進化構造』の発表後継続的な修正くわえられながら、今日の"AQAL"("All Quadrants, All Levels"を省略したもの)と形容されるものへと展開している。このあたりの理論展開詳細については『進化構造』とKosmic Karma and Creativity参照していただくとして、ここでは、これらの理論構想をその基盤において支えている発想態度)について紹介する与那城務(2006)の論文においても指摘されているように、インテグラル思想は、「インテグラル」(統合)という大義のもと、多様な理論体系その構成要素として包摂することを意図するものではない。むしろ、インテグラル思想とは、人間意識というものが、ある視点perspective)を抱擁することをとおして必然的に盲点抱えこむのであることの認識のもと、人間認識行為構造的な限定条件建設的に活用することを意図するのである。つまり、それは、世界認識する際、視点というものを利用せざるをえない人間認識能力特性内省することをとおして認識という経験生成する背景としての意識という空間立ちかえることを援助しようとするものなのであるこうした観想者の視野継続的に立ちかえることをとおして人間は、はじめて、自らの得意とする視点執着することなく様々な視点柔軟に活用することができるようになるのである。 『意識のスペクトラム』は、こうした態度基盤として、垂直的に存在する認識存在)の階層をまとめたものである。そして、『進化構造以降著作のなかで提唱されるAQALは、この意識存在)の階層を、平的に存在する認識存在)の領域へと展開したのである平的に存在する認識存在)の領域として、ウィルバーは、"I"・"WE "・"IT"・"ITS"の4つをあげている。これらは、人間生得的所有する視点として普遍的に共有されているものであり、また、この世界あらゆる事象包括的に認識するうえで必要とされるものであるという。 "I"(Individual Interior):個の内面領域。この視点は、個の主観的subjective)な存在としての真実性尊重するもので、そこでは、個は、自己の内的な意図もとづいて行動する自律的な存在としてとらえられる。この領域価値基準は、個人が、自己の内的な感覚をいかに正確に解釈表現するかに注目する主観的な「誠実」(sincerity)というものである。 "WE "(Collective Interior):集合内面領域。この視点は、自律的な内面所有する個人相互理解相互尊重重視するもので、そこでは、集合共同体)は、規範倫理価値等の文化共有する個人による共感により維持されるものとしてとらえられる。この領域価値基準は、集合共同体)の構成員が、相互理解相互尊重とおして、いかにまとまりのある文化空間構築するかに注目する正義」(justness)である。 "IT"(Individual Exterior):個の外面領域。この視点は、客観的に観察をすることのできる事象重視するもので、そこでは、主観的な要素影響することない、普遍的な事実追求される。この領域価値基準は、いかにあらゆる主観的な歪曲」に影響されない客観的」・「普遍的」な真実抽出するかに注目する「真実」truth)である。 "ITS"(Collective Exterior):集合共同体)の外面領域。この視点は、集合組織体としての整合性尊重するもので、そこでは、個は、あくまでも集合構成要素としてとらえられる。この領域価値基準は、ある存在個人組織)が、それをとりまく外的な生存状況にいかに適合するかに注目する機能的な適合」(functional fit)というものである上記視野は、独自の価値基準もとづいて事象把握検証する。つまり、それらは、独自の方法事象照明し、また、独自の方法事象隠蔽するのである重要なことは、それぞれの視野自律性尊重したうえで、それらを相互有機的な関係性のなかに位置づけることである。世界あらゆる事象は、少なくともこれら4つ視野から認識することのできるものである。インテグラル・アプローチは、これらの視野内在する光と陰を認識したうえで、それらを包括的に活用することの重要性認識するウィルバー指摘するように、これらの視野相補的な重要性尊重することなく、どれかを絶対化すること("Quadrant Absolutism")は、深刻な悲劇もたらすことになる。例えば、今日現代社会は、内面性の価値溶解しようとする文化的な潮流席巻されている。これは、ウィルバーが「フラットランド」("Flatland")と呼ぶもので、近代科学物質主義現代思想価値相対主義融合により生みだされた、あらゆる価値基準外面化浅薄化の流れ形容することのできるものである。そこでは、人間人間たらしめる内面性というものが妥当性をもつ価値領域として否定されその代わりに、視覚触覚等、肉体感覚により計測することのできる情報信頼できる基盤として排他的に抱擁るれたのであるこうした状況において、人間内面性を探求することをとおして人格成熟醸成することを意図する芸術等の営為存在価値は、必然的に軽視されるうになるこうした外面化浅薄化の蔓延した社会においては人間とは、あくまでも自己の肉体的衝動忠実に行動する物質的存在にすぎず、その「治癒」は、肉体的衝動充足とおして可能となるものであるとされるのである。 しかし、発達心理学調査示唆するように、人間成長治癒)とは、内省力の深化とおして肉体的衝動を高度のレベル昇華して成熟した社会性のもとに表現する自己中心性克服する過程である。そこでは、成長治癒)とは、自己対象化して、複数視点考慮したうえで、表現することのできる意識構造構築することをとおして達成されるものとして認識されるのであるそうした人間存在の垂直的な可能性尊重する人間観は、今日外面領域絶対化を基盤とした人間観と真向から衝突するのである結果としてこうした内面領域否定は、とりわけ先進諸国において、意識広範な地盤沈下もたらしている。

※この「インテグラル・ヴィジョン(ウィルバーⅣ)」の解説は、「ケン・ウィルバー」の解説の一部です。
「インテグラル・ヴィジョン(ウィルバーⅣ)」を含む「ケン・ウィルバー」の記事については、「ケン・ウィルバー」の概要を参照ください。

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