《不知火》の正しい読み方
「不知火」の正しい読み方
「不知火」をそのまま音読みすると「ふちひ」や「ふちび」と読める。しかし実際は「しらぬい」が正しい読み方である。この読み方は、漢字1文字ごとに読み方を当てはめず、熟字(2文字以上の漢字の組合せ)に訓読みを当てる「熟字訓(じゅくじくん)」という特殊な読み方だ。「訓読み」という読み方は、中国から日本へ漢字が伝わったのち、「各漢字が表す中国での意味」に相当する当時の「和語」の読みを当てはめたものであり、現代でも読みだけで漢字の意味が分かるものが多い。一方、音読みという読み方は、昔の中国語の発音と同様に読むものであり、読みだけでは意味が理解できないものが多い。
「不知火」のような熟字訓は訓読みではあるが、漢字一つひとつにではなく、複数の漢字を1セットとして読み方を当てはめるため、元々知識がなければその正しい読み方を推測するのは困難である。
「不知火」の意味解説
九州本土と天草諸島に囲まれた「八代海」や九州北西部にある九州最大の海「有明海」で見られる自然現象である。夜に漁をするため漁船で焚く「漁火(いさりび)」の一つひとつが、陸地から見ると、火が海上に浮かぶように左右に細長くのびて、多くの光がゆらゆらとついたり消えたりするように見える。これは潮位の変化が大きい八朔(はっさく/陰暦8月1日)の夜に、干潟の上で昼間に暖められた空気と夜間の冷気が層を作ることで、光が屈折して見える蜃気楼現象の一つとされている。現代の暦では、気象条件にもよるが毎年8月25日頃から9月23日頃の新月の日に見られることが多い。かつてはその正体がわからず龍神が灯す怪火であるとの伝承も残っているが、1937年に宮西通可により「不知火」の科学的仕組みが解明された。
なぜ「不知火」と読むのか・理由
「しらぬい」という読み方は、かつては不知火の原因が分からなかったため「知らない火」=「不知(しらぬ)」+「火(ひ)」から発生したと言われている。旧仮名遣いでは「不知火」を「しらぬひ」と書き、「火(ひ)」の発音は「い」と読んだが、現代は記述も読みも「い」である。この言葉の由来は、古くは「日本書紀」の「景行18年5月の条」に次のように記されている。「12代景行天皇一行が、葦北の火流浦(今の熊本県八代市日奈久と思われる)から船で火の国(熊本)へ向かうとき、日が暮れて方角が分からなくなってしまった。そのとき、行く先の海上に火がゆらゆらと灯っているのが見え、それを目標に舵を取ったところ無事に岸にたどり着くことができた。天皇が『火が燃える場所はどこで、なんの火なのか』と尋ねられたところ、土地の人は『ここは火の国八代郡の火の村ですが、何の火かは分からない(しらぬひ)』と言った。天皇は『その燃える火は人の起こすものではない。この火が“火の国”という地名の由来だと分かった』と言われた。」このエピソードは、不知火の読み方の由来とともに、熊本を「火の国」と呼ぶのは「不知火」からきていることも伝えているとされている。
「不知火」の類語・用例・例文
不知火の類語には「蜃気楼(しんきろう)」「漁火(いさりび)」「怪火(かいか)」「竜燈(りゅうとう)」といったものが挙げられ、いずれも不知火を別の角度から見た呼び名である。「不知火」は、自然現象としての不知火をそのまま指すことが多く、光が横に連なって揺らめく様を表す形容詞や副詞として使われる場合もある。また、俳句では9月の季語として使われている。用例・例文は次のとおりで、以下〈〉内は出典を表す。
・海のうえを見ると、あの不知火が、鬼火のように陰々として燃えているのだ。〈横溝正史「髑髏検校(どくろけんぎょう)」〉
・その軒裏の彩色を不知火のように輝していた。〈永井荷風 「霊廟(れいびょう)」〉
・また「あっ」とその不知火(しらぬい)のごとき兵船の数に驚き〈吉川英治 「私本太平記」〉
・不知火の見えぬ芒(すすき)にうずくまり〈杉田久女〉
・不知火や嵐はれ行く海の果〈正岡子規〉
なお不知火という名称は、みかんの一種デコポンの正式名・相撲の横綱土俵入りの型の1つ・日本人プロレスラーの技・アニメなど、さまざまな分野で使われている。
「不知火」の英語用例・例文
「不知火」は元々日本の一部地域における自然現象のため、そのまま「Shiranui」と表記することもあるが、英語に訳して次のように表記されることも多い。以下()内は日本語の直訳である。「mysterious lights on the sea(海上の神秘的な明り)」「phosphorescent light(りん光)」「sea fire(海の炎)」
用例・例文には次のものが挙げられる。
・Please enjoy mysterious lights on the sea.(海上の不知火をお楽しみください。)
・When is the day that I can see a phosphorescent light this year?(今年不知火を見られるのはいつですか?)
・She saw the lights of a town like a sea fire far away.(彼女は、遠くに不知火のような町の灯を見ました。)
《不知火》の正しい読み方
「不知火」の正しい読み方
「不知火」の読み方は基本的には「しらぬい」である。「不知火」の読み方の表記を「しらぬひ」とし、実際の発音を「しらぬい(shi-ra-nu-i)」とする場合がある。同じく、表記を「しらぬい」、そして発音も「しらぬひ(shi-ra-nu-hi)」とする場合もある。
「不知火」の意味解説
「不知火」とは、九州にある八代海または有明海で見られる、蜃気楼現象のことである。夜に海で漁をしている漁船の灯りが、蜃気楼によって、届くはずのない場所から見えるという現象だ。そして、光が妖しく揺れ動くという特徴がある。現代でこそその仕組みは解明されているが、原因が解明される以前は、正体がわからないものとして、畏怖の対象とされた。そのため、正体が知れない火ということで、「不知火」という名前が付けられた。なぜ「不知火(しらぬい)」と読むのか・理由
「不知火」は、そのまま漢文を読む形で「しらぬい」となる。「不知」は漢文で「しらず」と読み、体言である「火」と組み合わさる場合は、連体形の「しらぬ」となる。そのため、「不知火」を「しらぬひ」と読むのは、漢文的に何も問題はない。そして、そこから「火」の部分の読みが「ひ」から「い」へと訛る形で、「しらぬい」という読み方が主流になった。「不知火」の類語・用例・例文
「不知火」という言葉は、蜃気楼現象を指すために使用することが多い。そのため、例文は「不知火を見たいがために、九州まで行ってきた」「日本の幻想的な現象としては、不知火が有名である」といった形になる。また、不知火の現象が見られる九州を中心に、「不知火」という名字を持っている人もいる。したがって、「不知火氏に連絡を取らなければならない」「彼は不知火という珍しい名字を持っている」という風な使い方も可能だ。そして、「不知火」の類語としては、「蜃気楼」が挙げられる。不知火は特別な名前が付いているものの、あくまでも蜃気楼の一種である。そのため、現象そのものを指す場合には、「不知火」ではなく「蜃気楼」を使用しても、意味が成立する可能性が高い。
「不知火」の英語用例・例文
「不知火」を英語で表現すると、「unknowing fire」となる。「unknowing」が「不知」または「未知」、「fire」が「火」を意味する。そして、人の名前などの固有名詞として使用する場合は、特に訳すことなく、そのまま「Shiranui」と表現する。例文は、「Unknowing fire can be seen here(不知火はここで見ることができる)」「Mr. Shiranui is coming soon(不知火氏はまもなくやって来る)」といった形となる。- 《不知火》の正しい読み方のページへのリンク