《下さい》の敬語
「下さい」の敬語表現
「下さい」あるいは「ください」は、「くれ」の丁寧語もしくは「くださる」の命令形です。丁寧語であるため敬語表現ではありますが、命令を含んでいるため、尊敬語としては用いられません。なお、「くれ」は「くれる」の命令形、「くださる」は「くれる」の丁寧語です。「下さい」の敬語の最上級の表現
「下さい」あるいは「ください」に「ませ」を付けることで、より丁寧な表現にできます。しかし、「ませ」は「ます」の命令形です。そのため、「くださいませ」にもやはり命令のニュアンスが含まれるため、丁寧であっても目上の人に使うのには適していません。命令的で不躾なニュアンスを取るには、「下さい」をほかの尊敬語や謙譲語と組み合わせるとよいでしょう。たとえば、「くださいますようお願いします」は「下さい」における敬語の最上級の表現といえるでしょう。「下さい」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
「下さい」という言葉は命令を含むニュアンスを持っていますが、ビジネスの現場では一般的に使われています。むしろ、端的で分かりやすい表現を好むビジネスメールでは好んで使われる表現です。ビジネスメールや手紙での使い方としては「セミナー参加に制限はありません。お誘い合わせの上、奮ってお申し込みください」「皆様お誘いの上、是非ご出席ください」などが例として挙げられます。相手に時間や物を直接求める場合には「ご質問ありがとうございました。質問内容についてただいま社内で精査中です。回答まで今しばらくお時間を下さい」のように用います。ただし、「下さい」という表現は、それ単体で使うことはまずありません。他の言葉と組み合わせて用いるのが一般的です。そのため、ビジネスメールや手紙においては「尊敬語」あるいは「謙譲語」と「下さい」を合わせて使い、スマートな敬語表現にするとよいでしょう。相手に何かをお願いするビジネスメールや手紙では「先日ご依頼いただいた見積書を送付いたします。ご検討くださいますようお願い申し上げます」「メールでの案内は以上になります。これからも弊社製品をご愛顧くださいますよう、よろしくお願い申し上げます」と使います。
また、多少命令を含む文脈では「〇〇様。出張旅行清算書の提出がなされていません。至急経理部にご提出ください」「修正箇所の訂正をしましたので、ご確認ください」「次回の面談はいつがご都合よろしいでしょうか?ご都合がよい日程をお知らせください」のように用いられます。このような使い方は、多少とはいえ相手に行動を強いるので、社外へのビジネスメールや、上司もしくは目上の人などには、なるべく用いない方がよいでしょう。
「下さい」を上司に伝える際の敬語表現
「下さい」を上司に伝えるときは、少し工夫が必要です。そのまま使うと失礼にあたることがあるので、言い回しを変えてより丁寧な敬語表現にしてみましょう。例えば「確認ください」という言葉を使ったとすると、確認という行動を上司に求めることになります。そこで「確認」に「ご」を付け「ご確認ください」とすると、より丁寧な敬語表現になります。ただし、この使い方はあくまで丁寧さを増した表現にしたにすぎず、相手への敬意を表した表現ではありません。相手への敬意を表すためには「確認下さい」なら、確認を「お目通し」「ご一読」「ご高覧」といった言葉に置き換えてるとよいでしょう。「お目通し下さい」「ご一読下さい」「ご高覧下さい」のようにすれば、上司に伝える際にも問題なく「下さい」が使えます。
上司に仕える言葉に直すときにはクッション言葉を使うのもよい方法です。クッション言葉とは表現を和らげるために文章の前置きとして添える言葉のことです。「恐れ入りますが」「お手数をおかけしますが」「お忙しいところ申し訳ありませんが」といったものが例として挙げられます。「確認ください」ならば、「恐れ入りますが、ご確認ください」「お手数をおかけしますが、ご確認ください」などとすれば、相手を気遣っている気持ちが伝わる敬語表現になります。
「下さい」の敬語での誤用表現・注意事項
「下さい」は相手が行う動作を求める言葉なので謙譲語にはできません。しかし、「下さい」は謙譲語として誤用されることが少なくないので注意してください。例えば「窓口で伺って下さい」は誤用です。「伺う」という謙譲語と「下さい」が結びつかないからです。この場合は「窓口でお尋ね下さい」とします。なお、漢字表記の「下さい」と平仮名表記の「ください」は、厳密には使い分けする必要があります。動詞として使う場合は漢字表記、補助動詞として使う場合は平仮名表記になります。「下さい」の敬語での言い換え表現
「下さい」を動詞的に使う場合、「いただけますか」と言い換えられます。「いただけますか」は「いただく("もらう"の謙譲語)」を疑問文にしたものです。謙譲表現に言い換え、さらに疑問文としたことで相手への配慮がうかがえる言葉になっています。「その書類をいただけますか」「コーヒーをいただけますか」のように使います。補助動詞として用いられる場合には「お願いします」と言い換えることが可能です。「お願いします」は自身の行為にあたるので、謙譲表現にもできます。例えば「ご送付ください」ならば「ご送付をお願いします」「ご送付お願い申し上げます」などと言い換えられます。
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