フェアユース関連
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「著作権法の判例一覧 (アメリカ合衆国)」の記事における「フェアユース関連」の解説
判例の通称判決年裁判所(判例集番号)争点著作タイプ判決訴訟概要と判決要点特筆性フォルサム対マーシュ裁判(Folsom v. Marsh) 1841 C.C.D. Mass.(9. F.Cas. 342) フェアユース第1-第4基準全て 文章(印刷書籍) 違法 フェアユースの法理を確立した米国初の判例として知られる。歴史家ジャレッド・スパークス(英語版)が初代大統領ジョージ・ワシントンの書簡などの著作権を獲得し、12巻から成る『The Writings of George Washington』を上梓してフォルサム社(英語版)から出版。うち2巻は『The Life of Washington in the Form of an Autobiography』として別途マーシュ社(英語版)から後に出版したことから、無断転載でフォルサムが提訴した。当判決では、現代のフェアユース第107条の第1-第4基準に類似する観点が全て含まれる形で判示された。以降、1976年改正法でフェアユースが成文化されるまでの間、米国ではもっぱら司法判断に基づいてきた。 トムソン知事陣営対ギャレン候補陣営裁判(Keep Thomson Governor Comm. v. Citizens for Gallen Comm.) 1978 D. N.H.(457 F.Supp. 957) フェアユース第1・第3基準 音楽(実演) 合法 ニューハンプシャー州知事選において共和党現職メルドリム・トムソン・ジュニア(英語版)の選挙キャンペーンソング15秒分を民主党候補ヒュー・ガレン(英語版)が自身の選挙広告に流用。使用量が少なく、かつ政治討論目的のためフェアユースが認められた。 イタリアン・ブック対ABC裁判(Italian Book Corp., v. American Broadcasting Co.) 1978 S.D. N.Y.(458 F.Supp. 65) フェアユース第1・第3・第4基準 音楽(テレビ) 合法 ニューヨークで開催されたイタリア祭を現地取材してテレビでニュース報道したところ、祭で演奏されていた楽曲まで報道映像に含まれてしまった。使用量が限定的、また収録は故意ではない、かつ作詞作曲家の潜在市場価値を毀損していないためフェアユースが認められた。 エルスメア・ミュージック対NBC裁判(Elsmere Music, Inc. v. National Broadcasting Co.) 1980 S.D. N.Y.(482 F.Supp. 741) フェアユース第1 (パロディ)・第3基準 音楽(テレビ) 合法 NBC放送コメディバラエティ番組『サタデー・ナイト・ライブ』内で "I love New York" のパロディ曲が流れた。デ・ミニミス (ごく軽微な使用) であると判示。en: I Love New York#Imitationsも参照。 ロイ・エクスポート対CBS裁判(Roy Export Co. Establishment. of Vaduz v. Columbia Broadcasting System, Inc.) 1982 2d Cir.(672 F.2d 1095, 1100) フェアユース第2基準 映像(ニュース報道) 違法 チャーリー・チャップリンの72分映画から75秒を抜粋してチャップリン死去のニュース報道に使用 (Roy Exportはチャップリン作の著作権者)。抜粋箇所が映画の肝心なシーンだったためフェアユースは認められず。 ハスラー誌対モラル・マジョリティ裁判(Hustler Magazine, Inc. v. Moral Majority, Inc.) 1985 C.D. Cal.(606 F.Supp. 1526) フェアユース第4基準 文章(印刷書籍) 合法 出版実業家ラリー・フリント率いるポルノ雑誌『ハスラー』がキリスト教福音派で宗教右派のジェリー・ファルウェル牧師を冒涜する文章を掲載。これを同牧師が創設・運営する宗教組織モラル・マジョリティが引用して数十万部をコピーし、資金集めのために配布。既に雑誌は市場から引き上げられていたため、原著作物の利益侵害に当たらないとしてフェアユースを認める判示。なお、両者は精神的苦痛を理由に、別途ハスラー・マガジン対ファルウェル裁判でも対立し、最高裁まで争った。 フィッシャー対ディーズ裁判(Fisher v. Dees) 1986 9th Cir.(794 F.2d 432) フェアユース第1 (パロディ)・第3基準 音楽(デジタル以外) 合法 DJ/ラジオパーソナリティのリック・ディーズ(英語版)がジャズ曲 "When Sunny Gets Blue(英語版)" の29秒 (38小節) を引用してパロディを製作。不正競争防止、名誉棄損および著作権侵害に当たるとして、原曲作詞家フィッシャーが提訴。楽曲全体ではないことからフェアユース判定。 サリンジャー対ランダムハウス他裁判(Salinger v. Random House, Inc.) 1987 2d Cir.(811 F.2d 90) フェアユース第3・第4基準 文章(印刷書籍) 違法 小説家J・D・サリンジャーの未発表手紙を用いて無断でランダムハウスが書籍化を計画。未発表であり、手紙の内容が書籍の根幹をなすことからフェアユースの抗弁は棄却され、出版差止に成功。 スタインバーグ対コロンビア・ピクチャーズ裁判(Steinberg v. Columbia Pictures Industries, Inc.) 1987 S.D. N.Y.(663 F.Supp. 706) フェアユース第1 (パロディ) 基準 イラスト(デジタル以外) 違法 漫画家ソール・スタインバーグの作品が雑誌ザ・ニューヨーカーの表紙を飾り、1984年製作映画『ハドソン河のモスコー』の宣伝ポスターに流用された。スタインバーグの作品はアメリカ経済中心主義の偏狭さを風刺しており、映画ポスターも同様の風刺を用いている。原作を風刺していればフェアユースの定めるパロディに該当するが、ポスターは同調していることからフェアユースが成立しないと判示された。 ラブ対クウィットニー裁判(Love v. Kwitny) 1989 S.D. N.Y.(772 F.Supp. 1367) フェアユース第3・第4基準 文章(ニュース報道) 違法 ジャーナリスト個人同士の訴訟。1959年にイランのザヘディ将軍(英語版)によるクーデターでモサッデク首相が失脚した。ケネット・ラブ(英語版)がこのイラン政府転覆の予兆をいち早く調査して原稿に書き留め、それをジョナサン・クウィットニー(英語版)が使用した。原稿の半分以上が使用されたことから、フェアユースの引用の範疇を超えており、かつ未発表であったことから著作権侵害が認められた。 ライト対ワーナーブックス裁判(Wright v. Warner Books, Inc.) 1991 2d Cir.(953 F.2d 731) フェアユース第1・ 第3基準 文章(印刷書籍) 合法 小説家リチャード・ライトの未発表の手紙などを自伝作家が引用して出版。引用は全体の1%以下、かつ書籍上で説明目的で引用のため侵害にあたらない判示。 ツイン・ピークス対パブリケーションズ・インターナショナル裁判(Twin Peaks Productions, Inc. v. Publications International, Ltd.) 1993 2d Cir.(996 F.2d 1366) フェアユース第3・第4基準 文章(印刷書籍) 違法 人気ミステリーTV『ツイン・ピークス』の引用解説本を巡るケース。番組のあらすじ、登場人物、設定、セリフなどの引用量が多く、また公式解説本の売上に影響することから著作権侵害の判示となった。 サイエントロジー対パグリアリーナ裁判(Religious Technology Center v. Pagliarina) 1995 E.D. Va.(908 F.Supp. 1353) アイディア・表現二分論 (マージ理論)、フェアユース第1・第3基準 文章(デジタル) 合法 (ワシントンポスト) 新興宗教サイエントロジーの元信者で批判家のアーニー・ラーマ(英語版) (本名Arnaldo Pagliarini Lerma) は、同宗教団体が神聖視して秘匿する教本 (OT文書) を持ち出してインターネット上に全量公開したことから、連邦保安官から家宅捜査を受けたほか、当文書の著作権侵害で教会関連団体RTCから提訴された。またワシントンポストとその記者らも同件で提訴されている。ラーマは教団の教え (アイディア) とOT文書 (アイディアの表現) が融合していることから、OT文書に著作権保護を適用すると元となるアイディアまで排他的な保護がおよぶとしてOT文書に著作権はないとする「マージ理論」で抗弁した。しかし教団の教えはOT文書以外にも記述されていることから、その融合性を否定する判示となった。また引用量が広範であったことからフェアユース抗弁も否定された。一方のワシントンポストは、引用量が限定的かつニュース解説目的のためフェアユースが認められた。en: Arnie Lerma#RTC v. Lermaも参照。 サイエントロジー対ラーマ裁判(Religious Technology Center v. Lerma) 1996 E.D. Va.(40 U.S.P.Q.2d 1569) 文章(デジタル) 違法 (ラーマ) モンスター・コミュニケーションズ対ターナー・ブロードキャスティング・システム裁判(Monster Communications, Inc. v. Turner Broadcasting System. Inc.) 1996 S.D. N.Y.(935 F.Supp. 490) フェアユース第1・第3基準 映像(映画) 合法 モハメド・アリのボクシング対戦映像41秒を流用して自伝映画を製作。流用の秒数が短く、また映画内での情報提供に留まっているとして著作権侵害なしの判示。 ロサンゼルス・ニュースサービス対KCAL-TV裁判(Los Angeles News Service v. KCAL-TV Channel 9) 1997 9th Cir.(108 F.3d 1119) フェアユース第1・第2・第4基準 映像(ニュース報道) 違法 スクープ映像撮影で知られる独立系撮影社が1992年のロサンゼルス暴動の暴行シーンを撮影。その4分の録画から30秒を抜粋して地方局KCAL-TV(英語版)がニュース報道。営利利用、かつ抜粋箇所が肝心なシーンだったため著作権者の潜在市場での利益を侵害したと判定。 リングゴールド対ブラック・エンターテイメント裁判(Ringgold v. Black Entertainment Television, Inc.) 1997 2d Cir.(126 F.3d 70) フェアユース第1・第2基準 美術(テレビ) 違法 原告である芸術家の教会用キルト作品がTVコメディ『ロック(英語版)』内の背景映像で27秒使われた。キルト作品の著名性、TV背景セット上の重要性に加え、TV業界では許諾を取る慣習が存在することから、著作権侵害が認められた。en: Faith Ringgold#Copyright suit against BETも参照。 ドクター・スース対ペンギン・ブックス裁判(Dr. Seuss Enterprises, L.P. v. Penguin Books USA, Inc.) 1997 9th Cir.(109 F.3d 1394) フェアユース第1 (パロディ) 基準 文章(印刷書籍) 違法 元フットボール選手O・J・シンプソンによる殺人容疑裁判を、ドクター・スースの児童文学『キャット イン ザ ハット』の設定で物語る二次的著作物を巡るケース。ドクター・スースへの皮肉や悪ふざけの要素がないことからパロディとは見なされず、また非営利性および変形的利用に該当しないことから、著作権侵害の判示となった。 キャッスル・ロック・エンターテインメント対キャロル出版裁判(Castle Rock Entertainment, Inc. v. Carol Publishing Group Inc.) 1998 2d Cir.(150 F.3d 132) フェアユース第3・第4基準 文章(印刷書籍) 違法 人気コメディTV『となりのサインフェルド』のトリビアをクイズ形式で書籍にまとめて無断で出版。原著作のうち84話相当から引用し、また番組製作者の二次的著作物作成権を侵害したと判示された。 リーボヴィッツ対パラマウント・ピクチャーズ裁判(Leibovitz v. Paramount Pictures Corp.) 1998 2d Cir.(137 F.3d 109) フェアユース第1 (パロディ) 基準 写真(デジタル以外) 合法 写真家アニー・リーボヴィッツが妊婦姿の女優デミ・ムーアを撮影。これを映画『裸の銃を持つ男 PART33 1/3 最後の侮辱』がパロディ化して映画の宣伝に利用。パロディ利用に伴うライセンス料を原告は請求したが、フェアユースとして棄却された。 A&Mレコード他対ナップスター裁判(A&M Records, Inc. v. Napster, Inc.) 2001 9th Cir.(239 F.3d 1004) フェアユース第1-第4基準全て、寄与侵害(英語版)、代位侵害(英語版)、DMCA 音楽(デジタル) 違法 通称「ナップスター判決」。ナップスター社が無料配布したPeer to Peerソフトウェアによって無断で楽曲がユーザ間でファイル共有され、かつ各ユーザの保有楽曲を容易に検索できるようナップスターがインデックスを張っていたことから、A&Mなど音楽レーベル各社が著作権侵害の間接侵害で提訴。購入前の試聴目的であってフェアユースに該当するとナップスターは抗弁した。二審の控訴裁ではフェアスース第1基準の変形的利用(英語版)は見られず、第2・第3基準で楽曲の著作物性を認め、第4基準では実際の売上減発生や将来的なデジタル配信市場への参入障壁を指摘した。また1992年の家庭内録音法(英語版) (非商用の私的録音は合法と明示した著作権法改正) は本件には適合しないと判示された。寄与侵害については著作権保護中の楽曲シェアを知りつつ放置したとして、ナップスター側の責任を認めた。また代位侵害については、インデックスだけでは侵害の発生有無を把握できないものの、侵害ファイルへのアクセスを停止させるなど監督管理の能力を有していたとして、監督不十分の責が認められた。DMCAの免責適用についてはP2Pという分散システムの性質上、第512条 のインターネット接続事業者にナップスターが該当しないとされ、免責適用外とされた。 ケリー他対アリバ・ソフト裁判(Kelly v. Arriba Soft Corp) 2003 9th Cir.(336 F.3d. 811) フェアユース第1-第4基準全て 画像(デジタル) 合法 アリバ・ソフト社が運営する検索エンジンが画像を収集してサムネイル表示しており、自身のウェブサイトで写真画像を有料販売していたプロ写真家ケリーの作品も含まれていた。サムネイルは画像サイズが小さく解像度も低いことから第1基準 (変形的利用) は被告有利、インターネット公開写真も著作権対象であることから第2基準は原告有利、第3基準は中立、第4基準は被告有利。総合してフェアユースが認められた。Perfect 10対Amazon.com事件#サムネイルおよびen: Transformativenessも参照。 BMGミュージック対ゴンザレス裁判(BMG Music v. Gonzalez) 2005 7th Cir.(430 F.3d 888) フェアユース第4基準 音楽(デジタル) 違法 被告女性ゴンザレスは、Peer to PeerのファイルシェアKaZaAを利用して楽曲を大量ダウンロード。後に楽曲を購入するか判断するための試聴であり、ベータマックス裁判のタイムシフト (Time-shifting、後日視聴) との類似性を持ち出して抗弁した。しかし推定ダウンロード数は1370曲、うち30曲以上は被告のハードドライブに残っていた。またiTunesなど楽曲の一部のみ試聴できる合法サービスが別に存在することから、被告の抗弁の正当性が否定された。 ビル・グラハム・アーカイブズ対ドーリング・キンダーズレー裁判(Bill Graham Archives v. Dorling Kindersley, Ltd.) 2006 2d Cir.(448 F.3d 605) フェアユース第1・第3基準 画像(印刷書籍) 合法 ロックバンドのグレイトフル・デッドのポスターを別の書籍に流用。サムネイルサイズであり、かつ経歴解説の文脈内での利用のためフェアユース判定。 フィールド対Google裁判(Field v. Google, Inc.) 2006 D. Nev.(412 F.Supp.2d 1106) フェアユース第1基準 文章および画像(デジタル) 合法 Google検索のキャッシュ表示が著作権侵害か問われた裁判。サイト運営者は任意でキャッシュON/OFF設定ができるため、Googleに非がないとして棄却された。 Perfect 10対Amazon.com他裁判(Perfect 10, Inc. v. Amazon.com, Inc.) 2007 9th Cir.(508 F.3d 1146) フェアユース第1・第4基準 画像(デジタル) 合法 「#ケリー他対アリバ・ソフト裁判」の類似ケース。成人向け雑誌『Perfect 10』はヌード画像を有料会員に閲覧提供していたが、検索エンジンのGoogleがその画像を自動サムネイル化。またそのサムネイル画像をGoogleがAmazonに提供する業務契約を締結していたことから、Amazonの顧客も無料で画像が閲覧できる状態であり、Googleの行為に対し一時差止命令を請求した。サムネイルが小型・低解像であったことから変形的利用が認められ、また元サイト (Perfect 10) の出典表記とリンクによって閲覧者が誘導される仕組みであることから、損害性もないと判示された。 ワーナー・ブラザーズ対RDRブックス裁判(Warner Bros. Entertainment Inc. v. RDR Books) 2008 S.D. N.Y.(575 F.Supp.2d 513) フェアユース第1基準 (二次的著作物) 文章(印刷書籍) 違法 『ハリー・ポッター』シリーズの用語などを収録した百科事典。複数シリーズの用語を1冊の事典にまとめていることから「若干の変形性」は認められたものの、逐語的な引用が多いことからフェアユースの要求水準には満たないと判示された。en: Legal disputes over the Harry Potter seriesも参照。 サリンジャー対コルティング裁判(Salinger v. Colting) 2009 S.D. N.Y.(641 F.Supp.2d 250) フェアユース第1基準 (パロディ) 文章(印刷書籍) 違法 小説家J・D・サリンジャー作『ライ麦畑でつかまえて』の主人公コールフィールド少年の続編小説を別の筆者が創作。被告はパロディだと主張したが、少年を大人に設定し直しただけで性格などは原作を踏襲していることから、変形的利用の要件を満たしておらず、著作権侵害の判示となった。ただし一審では一時的出版差止が認められたものの、二審では差止に関する見解に修正が入っている。 ウォーレン出版対スパーロック裁判(Warren Publishing Co. v. Spurlock d/b/a Vanguard Productions) 2009 E.D. Pa.(645 F.Supp.2d 402) フェアユース第1・第3・第4基準、職務著作 画像(印刷書籍) 合法 当時フリーランサーだったコミック作家J. デヴィッド・スパーロック(英語版)のキャラクター「Gogos」がウォーレン出版のモンスター雑誌『Famous Monsters』191冊中51冊の表紙を飾った。ウォーレンはイラストの法人著作権を自社が有していると主張し、スパーロックは1回限りの使用許諾を雑誌社に与えたのみと主張。スパーロックがGogosのイラスト総集編を2006年に出版したことから訴訟となった。雑誌は四半世紀以上前に廃刊となっており、また表紙1ページのみで引用量が限定され、一部イラストは改稿されていることからフェアユース判定。アメリカン・コミックスにおけるクリエイターの権利も参照。 ゲイロード対アメリカ合衆国政府裁判(Gaylord v. United States) 2010 Fed. Cir.(595 F.3d 1364) フェアユース第1基準 美術(切手印刷) 違法 朝鮮戦争戦没者慰霊碑 (ウェスト・ポトマック公園(英語版)内) に屋外展示されている彫刻家フランク・ゲイロード(英語版)の彫刻作品19体のうち14体を、アメリカ合衆国郵便公社 (USPS) が朝鮮戦争の記念切手に使用。一審で著作権侵害は認められたものの損害賠償は5千ドルのみ。控訴審を経て約68万5千ドルに増額。3次元の彫刻を2次元の切手にするだけではフェアユース第1基準の変形的利用とは認められないと判示された。en: Frank Gaylord#Careerも参照。 Righthaven対リアリティ・ワン・グループ裁判(Righthaven LLC v. Realty One Group, Inc.) 2010 D. Nev.(No. 2:10-cv-LRH-PAL, 2010 WL 4115413) フェアユース第3・第4基準 文章(デジタル) 合法 著作権侵害が疑われる著作物の著作権を買い取って訴訟ビジネスを行ういわゆる「コピーライト・トロール」会社のRighthavenによる訴訟。新聞記事冒頭8文を不動産会社がブログに転載。8文だけで記事の核心ではなく、潜在市場価値に影響しないためフェアユースが認められた。 Righthaven対JAMA裁判(Righthaven LLC v. JAMA) 2011 D. Nev.(No. 2:2010-cv-01322, 2011 WL 1541613) フェアユース第1・第4基準 文章(デジタル) 合法 非営利団体JAMAは、警察による人種差別を指摘する目的で新聞記事を引用。Righthavenは新聞社から記事の著作権を購入した上でJAMAを提訴した。Righthavenが新聞社ではないことから、引用しても原告の潜在市場価値を損ねない。かつJAMAは非営利団体で引用目的も合致のため、フェアユースが認められた。 Righthaven対デモクラティック・アンダーグラウンド裁判(Righthaven LLC v. Democratic Underground LLC) 2011 D. Nev.(791 F. Supp. 2d 968) DMCA、フェアユース第3基準 文章(デジタル) 合法 オンラインの政治フォーラム "Democratic Underground" に新聞記事5文が引用された。当フォーラムはデジタルミレニアム著作権法 (DMCA) のセーフハーバー条項適用対象であり、かつ引用量は5文のみで収益インパクトも限定的なため、フェアユースが認められた。 ノースランド家族計画クリニック対バイオ倫理改革センター裁判(Northland Family Planning Clinic v. Center for Bio-Ethical Reform) 2012 C.D. Cal.(No. SACV 11-731 JVS) フェアユース第1 (パロディ) 基準 映像(デジタル以外) 合法 中絶擁護団体が作成した映像を流用し、中絶反対団体が比較映像を作成。一般的なパロディの定義にはユーモアやジョークなど笑いの要素が含まれるが、本件では笑いの一切ない批判や評論であってもパロディが成立すると判示された。 SOFAエンターテイメント対ドジャー・プロダクションズ裁判(SOFA Entertainment, Inc. v. Dodger Productions, Inc.) 2013 9th Cir.(No. 2:08-cv-02616) フェアユース第1・第4基準 映像(実演) 合法 バラエティTV番組『エド・サリヴァン・ショー』の映像7秒を使用し、ロックバンドのフォー・シーズンズのドキュメンタリー調ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』を創作。フォー・シーズンズの経歴を辿る目的で映像が使用されており、変形的利用が認めた。また当ミュージカルはステージ実演のみでDVD販売されていないことから、TV番組への損害が認められなかった。 カリウ対プリンス裁判(Cariou v. Prince) 2013 2d Cir.(714 F.3d 694) フェアユース第1基準 絵画(実物) 合法 フランス人写真家パトリック・カリウ(フランス語版)はジャマイカで撮影した作品を収録した写真集『Yes Rasta』を発行。アメリカ人画家リチャード・プリンス(英語版)がカリウの写真を元に絵画作品『Canal Zone』を創作し、ギャラリー展示したほか、展示用カタログにも収録した。変形的利用が認められた。 アロー・プロダクションズ対ワインスタイン・カンパニー裁判(Arrow Productions, LTD v. The Weinstein Company LLC) 2014 S.D. N.Y.(2014 WL 4211350) フェアユース第1基準 映像(映画) 合法 1972年ポルノ映画の代表作『ディープ・スロート』 (アロー製作) に主演したAV女優リンダ・ラヴレースを人物主題にして、2013年に自伝映画『ラヴレース』 (ワインスタイン製作) が創作された。『ラヴレース』に『ディープ・スロート』の3シーンが映像引用されたが、リンダ・ラヴレースの自伝本に基づいて自伝映画は製作されていること、また批判的見地から主題を捉えなおしていることを理由に変形的利用が認められた。 キーニッツ対スコニー・ネイション裁判(Kienitz v. Sconnie Nation) 2014 7th Cir.(766 F.3d 756) フェアユース第1基準 画像(衣類) 合法 ウィスコンシン州の市長を撮影した写真家マイケル・キーニッツの作品を改変し、選挙アンチキャンペーン資金集めのためにスコニー・ネイション社がTシャツにプリントした。屈辱的な表情、背景の除去、文字追加など変形度が高かったことからフェアユース判定。 FOXニュース対TVEyes裁判(Fox News v. TVEyes, Inc.) 2014 S.D. N.Y.(43 F. Supp. 3d 379) フェアユース第1・第3・第4基準 映像(デジタル) 合法・違法混在 1400局以上のテレビやラジオのメディア報道データベース検索を提供するTVEyesは、有料会員に1クリップあたり最大10分のニュース映像を提供していた。第1基準に則り、キーワード検索や閲覧については営利目的ではあるが変形的利用が勝るとしてフェアユース判定となった。引用の質と量を計る第3基準では、10分制限でニュース全量が見られる点が指摘された。収益インパクトを問う第4基準では、会員自身のパソコンダウンロードや他者へのEmail回付機能について違法判定となった。違法機能については終局的差止命令が下された結果、TVEyesはFOXニュースの取扱を廃止決定した。en: 2019 in American television (1月21日の出来事)も参照。 ケンブリッジ大学出版局他対パットン裁判(Cambridge University Press v. Patton) 2014 11th Cir. Ga.(769 F.3d 1232) フェアユース第1-第4基準全て 文章(デジタル) 合法 (一部違法) 「ジョージア州立大学著作権訴訟」とも。ジョージア州立大学がコースリザーブ(英語版)の電子システム (予習教材や参考書などをデジタル化して受講生に提供する閲覧・ダウンロードシステム) を使用して著作物を無断で大量に複製提供しているとして、ケンブリッジ大学出版局やオックスフォード大学出版局などが提訴。一審ではフェアユース第4基準 (収益インパクト) のみ原告有利だが、第1~3基準は被告有利としてフェアユースを認めた。二審では一審を覆し、再審理で一審に差戻しを命じたものの、大半はフェアユースの判示となった。その後、原告らは再審を求めた結果、2016年には一部の著作物は著作権侵害が追加で認められた。フェアユース4基準のうち、第1: 25%、第2: 5%、第3: 30%、第4: 40%のウェイトで判断。 全米作家協会対ハーティトラスト裁判(Authors Guild, Inc. v. HathiTrust) 2014 2d Cir.(755 F.3d 87) フェアユース第1基準 文章(デジタル) 合法 全米作家協会他対Google裁判の類似ケース。ハーティトラストはGoogleブックスのスピンオフで図書館連携プロジェクト。蔵書アーカイブのデジタル化を行っており、著作権侵害が問われた。フェアユースの第1基準 (非営利性) に合致のため合法の判示。 スウォッチ対ブルームバーグ裁判(Swatch Grp. Mgmt. Servs. Ltd. v. Bloomberg L.P. ) 2014 2d Cir.(742 F.3d 17) フェアユース第1基準 文章および音声(ニュース報道) 合法 時計メーカーであるスウォッチ・グループの役員から証券アナリストへの電話内容に収益性などの情報を含まれており、これを音声録音と文字書き起こしの形で経済メディアのブルームバーグが入手して公表。投資家への情報開示・報道目的であることから、フェアユース第1基準が定める「変形的利用」をそもそも満たす必要はないとされ、音声そのままの公表はフェアユースと判示された。 全米作家協会他対Google裁判(Authors Guild v. Google, Inc.) 2015 2d Cir.(No. 13-4829) 反トラスト法、フェアユース第1-第4基準全て 文章(デジタル) 合法 Googleブックスが無断で書籍を大量デジタルスキャン。著作権者を代表して業界団体の全米作家協会らが集団訴訟を起こした。当初は裁判所も著作権侵害を認め、原告団有利の形で総額1億2500万米ドルの和解交渉を進めていたものの、最終的にフェアユース判定となった。和解によってGoogleの電子書籍市場における独占化が進行し、反トラスト法 (独占禁止法) への抵触が懸念され、競合のマイクロソフトやAmazon、Yahoo!などが合従連衡で反対運動を展開したほか、フランスとドイツ政府が米国裁判所に反対意見書を提出したことでも知られる。終結までに約11年を要した。 カッツ対シェヴァルディーナ裁判(Katz v. Chevaldina) 2015 11th Cir.(No. 14-14525) フェアユース第1・第2基準 画像(デジタル) 合法 別名「カッツ対Google裁判」。米不動産王のラーナン・カッツが所有するショッピングセンターの元テナント女性がカッツの屈辱的な画像をGoogle検索し、カッツの経営への不満を公表するブログ記事に掲載した。カッツは写真の著作権が自分にあると主張し、一次責任者としてブログ執筆女性と、二次責任者としてGoogleを提訴した (後に対Googleは取り下げ)。二審では、ブログ記事が批判かつ非営利目的であること (第1基準)、および写真がカッツのポーズや表現、衣服などを印象付けるような表現性に欠ける (第2基準) としてフェアユースを認めた。 イコールズ・スリー対ジューキン・メディア裁判(Equals Three, LLC v. Jukin Media, Inc.) 2015 C.D. Cal.(14-09041) DMCA、フェアユース第1基準 映像(デジタル) 合法 マッシュアップ型のデジタル二次的著作物の判例。ジューキン・メディア(英語版)は一般ユーザ作成動画を収集し、その動画の利用者に対して著作者の代わりに利用ライセンス料を徴収するオンライン・メディア。また自社製作の動画もYouTube等に公開している。人気YouTuberレイ・ウィリアム・ジョンソン率いるイコールズ・スリー社がYouTubeにアップロードした動画の一部を、ジューキンがデジタルミレニアム著作権法 (DMCA) が定めるノーティス・アンド・テイクダウンの手続に則り、YouTubeに削除要請し、代わりにジューキン公式のYouTubeチャネルにリンク誘導した。イコールズ・スリーは広告収入減とDMCA濫用でジューキンを提訴した。動画1点を除き、イコールズ・スリーは全て変形的利用が認められた。 キーリング対ハーズ裁判(Keeling v. Hars) 2015 2d Cir.(No. 13-694) フェアユース第1基準 (パロディ) 映像(映画) 合法 映画『ハートブルー』 (原題: Point Break) のパロディ。二次的著作物は著作権者の許諾が法的に必要となるが、パロディかつ付加が多いため許諾不要との判示。en: Derivative work#Lawful works requirementも参照。 TCAテレビジョン対マッカラム裁判(TCA Television Corp. v. McCollum) 2016 2d Cir.(No. 1:16-cv-0134) フェアユース第1基準 (パロディ)・第4基準、更新手続 演劇(実演) 違法 お笑いコンビのアボットとコステロの持ちネタ "Who's on first?" をパロディ化してブロードウェイミュージカルとして実演。一審は変形性が高いとしてフェアユース判定だったが二審で否定し、かつ第4基準の損害性があると判定。しかし著作者の相続人が著作物の更新手続を怠ったことから、原告の訴えを退けた。 Oracle対Google裁判(Oracle America, Inc. v. Google, Inc.) 2019 最高裁で係争中 フェアユース第1-第4基準全て プログラム(デジタル) 未決 Oracleがサン・マイクロシステムズを企業買収する形で権利獲得したJava APIを、Googleが自社のモバイル用OSであるAndroidに利用したとして、特許権と著作権侵害で総額88億米ドル (約1兆円) の損害賠償を求めてOracleがGoogleを2010年に提訴した。一審では、陪審は著作権侵害の判断をしたものの、裁判所はJava APIが著作権保護の対象に当たらないとの理由で2012年に原告の主張を退けている。しかし2014年、二審では営利性および潜在市場への影響度の観点で圧倒的にOracle有利と見て著作権侵害を認めた。2019年1月、Googleは二度目の最高裁への上告受理申立 (certiorari) を行い、同年11月に受理された。
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