セアカゴケグモとは? わかりやすく解説

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セアカゴケグモ

別名:背赤後家蜘蛛

ヒメグモ科ゴケグモ属の毒クモ全身黒く膨れた背(腹部背面)に鮮やかな赤色模様がある。1995年初め日本国内での生息確認され外来種であり、特定外来生物指定されている。

セアカゴケグモは猛毒を持つことで知られる咬まれる激し痛み覚える他、吐き気呼吸困難などの全身症状現れる対処が遅れると死に至る危険もある。なお毒はメスのみが持つ。

セアカゴケグモはもともとオーストラリア生息するとされる日本では大阪府ではじめ発見され周辺各県でも生息確認された。その後10年の間に、北は岩手県、南は沖縄県まで、ほぼ全国でセアカゴケグモが発見されている。

せあか‐ごけぐも【背赤後家蜘蛛】

読み方:せあかごけぐも

ヒメグモ科クモ。雄は体長約3ミリ暗褐色。雌は体長10ミリ黒色または暗褐色背面赤色模様がある。雌は強い毒をもつが、性質おとなしい。オーストラリア原産熱帯地方分布

[補説] 日本では沖縄以外に生息しないとされていたが、平成7年1995)に大阪発見以降本州四国・九州地方でも確認された。特定外来生物指定されている。


セアカゴケグモ


セアカゴケグモ

セアカゴケグモ Latrodectus mactans hasseltii Fabricius

セアカゴケグモ

形態
 体長は雌が10~14mm、雄が約3mm。雌は球形腹部細長い脚を持ち全身黒で、腹部背面に赤~黄色斑紋があり、腹面には砂時計型の赤い大きな斑紋を持つ。個体により背面斑紋若干変化する
 若いクモ腹部クリーム色背面に2列6個の黒点があり,脱皮ごとに側面の黒い条斑が目だつうになる腹面には成体と同じ赤い砂時計斑紋がある。最後脱皮終わって成体になると,黒~茶色と赤の2色になる。
オス腹部はやや細長くメス同様の縦斑を持つ。
生態
 駐車場空き地公園墓地などで、石の下割れ目コンクリートブロック側溝割れたコンクリート隙間石垣隙間などに生息している。クモの巣張らず歩き回りながら小さななどを捕食する。雌は糸を編んだ卵嚢呼ばれる袋の中に一度150400個の卵を産卵するアメリカでは30日孵化、さらに4ヶ月で成グモに育つ。 寿命は約1年だが、実験室内では3年生きた例もある。日本での生態はまだ不明な点がある。

セアカゴケグモ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/10 12:44 UTC 版)

セアカゴケグモ
前から見たセアカゴケグモ
保全状況評価
NOT EVALUATED (IUCN Red List)
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: クモ綱 Arachnida
: クモ目 Araneae
: ヒメグモ科 Theridiidae
: ゴケグモ属 Latrodectus
: セアカゴケグモ L.hasseltii
学名
Latrodectus hasseltii
Thorell, 1870
和名
セアカゴケグモ
英名
Red-back spider
Red-back widow spider

セアカゴケグモ(背赤後家蜘蛛、Latrodectus hasseltii)は、ヒメグモ科に分類される有毒の小型のクモの一種。

形態

よく膨らんだ丸い腹を持つ黒いクモで背中の模様が良く目立つ

雌は体長10mm前後。体型は丸く、体表は鈍い光沢を帯びた黒色。胸腹部背面にはひし形が2つ縦に並んだような赤い模様、腹面には砂時計状の赤い模様があるので、見間違えることは少ない。この赤斑の形は雌雄で多少異なり、地色の黒が淡い個体もいる。雄は体長3-5mm。メスより小型で体型が細く、褐色がかった地色に淡色の目立たない斑紋を持つ。メスと異なり、胸腹部の背面に赤い模様は見られないが、腹面にはメス同様に赤い模様を持つ。ただし、幼体のうちはメスもオスも淡褐色の地に不明瞭な縞模様をもつのみで、成体のような明確な違い(性的二型)は見られない。

類似種

ゴケグモ類はよく膨らんだ丸い腹を持つものが多い。八重山諸島には在来種とされるアカオビゴケグモが分布するが、日本本土で見られるものはいずれも外来種とされる。

生態

造網性のクモで地面に近い所に網を張る[1]

は不規則網で、複雑に張られた三次元構造を持つ。その上方は糸に粘液がついていない「巣域」と呼ばれる住居で、卵嚢などもこの部分にぶら下げられる。一方、網の下方は「捕獲域」と呼ばれ、糸には捕獲用の粘液がついている。これに虫が触れて粘着すると、セアカゴケグモは粘糸を投げて獲物を絡め捕り、巣域まで引き上げて食べる。餌は主にアリゴミムシワラジムシハサミムシ等の地上徘徊性の昆虫類であり、まれに小型のトカゲ類を捕らえることもある。網はベンチの下や側溝の蓋の裏側、ガードレールの支柱付近などといった、地面に近く直射日光が当たらない場所に造られることが多い。

他のクモと同じく肉食性で網にかかった獲物を捕食する。逆に天敵としては肉食のクモを始め、幼虫がクモを食べるヒメバチ科の寄生蜂などが確認されている。肉食性のクモや蜂の中には在来種であるが、本種を餌として利用する者があることが報告されている[2]

交尾後には雌が雄を捕食することがしばしば見られる。

生態については大利ら(1996)の総説論文が詳しい[3]

分布

オーストラリア原産。ニュージーランド、アジア、ヨーロッパ、アメリカなどに移入分布する[4][5]

日本では沖縄県内の八重山諸島などでは1970年代には分布が知られていた[6]。ただ、これは後年別種扱いが妥当ということで、別種アカオビゴケグモ(L. elegans)とされている[7]。本土での本格的な発見は1995年に大阪府内での発見が最初とされる。当初は大々的に報道された結果近縁種も含め各地で生息が明らかになった。定着事例は関東地方以南を中心とするが、発見は東北や北海道も含めほぼ全国的に見つかっている[5]

分類

人間との関わり

毒蜘蛛

獲物に対してばかりでなく、ヒトに対しても比較的強い毒を持つことで知らる。成分は神経毒の「α-ラトロトキシン」である[4]。ほとんどの咬傷事例はメスによるものであり、かつてはオスは無害であるとされてきたが、少数ながらオスによる咬傷により激しい痛みが生じたという記録も存在する。オスによる被害が少ないのは毒性や咬合力が低いことが原因ではなく、体格が小さくそれに比例して牙も小さいためであると考えられている[8]。大阪府では毎年本種による被害が発生しているが、重篤者は出ていない[9]。2012年9月には、福岡県でも同様の被害が発生した。

オーストラリアでは抗毒素の導入以前に14件の死亡例が報告されているが、セアカゴケグモの咬傷のみが死因であるとは断定されていない[10][11]。2016年には抗毒素の導入以降60年来の死亡事故が発生したが、被害男性は重度の交通事故から回復したばかりであり、直接的な死因は噛まれた後の二次的な感染症であった[12]。日本では死亡例は報告されていない[4]。オーストラリアでは古くから代表的な毒グモとして知られており、抗血清も存在する。日本でも、発生地域の医療機関で抗血清を準備しているところがある。メスに咬まれた部位は激しい痛みを感じた後に腫れ、全身症状(痛み、発汗、発熱など)が現れることがある。重症化することは少ないが、全身症状が現れた場合には119番に通報して救急車を要請し、医療機関で診察を受けることが望ましい。また、子供や高齢者の場合には重症化する危険があり、大人でもアナフィラキシーショックを起こす場合がある[13]

特定外来生物

日本では、外来生物法によりゴケグモ属のうち本種及びクロゴケグモ・ハイイロゴケグモ・ジュウサンボシゴケグモの4種が2005年に特定外来生物の第一次指定をされている[4]。また、日本生態学会により日本の侵略的外来種ワースト100に選定されている[5]。-0.5度から46度までの低温・高温でも生息・繁殖ができ、日本でも越冬して発生を繰り返している[14]。なお、最近までクモ類では外来種は珍しく、これ以前にはクロガケジグモがあるのみであった。ただ、近年外来種は増加傾向にあり、ハイイロゴケグモ・ジュウサンボシゴケグモ・マダラヒメグモなどが確認されている。

駆除方法としては幼体・成体ともに、市販のピレスロイド系の殺虫剤によって駆除が可能である[5]。卵については、殺虫剤が効きづらいため、潰すか焼却する必要がある。

工業利用

糸が測量機器、測距儀、顕微鏡、爆撃照準器、望遠照準器などの光学機器の十字線(レティクル)に用いられる。未成熟期にある米国産クロゴケグモのそれが最適とされているが、採取に際し命を失う恐れがあるうえに、十分な量を確保するのが困難なため、遺伝子工学を駆使して、バクテリアにゴケグモの糸を生成させる研究が、アメリカ陸軍の資金により進行中である[15]

名前

標準和名は「セアカゴケグモ」とされ、八木沼(1970)やその改良である八木沼(1977)にその名前が確認できる[6][16]。和名は背面にある赤い模様が目立つという形態的な特徴に因むものである。「ゴケグモ」は英名のwidow spider(後家の蜘蛛)という名前の直訳である。これは交尾後に雌が雄を捕食してしまい、夫に先立たれた妻で後家のようになるという、このグループの交尾時にしばしば見られる生態的な特徴に因む命名とされる。

ゴケグモ類

クロゴケグモ(メス)

ゴケグモ類は、ゴケグモ属 (Latrodectus) というグループに分類され、約31種が知られている[4]。熱帯地方を中心に世界中に分布する仲間である。ゴケグモの名前の由来に関して、「毒性が強いため噛まれた時の死亡率が高く、奥さんが後家になる」という俗説が知られている。実際には、ゴケグモ類の英名 "widow spider" そのままの和訳で、ゴケグモ類はオスの体がメスに比べて非常に小さく、交尾後にオスがメスに共食いされることに由来する[4]。ただし、共食いの頻度などは種類や条件により異なる[4]

最も有名なゴケグモ類は、クロゴケグモ (Latrodectus mactans、black widow spider) で、北アメリカをはじめ、世界中に広く生息する毒グモ。こちらの方が死亡例なども多い。日本では2000年以降になって米軍岩国基地内での発生が確認されている。セアカゴケグモとはほぼ同じ大きさ。セアカゴケグモをクロゴケグモの亜種に分類する場合もあり、その場合には、セアカゴケグモによる死亡例が、世界中のクロゴケグモによる死亡例と統計上合計されている場合があり注意が必要である。アメリカでは『black widow(ブラック・ウィドウ)』という名で知られており、戦闘機P-61YF-23の愛称に採用された。

ジュウサンボシゴケグモ(メス)

またヨーロッパ南部に分布するジュウサンボシゴケグモ英語版 (Latrodectus tredecimguttatus、P. Rossi, 1790) も古来から有名で、その毒による症状はゴケグモ刺咬症 (Latrodectism) としてよく知られてきた。大利・池田(1996b)によれば、このクモに咬まれると、その時点での痛みはさほどではないが、10分ほどで全身症状が現れ、各部リンパ節が痛み、腹筋の硬直、さらに耐えられない痛みとともに多量の汗、涙、唾液が出、血圧上昇、呼吸困難、言語症などが起き、回復しない場合は2-3日後に死亡するという。しかし抗血清が作られるようになってからは、アナフィラキシー・ショック以外での死亡例はほとんどなくなったとされる。

脚注

出典

  1. ^ 夏原由博 (1996) セアカゴケグモの生態と刺咬症への対応. 生活衛生 40(1), pp.13-21. doi:10.11468/seikatsueisei1957.40.13
  2. ^ セアカゴケグモの“天敵”ハチ発見 針で一刺し、麻痺させて捕食 (1/2ページ)」『MSN産経ニュース産経デジタル、2009年5月7日、1面。オリジナルの2009年5月10日時点におけるアーカイブ。
  3. ^ 大利昌久, 新海栄一, 池田博明 (1996) 日本へのゴケグモ類の侵入. 衛生動物 47(2), p.111-119. doi:10.7601/mez.47.111
  4. ^ a b c d e f g 多紀保彦(監修) 財団法人自然環境研究センター(編著)『決定版 日本の外来生物』平凡社、2008年4月21日。ISBN 978-4-582-54241-7 
  5. ^ a b c d 村上興正・鷲谷いづみ(監修) 日本生態学会(編著)『外来種ハンドブック』地人書館、2002年9月30日。 ISBN 4-8052-0706-X 
  6. ^ a b 八木沼健夫 (1970) 日本の真正蜘蛛類相. 国立科学博物館研究報告 13巻4号, pp.639-701. doi:10.11501/2365830(国立国会図書館デジタルコレクション)
  7. ^ 西川喜朗, 金沢至 (1996) セアカゴケグモの発見とその毒性に対する対策. 環動昆 7(4), p.214-223. doi:10.11257/jjeez.7.214
  8. ^ Isbister, Geoffrey K.; Gray, Michael R. (2003-07-21). “Latrodectism: a prospective cohort study of bites by formally identified redback spiders”. Medical Journal of Australia 179 (2). ISSN 0025-729X. https://www.mja.com.au/journal/2003/179/2/latrodectism-prospective-cohort-study-bites-formally-identified-redback-spiders. 
  9. ^ 大阪府/セアカゴケグモによる咬傷にご注意ください!
  10. ^ Along came a spider - Australian Geographic”. www.australiangeographic.com.au. 2025年9月5日閲覧。
  11. ^ Australian Venom Research Unit. “Redback spiders, Family: Theridiidae, Genus: Latrodectus, Species: L. hasselti - The Australian Venom Compendium Venomous creature” (英語). www.avru.org. 2025年9月5日閲覧。
  12. ^ “More than $12k donated to family of man killed by spider”. The Northern Star. (2016年4月3日). オリジナルの2018年8月13日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180813143325/https://www.northernstar.com.au/news/mullum-man-jayden-burleigh-dies-days-after-redback/2994925/ 2018年8月13日閲覧。 
  13. ^ 利用案内・情報 ≫ ホットニュース ≫ 2008-07-01 :: 国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tokyo
  14. ^ 吉田永祥・吉田政弘・岩上泰雄・瀧 幾子・薗 輝久・内野清子・田中智之「セアカゴケグモLatrodectus hasseltii (Araneae : Theridiidae)除去後の個体群動態」『衞生動物』第54巻第4号、2003年、361-366頁。 
  15. ^ May R. Berenbaum, "BUGS IN THE SYSTEM: Insects and Their Impact on Human Affairs, 1995"
  16. ^ 八木沼健夫 (1977) 日本産真正蜘蛛類目録. Acta Arachnologica 27巻 特別号. p.367-406. doi:10.2476/asjaa.27.Specialnumber_367

参考文献

関連項目

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