意思決定 意思決定の概要

意思決定

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/22 05:48 UTC 版)

概要

意思決定はあらゆる状況で行われているが、経営学軍事学などの諸領域にとって、意思決定とは合理的な選択を行うことが求められる。意思決定の思考方法とは、正しい目標の認識や必要な情報の収集、目標達成のための方策案の考案と比較、最善の方策の選択と実行計画の立案、計画の実施の監督を包括するものである。個人の意思決定から集団の意思決定までに通用するものとして捉えることができる。しかし、厳密な意思決定のモデルについては、後述するように複数のモデルが考えられている。

俗に『バカの山、絶望の谷』という言葉があるが、ある判断において自分は決して間違っていないと思うとき、その判断そのものをよく分かっていないことが知られており[2][3][4]、意思決定は今や脳科学的によく研究されているのである[5]

各国の意思決定プロセス

世界

意思決定のプロセスは、国や民族の背景によって様々である。例えば北朝鮮のような一党独裁体制においてはトップダウンによる判断が絶対であるが、一般的な民主国家では異なる統治がなされている。また民主国家の体裁をとりながらも、アメリカイギリスのようにリーダーの意思決定が特に強い影響力を持つ場合もあり、多様性が認められる。

日本

日本の意思決定は、伝統的に礼儀コンセンサス(合意形成)を重んじる文化などを背景に、国家や企業において規定されている内容と実際に行われる事が違う、意思決定そのもののスピードが遅いと頻繁に言われる[6]。 原因として英語のレベルの問題から、海外事業においては輪をかけて遅いと言われ、各人の役割分担や責任範囲が明文化されておらず曖昧であることも挙げられている[7]

また企業では、相談役顧問のようなOBが現役の経営陣に対して影響力を持つなど、本来、意思決定に積極的に関与しない立場の役職が最も大きな権限を持つ慣例が認められている。企業統治における日本企業独自の意思決定プロセスは、東芝に代表される悪質な企業不祥事が特に多数発生した2015年に、経営体制の監督と執行の線引きについて議論が高まった。このためキヤノンでは、2016年1月に役員体制を変更し、取締役を17名から6名に削減、曖昧な役割の線引きが指揮命令系統の混乱に繋がりかねないとの見解から、事業責任を執行役員に集中させる体制に刷新することを発表した[8]

研究史

1978年ノーベル経済学賞を受賞したハーバート・サイモンが著名である。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校のベンジャミン・リベット博士1980年代に行った実験によると、ヒトの意思決定は以下の時系列で行われているとする結果となった[要出典]

1、「運動の指令信号を発する」
2、「自らの意志で指を動かそうと思う」
3、「実際に指が動く」

一般には2,1,3の順位で行われそうに思われそうだが、実験結果は以上の通りであった。運動の指令信号は被験者が意思決定した時間の0.35秒前に発生していた。この問題は脳科学者の間で大論争を巻き起こした。実験結果を素直に受け取れば「自由意志」が否定されるが、仮に被験者の意思決定が最初に発生し、それにより脳活動が惹起されたとするなら最初の意思決定は脳以外の場所が発したことになり、脳とは切り離された「精神」や「」というべき存在(二元論)を想定せねばならなくなり旧来の科学では受入れがたいものとなる。

大阪大学の北澤茂教授によると、リベット教授の実験以外にも多くの同様の結果を得ており、意思決定は人の意識に上がる前に無意識で決定されたのち、意識に上がると考えることができる。意識は、ヒトの行動や思考を支配しているのではなく、それらはむしろ無意識の領域にて行われ、意識は自分自身の置かれた状況や思考、行動などを把握するためのチェック機構として働いている可能性が高いと考えるのが自然だと述べている。すなわち、ヒトが意識する前にすでに脳は決心に向けて活動し始めている。このことから「私は今ここで、自分の意志で行動している」とする実感は幻想である可能性が指摘される[9]

うつ病や不安、またはいずれかの一般的な症状を持っている人々は、変化に追いつくのに苦労しており、したがって、より間違った選択をしたことが発見された。過去の成功に焦点を当てることで、より良い意思決定を行うことができる[10]

アプローチ

意思決定に対するアプローチには、経済学的アプローチ、経営学的アプローチ、システム分析的アプローチ、行動科学的アプローチ、組織行動論的アプローチ等がある。順に、人間行動の曖昧性・人間の能力の限界を考慮するアプローチである。


  1. ^ コトバンク - ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説
  2. ^ Lee, Chris (2012年5月25日). “Revisiting Why Incompetents Think They're Awesome”. Arstechnica.com. p. 3. 2014年1月11日閲覧。
  3. ^ Morris, Errol (2010年6月20日). “The Anosognosic's Dilemma: Something's Wrong but You'll Never Know What It Is (Part 1)”. New York Times. http://opinionator.blogs.nytimes.com/2010/06/20/the-anosognosics-dilemma-1/ 2011年3月7日閲覧。 
  4. ^ Dunning, David (2005). Self-insight: Roadblocks and Detours on the Path to Knowing Thyself. Psychology Press. pp. 14–15. ISBN 1-84169-074-0 
  5. ^ Decision-Making: Blending Art & Science”. Coursera. 2023年4月8日閲覧。
  6. ^ http://newsphere.jp/business/20140616-3/ 日本人の曖昧な表現、ビジネスで有利?海外メディアがその理由を指摘
  7. ^ http://bizgate.nikkei.co.jp/article/75643916_4.html なぜ決まらぬ、海外プロジェクトでもたつく意思決定
  8. ^ http://www.nikkei.com/article/DGXLZO96620510Y6A120C1TI1000/ 日本経済新聞
  9. ^ 『Newton』別冊「時間とは何か」改訂版 協力:北澤茂「決めた!」・・・それは本当に今? 2013年5月13日
  10. ^ Publishing, Harvard Health. “Focusing on past successes can help you make better decisions”. Harvard Health. 2021年4月13日閲覧。
  11. ^ Focusing on past successes can help you make better decisions” (英語). Harvard Health (2021年4月1日). 2021年7月8日閲覧。
  12. ^ a b Machine Ethics - Risks with AI” (英語). Coursera. 2022年12月21日閲覧。
  13. ^ Course introduction - Introduction to AI in work and business” (中国語). Coursera. 2022年12月21日閲覧。


「意思決定」の続きの解説一覧




意思決定と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「意思決定」の関連用語

意思決定のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



意思決定のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの意思決定 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS