地衣類 生育環境

地衣類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/13 02:36 UTC 版)

生育環境

見かけがコケと同じようなものであるのと同様、生育環境もコケと共通するものが多い。背の高いものが少ない点も共通である。

地表、岩の上、樹皮上などに着生するものが多い。樹皮についていても樹木から栄養を得ているわけではない[5]のかかるような所では種類が多いことも同様である。日本の温帯林では、サルオガセが樹上から垂れ下がるのが、よく目立つ森林がある。都会でもコンクリートの表面に出るものがある。

他の植物が生育できないような厳しい環境に進出できる。低温、高温、乾燥、湿潤などの環境をはじめとして、極地など寒冷な地域や、火山周辺など有毒ガスの出る地域にも特殊なものが生育する。この点、地衣類は菌類と藻類の共生体だが、そのどちらよりも厳しい環境に耐えることができる。

他方、水中やの上、室内や光の届かない洞窟などには生育しない。光合成や空気中の水分に依存するため大気汚染に弱いことも指摘されている[5]。樹皮上に着生するウメノキゴケなどの地衣類は、自動車の排気ガスに弱く、樹木に着生する地衣類は大気汚染の良い指標となることが知られ、たとえば公園の樹木を見ても、大通り側の樹木には地衣類が着生していない、といった現象がたやすく観察される。国立科学博物館などが1970年代から静岡市清水区でウメノキゴケを調査したところ、二酸化硫黄の年間平均濃度が0.02ppm以上になると弱って減り、工場の排煙規制が進むと工業地帯の清水港周辺で回復し、一方で自動車が多い国道1号沿道で確認できない調査地点が増えた[5]。また東京都などによるディーゼル車規制で、皇居で見つかる地衣類の種類が21世紀に入って増えた[5]。そういった意味では指標生物としても利用される。


  1. ^ 柏谷博之 2009, p. 10.
  2. ^ 白水貴(日本語) 『奇妙な菌類 ミクロ世界の生存戦略』NHK出版、2016年4月9日。ISBN 9784140884843 
  3. ^ 杉山純多, 岩槻邦男 & 馬渡峻輔 2005, p. 308.
  4. ^ 柏谷博之 『地衣類のふしぎ コケでないコケとはどういうこと? 道ばたで見かけるあの“植物”の正体とは?』SBクリエイティブ、2009年10月24日。 
  5. ^ a b c d e f g h i 【イチからオシえて】不思議な生き物「地衣類」大気汚染、ヒートアイランド現象の指標にも毎日新聞』朝刊2017年12月20日くらしナビ面(2022年11月20日閲覧)
  6. ^ 嶋田英誠. “野草譜 サルオガセ”. 跡見群芳譜. 2021年1月29日閲覧。
  7. ^ 黒川逍 1996, pp. 12–13.
  8. ^ 「雪茶」との関連が疑われる肝障害の事例”. 「健康食品」の安全性・有効性情報. 国立健康・栄養研究所. 2021年1月29日閲覧。
  9. ^ 地衣類とは”. 日本地衣学会. 2022年8月18日閲覧。
  10. ^ 地衣類とは”. 地衣類研究会. 2022年8月18日閲覧。





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