商品先物取引 現状

商品先物取引

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/31 10:03 UTC 版)

現状

市場

日本の商品先物市場は、戦後になって、農林水産省及び経済産業省(旧通商産業省)の管轄となっている。これは、先物取引の内の商品の受け渡しに注目した管轄の方法であり、CFTC(商品先物取引委員会)という専門組織があるアメリカ合衆国をはじめとする諸外国と異なる点であり、また管轄省庁が2箇所あることに起因する運営上の諸問題も発生している。

過去では、函館海産物取引所、大阪三品取引所などで当業者主義、当業者取引を中心に運営されていたこともあったが、現状の日本の商品先物市場は、米国など他の市場と違い商社などの当業者によるヘッジ目的の参加より、個人投資家による投機取引の方が大半を占め、実需家にとって需要の高い「ドル建て」を採用しておらず市場としての使いにくさが指摘されている。しかし個人投資家による投機は市場に流動性を与え[3]、ヘッジ目的の実需家やプロップハウス(自己ディーリングを専門に行う会社)、ファンドなどの機関投資家の市場参加を容易にしている側面があり、これら個人投資家の参加は市場活性化のために重要である。

経済産業省は、日本の商品先物取引同市場は過渡期であるとし、更なる健全な発展を目指しあらたな商取法改正法案を国会に提出した(商品取引所法及び商品投資に係る事業の規制に関する法律の一部を改正する法律案)。同案は2009年7月3日に衆参両院を通過し、1年以内の施行を目指している[4]2011年1月1日より施行される商品先物取引法は、商品取引所法と海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律が一本化される。(海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律で規制される海外商品先物取引及び商品取引所法で規制されている先物取引ではなく、法の盲点を突いた、海外商品オプション取引及び通常のロコ・ロンドン取引とは異なる、悪質な「ロコ・ロンドン取引」と称する金の現物繰延取引(スワップも加味したロールオーバーによる差金決済方式)とする金のまがい取引が社会問題化したことを踏まえ、これまで規制対象外だった海外商品オプション取引や店頭商品取引にも範囲を拡大された)。また、2010年2月には東京工業品取引所(TOCOM)の活性化を主目的とした「2010年にグローバルな工業品先物市場を実現する10のアクション[5]」を発表し、商品先物市場の発展に力を注ぐ姿勢を鮮明にしている。

TOCOMは1999年ガソリン灯油の石油製品を上場させた。その後、TOCOMの石油市場の価格透明性や市場としての利便性が高まったとして、2007年からは新日本石油が同取引所への会員加入を決める[6]と、他の石油元売も続々と参入を表明し、現在は大手6社全てがリスクヘッジなどに同市場を利用しているほか、仕切価格改定時の価格指標の一つとして採用するなど、当業者の参加は増加傾向にあり、欧米市場に近づきつつある[7]。また、白金ゴムなどは国際指標の一つとされる。

指標性を獲得出来ない取引(具体例として、福岡ブロイラー、横浜じゃがいも)もある。

2010年には中部大阪商品取引所から引き継いでザラバ取引となって中京ガソリンと中京灯油の取引が開始されたが、出来高については中部大阪取引所時代のガソリンと灯油と比較して激減している。ザラバ取引や24時間取引ついては、取引に直接参加しない者に一部賛成者がいる。理由として、ザラバならば、取引時間内ならばいつでも、24時間取引なら、何かあれば、すぐに注文が出せるため。しかし、この理論が成立するには、多くの取引参加者が、期近から期先まで、絶えず参加していることが前提であり、その前提がなければ、市場そのものが成立しないことになる。特定の時間に取引参加者を集める板寄せは、この点は長所である。そのため、東京穀物商品取引所の銘柄については、市場の参加者である一般委託者や当業者などからザラバ化反対(板寄せ維持)の意見が多数出ている。また、ザラバ化によるコーヒー、粗糖、Non大豆、中京ガソリン、中京灯油の衰退は、ザラバの短所によるところが大きい。そのため、近年、2010年までについては、ザラバに移行しても市場が衰退しなかった例は、東京ゴムしか存在しない。

取引員と顧客

商品先物取引は商品取引員に預託した資金の限度一杯に売買する事(満玉)は危険であり、これは「必敗の法」、「丁半博打と同じ」とされる。以前は、手当たり次第に新規顧客を開拓し、それらに無理な売買を勧め、金銭的破綻に追い込む「客殺し」と呼ばれる取引員が多数存在していた。そのため投資家とのトラブルが後を絶たず、相談や苦情が監督官庁に多数寄せられていた。経済産業省は、勧誘規制や商取会社の破綻への備えの強化策などを盛り込んだ、改正商品取引所法2006年4月に施行し、投資家保護の姿勢を鮮明にしたが、取組高・出来高の減少や取引員の撤退が相次いでおり、市場全体は縮小傾向に向かっている。さらに出来高減少により、商品取引所にとって手振り板寄せ取引よりコストがかかるシステム取引のコスト負担が経営を圧迫している。

また、「初期の投資額以上の損失が発生する可能性のない」という取引以外は顧客側からの要請がない限り勧誘を禁止する(不招請勧誘の禁止)規制についても、導入が決まっていて、それに伴い倍率が引き下げられ、FX取引の倍率規制同様に、出来高が減少することが危惧されている。

取引証拠金

証拠金制度については、計算方法について、過去の価格帯(東京穀物商品取引所中部商品取引所関西商品取引所)や価格変動(東京工業品取引所)をもとに、証拠金額を建玉1枚あたりで計算しているが、(株)日本商品清算機構は、同社が価格変動を基準に証拠金額計算の基礎となる値(変数)を決定する方法(SPAN)を2011年1月4日の導入を決定している。

SPAN制度については、取引追証拠金については、従来は、帳入値段により計算した値洗い損から既に発生している取引追証拠金額を控除した額が商品取引所の定める取引本証拠金基準額の50%相当額を超えた場合に発生したもの(翌営業日の正午までに追証の差し入れがなければ、取引員は強制決済することができる)が、帳入値段により計算した値洗い損が維持証拠金を超えた場合に追証の差し入れをして維持証拠金を維持するか決済するかを翌営業日の正午までに求められる(追証の差し入れがなければ、商品先物取引業者は強制決済することができる)。さらに、証拠金については、現行の証拠金制度と比較して概ねレバレッジが高くなった(倍率が高くなった)。

証拠金制度については、商品先物業者が事実上ほぼ横並び(取引本証拠金の下限である取引本証拠金基準額にほぼ横並びであった)であったものが、SPAN制度と従来型の制度が併用され、SPAN制度の運用についても含め、証拠金の金額など証拠金の運用については商品先物取引業者ごとに異なっている。




  1. ^ 最高裁平成20年(受)第802号同21年7月16日第一小法廷判決民集第63巻6号1280頁
  2. ^ 最高裁平成17年(受)第2292号同19年7月19日第一小法廷判決民集第61巻5号2019頁
  3. ^ [1]
  4. ^ 日本経済新聞 2009年7月4日
  5. ^ 2010年にグローバルな工業品先物市場を実現する10のアクション (PDF) - 経済産業省商務流通グループ商務課 平成22年2月[要ページ番号]
  6. ^ 日本経済新聞 2007年11月27日
  7. ^ 日本経済新聞 2009年5月27日
  8. ^ 最高裁昭和38年(あ)第1417 号同41年7月13日大法廷判決刑集第20巻6号583頁
  9. ^ 指定市場開設者が有する違約担保積立金、特別担保積立金並びに指定市場開設者が付保する損害賠償保険
  10. ^ 関門商品取引所二十五年史(会員組織関門商品取引所昭和56年8月1日発行)
  11. ^ [2]
  12. ^ 日本取引所グループへの問い合わせ・回答:大阪取引所への商品市場の移管の法的枠組みについて”. 2020年6月19日閲覧。
  13. ^ 商品先物取引に係る充用有価証券を商品取引員が換価処分した場合の課税関係
  14. ^ asahi.com H16.1.28記事






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