循環取引とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > ビジネス > 商取引 > 取引 > 循環取引の意味・解説 

循環取引

読み方:じゅんかんとりひき
英語:round-trip transactionround-tripping

企業間取引において、実際に商品移動しない伝票だけが行交う取引のこと。

循環取引は、実態伴わない架空取引1つである。

循環取引は主に、売上高水増しや、短期資金調達などを目的行われることが多い。

なお、循環取引により、粉飾決算が行われたと見なされた場合には、商法会社法抵触し刑事責任民事責任問われることがある

じゅんかん‐とりひき〔ジユンクワン‐〕【循環取引】

読み方:じゅんかんとりひき

A社からB社へ、さらにC社へと次々商品書類上だけで売買し最後はまたA社へ戻る取引売買手数料はA社の負担となる。不正とされるが、売上水増しすることで、増資融資など資金調達有利になるとされる


循環取引

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/12 07:36 UTC 版)

循環取引(じゅんかんとりひき、英: Round-tripping)は、複数の企業・当事者が互いに通謀し、商品の転売や業務委託などの相互発注を繰り返すことで、架空の売上高を計上する取引手法のこと。

概要

循環取引においては、商品やサービスそのものは最終消費者・需要家に販売・提供されず、当事者・業者の間で転売が繰り返されているだけであり、本来の意味での売上(=消費)は発生しない。なお、商社や卸売業者では、一般に商品在庫の多寡を背景に、業界仲間内で保有在庫を転売し、在庫と資金(キャッシュ)の保有比率を適正に維持するための商取引が普及している。そのため一般に商品の転売行為そのものが違法・不当として認識されているわけではなく、それを取り締まる法的根拠は無い。

しかし、循環取引では通謀し伝票をやり取りするだけで売上高が不正に操作できることから、企業の成長性を高いように仮装して金融機関の融資を容易にし、あるいは債券株式の新規発行を有利に導く目的で行われることがあり、この場合は融資関連の調査資料や有価証券報告書に対する虚偽記載の容疑として立件・摘発の対象とされる。企業の営業責任者が売上ノルマ達成を目的として取引先業者と癒着し仮装している場合や、取引先からの短資融通を断れないまま手を染めている場合があり、内部監査や告発などにより経理資料が不公正な状態になっていることが発覚するケースも多い。

循環取引の例

一般に新興企業では売上高の成長性を重視する傾向にあり、利益が必ずしも計上されていなくても「将来性のある企業」として評価されることがある。そのため互いに通謀した企業が実態の乏しい商品転売やサービス受発注、バーター取引を繰り返し、売上高を不正に操作することで当該企業の成長性を演出できる余地が生じる。

この場合、毎期ごとに売上に相応した消費税や、従業員給与などの固定費が発生することとなるが、仮装された成長性を背景に毎期毎期と増資や融資の獲得を繰り返すことで欠損を補填することが可能であれば、架空での循環取引は破綻しない。

別の事例として、複数の商社・卸が仲間取引として商品在庫の転売を行っている関係において、特定の商品在庫(主に保存性の高いもの)を指定倉庫に保管したまま転売買を繰り返すうちに、かつて自社が転売したのと同数量を転買するケースがある。指定倉庫に保管したまま(場合によっては輸送中の貨物船の船荷証券を対象として)転売買を繰り返すことは商社・卸においては通常の業務であり、原油やゴム、穀物、くず鉄・銅類など産業資材のほか、冷凍食材や絞汁果汁など中間生産物など多岐にわたり存在し、上流(原材料)からの購入以外にも同業他社からの転売買を含めて在庫の調整をおこなうことがある。転売買取引においては通常1~数%の転売買手数料(マージン)を申し出側が受け手側に支払う慣習があることから、正常な取引意識においては「転売した商品を同値で買い戻す」と確実に損失が発生する。一方で短期資金を必要とする企業は倉庫証券を転売することで資金を融通することが可能となる。

この商流を活用し、期末に保有在庫を転売し決算後に買い戻すなどの手法をもって架空の売上高が演出できる余地がある。カネボウでは決算期末に子会社に在庫を転売し期首に買い戻す不正(押し込み・宇宙遊泳)が問題とされ、上場廃止への契機となった[1]。しかし、資本関係のない企業間においては通謀した仮装行為は監査の対象から洩れる状態となっており、複数の仲間取引を舞台とした売上操作の余地が存在する。

エンロンの事例では、デリバティブによる匿名の流通市場の存在を背景に、自社売りの電力を自社買いするという仮装売買の手法を駆使して売上高の急成長を演出した[要出典]

カルーセルスキーム

付加価値税(英: value-added tax, VAT)の還付制度を利用して国庫から不当な利益を得るスキームとしてカルーセルスキーム(英語:carousel scheme)がある。カルーセルスキームは事業者間取引の循環を作り、その循環取引チェーンの中で、納税義務者と還付担当者を作りあげ、還付は受ける一方で納税義務者が(ミッシングトレーダーとして)義務を果たさないことで利益を得ようとするスキームであり、付加価値税の歴史が古いEUでは特に大きな問題となっており年間約500億ユーロの被害が生じているとされる[2]。日本でもすでに同様の犯罪が行われており、2018年9月に財務省が公表した金地金密輸スキームモデルによると、香港などで金地金を購入しそれを日本に密輸し(制度上はこのさい消費税を支払うことになるがこれを支払わず)、日本国内で消費税込みで売却することで消費税分の利益を得るというものである[3]。これは金地金の国際市場が存在することを利用したカルーセルスキームであり、本来輸入時に支払うべき消費税を納めない密輸者がミッシングトレーダーに該当する[4]

2017年には東京・秋葉原で免税店を運営する宝田無線電機が貴金属関連製品の製造を手掛ける明成などから仕入れた金製の工芸品を訪日外国人に900億円で販売したとして、仕入時に負担した消費税約70億円の還付を申告したところ、東京国税局の税務調査の結果、購入者が名義を貸しただけだったケースが複数あり、製品の大半は国外に出ていなかったことが確認され、仕入と買戻を繰り返す循環取引を行っていたと認定された。訪日外国人が免税対象の商品を国内で購入した場合に消費税を支払う必要はなく、事業者が申告すれば仕入時に負担した消費税が還付されるという制度を利用したものとされる[5]

round trippingという用語について

"round trip"は往復旅行や周遊旅行を表現する英語であり、ウォールストリートジャーナル紙の用語解説[6]によれば、round-trippingは「企業が収益を上げるために、見せかけの相殺取引を行うこと」[7]とされ、FincyclopediaによればLazy Susansと表現することもあるとされる[8]。この「round-tripping」という表現は国際投資関係において「投資家が(節税等を目的として)タックスヘイブンなど海外の特定目的会社に資金を出資し、その後、自国に直接投資という形で資金を還流させること」[9]としても利用されるので注意が必要である。

循環取引が問題となった事例

脚注

  1. ^ カネボウでは1993年から子会社の興洋染織に対する異常な取引が始まり(P.50)、またこの頃よりメインバンクのさくら銀行からの融資引上圧力のため副社長から「粉飾してでも利益を上げろ」と経理担当幹部に叱責するような社内環境が生じ(P.46)、1996年からは債務超過を粉飾決算で隠すような状況が生じていた(P.44)。戦後日本のディスクロージャーに関する法令は1948年4月13日証券取引法全面改正法から開始されたが一貫して単独会計主義であり、1978年3月決算からは連結決算の作成も義務付けられていたが、実情は単独決算を重視し連結決算の情報開示はほとんど行われていない状況であった。2000年3月期から証券取引法のディスクロージャー制度が大幅に見直されることとなり、ここでカネボウの循環取引を含めた粉飾決算が露呈することとなる。(参考1)亀岡恵理子「カネボウ粉飾決算の構図と連結会計基準の変更」(早稲田大学産業経営研究所『産業経営』第48号、2011.8)[1](参考2)小林和子「日本におけるディスクロージャーの歴史」(大阪市立大学経営学会、経営研究第53巻第4号、2003.1)[2][3]
  2. ^ 錦織俊介 2021, p. 236.
  3. ^ 錦織俊介 2021, p. 293.
  4. ^ 錦織俊介 2021, p. 294.
  5. ^ a b 秋葉原の免税店、消費税不正還付申告 会社側は否定”. 日本経済新聞社. 2023年6月16日閲覧。
  6. ^ Terminology of Turpitude. (Sept. 25, 2002 7:02 pm ET)
  7. ^ "In round-tripping, a company engages in sham, off-setting transactions to boost revenue. "
  8. ^ Fincyclopedia "Lazy susans"(Last update: Apr 25, 2013)
  9. ^ ISSUES PAPER (DITEG) # 13 "ROUND TRIPPING (PDF) "(IMF COMMITTEE ON BALANCE OF PAYMENTS STATISTICS AND OECD WORKSHOP ON INTERNATIONAL INVESTMENT STATISTICS )
  10. ^ *(参考1)Forbes.com Round Tripping On Energy, May 16, 2002.(参考2)Bala G. Dharan & William R. Bufkins "Red Flags in Enron's Reporting of Revenues and Key Financial Measures"(Rice University Business School, 2004)[4]
  11. ^ 子会社の架空取引について”. 日本電気 (2006年3月22日). 2006年4月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年7月11日閲覧。
  12. ^ 不適切な取引行為に関する報告等” (pdf). 加ト吉 (2007年4月24日). 2019年7月11日閲覧。
  13. ^ 神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 製糖業(06-071) 大阪朝日新聞 1919.7.11 (大正8)
  14. ^ 当社関係会社の取引に関する一部報道について”. 富士通 (2007年6月7日). 2019年7月11日閲覧。
  15. ^ 告発の現場から③-IT企業の粉飾-” (pdf). 金融庁証券取引等監視委員会. 2019年7月11日閲覧。
  16. ^ (参考資料)最近の粉飾事案”. 金融庁証券取引等監視委員会. 2019年7月11日閲覧。
  17. ^ 当社子会社の不適切な取引について” (pdf). ジーエス・ユアサコーポレーション (2008年9月19日). 2019年7月11日閲覧。
  18. ^ 調査報告書” (pdf). ジーエス・ユアサコーポレーション (2009年10月28日). 2019年7月11日閲覧。
  19. ^ 当社連結子会社における不適切な取引及び会計処理について” (pdf). 伊藤忠商事 (2015年4月17日). 2019年7月11日閲覧。
  20. ^ “伊藤忠、子会社が不適切取引 在庫の循環取引など”. 日本経済新聞社. 日経QUICKニュース(NQN). (2015年4月17日). https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL17HNT_X10C15A4000000/ 2019年7月11日閲覧。 
  21. ^ 毎日新聞(関西)の記事[リンク切れ]
  22. ^ 樋口晴彦「メルシャン循環取引事件の事例研究」『千葉商大論叢』第50巻第1号、千葉商科大学、2012年9月、71-83頁、ISSN 0385-4558NAID 110009487309 
  23. ^ 被害額100億円以上?TSR独自取材で循環取引の実態に迫る”. 東京商工リサーチ. 2019年7月11日閲覧。
  24. ^ インデックス粉飾、関連80社で「循環取引」 十数回、会長主導”. 産経デジタル (2014年5月30日). 2019年7月11日閲覧。
  25. ^ “粉飾決算、二審も有罪 ゲーム会社のインデックス”. 産経新聞社. (2017年11月7日). https://www.sankei.com/affairs/news/171107/afr1711070029-n1.html 2019年7月11日閲覧。 
  26. ^ 当社子会社における実在性の確認できない取引について” (PDF). 東芝. 2020年1月21日閲覧。
  27. ^ 共和コーポ、架空循環取引に社員関与 過去の決算訂正”. 日本経済新聞社. 2020年5月31日閲覧。
  28. ^ 第三者委員会による調査報告書受領と業績に与える影響、再発防止策等について” (pdf). 共和コーポレーション. 2020年5月31日閲覧。
  29. ^ (株)TMD(旧:宝田無線電機(株))”. 東京商工リサーチ. 2023年6月16日閲覧。

参考文献

  • 「循環取り引きの法的検討」遠藤元一(『NewBusinessLaw 4月1日号(No.902)、4月15日号(No.903)』)
  • 「循環取り引きによる粉飾の実態と発見チェックポイント」井畑和男(『NewBusinessLaw 4月15日号(No.903)』)
  • 錦織俊介「消費税の納税なき仕入税額控除とカルーセルスキーム」『税務大学校論叢』第103巻、2021年6月、229-303頁。 
  • 日本公認会計士協会:「循環取引に対応する内部統制に関する共同研究報告」及び「公開草案に対するコメントの概要及び対応」の公表について(2024.4.8)[5] ※本文に詳細な様態の研究、対策集などあり

関連項目


循環取引

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 09:46 UTC 版)

テーブルマーク」の記事における「循環取引」の解説

2007年3月25日読売新聞が、加ト吉グループ会社事実上資本提携関係にあったJTも含む)の間で循環取引があったのではないか報道した。これを受けて加ト吉調査委員会設置、その調査報告書によると一連の取引による連結売上高水増し2007年3月期までの6年間で総額984億円に上ることが明らかとなった取引には岡谷鋼機名古屋市)、茶谷産業大阪市)等が関与したことが明らかとなっている。茶谷産業売掛債権購入したみずほ銀行からは、38億円の代金回収訴訟提起された。 4月24日経営責任明確にするため、加藤義和会長社長実弟加藤義清副社長取締役辞任要求され辞任しそれぞれ相談役・顧問就いたまた、循環取引に多く関ったとして、高須常務当時)も辞任した後任社長には、資本提携先の日本たばこ産業JT出身であり、当時副社長であった金森哲治就任した金森就任の際の記者会見冷凍食品以外の事業売却ほのめかしていたが、実際に金森在任中に行った案件JTグループ食品事業集約など足場固め中心で、事業売却本格化2009年山田良一社長に就任してからである。 一連の事件余波によって手形不渡り発生し冷凍食品・レトルトスープカレー製造のエヌケイフーズ(北海道紋別郡遠軽町、現・ベル食品遠軽工場)の経営が行詰まった5月30日監査法人承認得られなかったことを理由2007年3月決算発表延期した。これに伴って大阪証券取引所加ト吉株式監理ポスト移管した。6月26日、ようやく監査法人承認得て2007年3月決算発表したこれに伴い6月28日大阪証券取引所監理ポストからも外された。 最終的に過去6年間における不適切取引による売上高水増しは1,061億円、回収懸念債権額143億円、在庫評価損30億円となった。これに基づいて2007年3月決算貸倒引当金繰入148億円、棚卸資産評価損30億円が計上された。その結果単年度みせかけ99億円の当期純損失となった

※この「循環取引」の解説は、「テーブルマーク」の解説の一部です。
「循環取引」を含む「テーブルマーク」の記事については、「テーブルマーク」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「循環取引」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



循環取引と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「循環取引」の関連用語

循環取引のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



循環取引のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
新語時事用語辞典新語時事用語辞典
Copyright © 2025 新語時事用語辞典 All Rights Reserved.
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの循環取引 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのテーブルマーク (改訂履歴)、ATT (企業) (改訂履歴)、仮装売買 (改訂履歴)、アーネスト (アミューズメント機器) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS