循環取引の例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/21 04:34 UTC 版)
一般に新興企業では売上高の成長性を重視する傾向にあり、利益が必ずしも計上されていなくても「将来性のある企業」として評価されることがある。そのため互いに通謀した企業が実態の乏しい商品転売やサービス受発注、バーター取引を繰り返し、売上高を不正に操作することで当該企業の成長性を演出できる余地が生じる。 この場合、毎期ごとに売上に相応した消費税や、従業員給与などの固定費が発生することとなるが、仮装された成長性を背景に毎期毎期と増資や融資の獲得を繰り返すことで欠損を補填することが可能であれば、架空での循環取引は破綻しない。 別の事例として、複数の商社・卸が仲間取引として商品在庫の転売を行っている関係において、特定の商品在庫(主に保存性の高いもの)を指定倉庫に保管したまま転売買を繰り返すうちに、かつて自社が転売したのと同数量を転買するケースがある。指定倉庫に保管したまま(場合によっては輸送中の貨物船の船荷証券を対象として)転売買を繰り返すことは商社・卸においては通常の業務であり、原油やゴム、穀物、くず鉄・銅類など産業資材のほか、冷凍食材や絞汁果汁など中間生産物など多岐にわたり存在し、上流(原材料)からの購入以外にも同業他社からの転売買を含めて在庫の調整をおこなうことがある。転売買取引においては通常1~数%の転売買手数料(マージン)を申し出側が受け手側に支払う慣習があることから、正常な取引意識においては「転売した商品を同値で買い戻す」と確実に損失が発生する。一方で短期資金を必要とする企業は倉庫証券を転売することで資金を融通することが可能となる。 この商流を活用し、期末に保有在庫を転売し決算後に買い戻すなどの手法をもって架空の売上高が演出できる余地がある。カネボウでは決算期末に子会社に在庫を転売し期首に買い戻す不正(押し込み・宇宙遊泳)が問題とされ、上場企業への連結決算が義務付けられる要因となった。しかし、資本関係のない企業間においては通謀した仮装行為は監査の対象から洩れる状態となっており、複数の仲間取引を舞台とした売上操作の余地が存在する。 エンロンの事例では、デリバティブによる匿名の流通市場の存在を背景に、自社売りの電力を自社買いするという仮装売買の手法を駆使して売上高の急成長を演出した[要出典]。
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