Group theoryとは? わかりやすく解説

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群論

(Group theory から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/04/05 14:08 UTC 版)

群論(ぐんろん、英語: group theory)とは、と呼ばれる代数的構造を研究する数学の一分野である。群とは、集合に結合的演算が定義され、単位元逆元の存在が保証された構造のことであり、抽象代数学における最も基本的かつ中心的な概念の一つである。

ベクトル空間などは、演算公理が付与された群とみなすことができる。群論の方法は代数学の大部分に強い影響を与えている。

線形代数群リー群の理論は群論の一分野であり、特に発展を遂げて独自の適用範囲を持っている。

結晶や、分子などの構造の多くは、点群で表現できる。このように、群論は、物理学化学の中に多くの実例・応用例がある。

1950年代から2000年代にかけて発表された総計1万ページを超える論文によって、完全な有限単純群の分類が達成された(当初1983年に完了が宣言されたが[1]、一部のギャップが埋められたのは2004年である[2])。これは数百人に及ぶ数学者の共同作業によって成し遂げられた大規模なプロジェクトであり、20世紀の数学における主要な達成の一つである。

研究史

群論は、歴史的に3つの源泉がある。数論代数方程式論、幾何学である。数論の系統は、オイラーに始まり、ガウス合同式の理論、および二次体に関係した加法群・乗法群の研究によって発展した。

置換群に関する初期の研究成果は、ラグランジュルフィニアーベルらの、代数方程式の一般解の研究の過程で得られた。

1830年代、エヴァリスト・ガロアは、代数方程式の可解性の判定に群を導入し、「群」という用語を初めて使用した。この業績により、初期の群論と体論が結び付けられ、ガロア理論の基礎が築かれた。アーサー・ケイリーオーギュスタン=ルイ・コーシーはこの研究を大きく発展させ、置換群の理論の基礎を確立した。

歴史的な2番目の源泉としては、幾何学方面からの流れがある。群はまず射影幾何学で、のちに非ユークリッド幾何学で重要になった。フェリックス・クラインエルランゲン・プログラムにおいて、可能な幾何学(ユークリッド幾何学双曲幾何学射影幾何学)を群論を用いて体系化し、群論が幾何学の原理を統合するものになることを予言した。

1884年、ソフス・リーは群(現在リー群として知られている)を解析的問題に適用した。 三番目に、群は(最初は暗黙的に、後に明示的に)代数的整数論に用いられた。

これら初期の源流では、観点が違っていたので、そのため群に対する観念も違ったものとなっていた。 1880年頃から群の理論の統合がなされてくる。 そして、群論の影響はますます増大し、20世紀初期には抽象代数学表現論など多くの派生分野が成立した。 有限単純群の分類は、20世紀中頃より膨大な量の研究がなされ、ついに完成に至った。

群の主なクラス

群の範囲は、有限置換群行列群の特殊な例から、生成系と基本関係で表示される抽象群まで、いくつかのクラスに分かれていると考えることができる。

置換群

初めて系統的な研究のなされた群のクラスは置換群である。 任意の集合 X と、X からそれ自身への全単射置換とも呼ばれる)の集まり G で合成と反転に関して閉じているようなものが与えられたとき、GX作用する群であるという。

Xn 個の元からなり、G が置換全体からなるならば、Gn-次対称群 Sn と呼ばれる。 一般の置換群 GX の対称群のある部分群となっているものをいう。 ケイリーによる初期の構成では、 任意の群は(左正則表現の意味で)X = G として自分自身に作用する置換群として提示された。

多くの場合、置換群の構造は対応する集合への作用の性質を用いて調べられる。 例えば、n ≥ 5 に対する交代群 An単純群である。 つまり、自明でない真の正規部分群を持たない[注 1]An が単純であるという事実は、高次一般代数方程式の根の冪根による表示の不可能性において重要な役割を果たす。

行列群

次に重要な群のクラスは行列群あるいは線型代数群と呼ばれるものである。ここでは群 G K 上の与えられたサイズの正則行列からなる集合で、積と逆をとる操作について閉じているようなものである。そのような群は n-次元ベクトル空間 Kn線型変換として作用する。この作用により、行列群は概念的には置換群とよく似たものとなり、また作用の幾何学は群 G の性質を示すのに最大限有効に利用することができる。

変換群

置換群や行列群は、群が空間 X にその内在的な構造を保つように作用するという、変換群英語版の概念の特別の場合である。置換群では X集合であり、群作用は集合の元の並べ替えとして実現される。行列群では Xベクトル空間であり、群作用は線型変換として実現される。このように変換群の概念は、異なる種類の数学的対象(集合、ベクトル空間、多様体など)に作用する群を統一的に扱う枠組みを提供する。変換群の概念は対称変換群(あるいは「対称性の群」)の概念に近い関係にある。変換群というとある構造を保つ変換「全体」の成す群を意味することが多い。

変換群の理論は群論と微分幾何学とを結びつける橋渡しの役割を果たすものである。多様体上の同相あるいは微分同相としての群作用の考察は、リーおよびクラインに始まり、膨大な研究がなされている。ここで扱う群それ自体は、離散群かもしれないし連続群となるかもしれない。

抽象群

群論の発展の初期段階では、群としては、数、置換、行列などによって実現される「具体的」なものばかりが考察の対象であった。しかし、これらの異なる具体例に共通する代数的構造を抽出し、統一的に扱う必要性が認識されるようになり、特定の公理系を満たす演算を備えた集合としての「抽象群」の概念が根付き始めるのは、19世紀後半になってからのことである。抽象群を特定する典型的な方法のひとつは、生成元と基本関係による表示

自由階数 2 の自由群 ⟨ x, y ∣ ⟩ のケイリーグラフ

幾何学的群論とは、語の問題や同型問題といった問題に対して、群を幾何学的対象として見たり、群が作用する適当な幾何学的対象を求めるといったような幾何学的な視点から解決を試みるものである[5]。前者の方法としては、群の元を頂点とし、右からの乗法によって写りあう元を辺で結んだケイリーグラフがある。二つの元が与えられれば、それらの元を結ぶ最短経路の長さとして語の距離英語版が定義できる。後者のやり方として、ミルナーアルベルト・シュヴァルツ英語版 による定理(ミルナー・シュヴァルツの補題英語版)がある。これは、(コンパクト多様体のような)距離空間 X に適当な方法で作用する群 G が与えられれば、群 G は空間 X擬等長英語版 (quasi-isometric) であるというものである。

群の表現

G が集合 X作用するとは、G の各元が、X 上定義された全単射で群構造と両立するものを定めることをいう。ただし、X にさらに構造が入っているときは、それに応じて表現の概念に制限を加えるほうが有効である。例えばよくある状況として、群 Gベクトル空間 V における(または V を表現空間とする)表現(線型表現)とは、GL(V)V 上の正則線型変換全体の成す群として、群準同型

トーラスアーベル群的な構造は以下の写像で表される。 CC/(Z+τZ), τ はパラメータである。
巡回群 Z/26 はシーザー暗号の基礎となっている。

代数幾何学暗号理論と同様に、様々なところに群論が使われる。アーベル多様体は、群作用の存在によって、詳細な調査が可能になる。一次元の場合では、楕円曲線が詳細に研究されている。これらは理論的にも応用的にも興味深いものである[注 3]楕円曲線暗号では、非常に大きな素数位数の群が構成され、公開鍵暗号として役に立っている。

代数的整数論もまた、群論が重要な役割を果たす分野である。たとえば、ゼータ関数のオイラー積表示

五度圏は巡回群の構造を与える。

自然科学における応用

その他の応用

五度圏には位数12の巡回群が現れる。

脚注

注釈

  1. ^ この事実は、1830年頃にエヴァリスト・ガロアによって示された。
  2. ^ このように新しい構造を付加する手順は、適切なにおける群対象 (group object) の概念として定式化される。リー群は可微分多様体の圏における群対象であり、アフィン代数群はアフィン代数多様体の圏における群対象である。
  3. ^ ミレニアム問題の一つであるバーチ・スウィンナートン=ダイアー予想を見よ。

出典

参考文献

洋書

和書

入門書

  • 芳沢光雄:「群論入門 対称性をはかる数学」、講談社 (ブルーバックス、1917)、ISBN 978-4-06257917-9 (2015年5月21日).
  • 稲葉栄次:「群論入門」、培風館 (1981年).
  • 国吉秀夫:「群論入門」、サイエンス社、ISBN 4-7819-0130-1 (1975年3月31日).
  • 斎藤正彦:「はじめての群論」、日本評論社、ISBN 4-535-78504-X (2005年2月10日).
  • 志賀浩二 :「群論への30講」(数学30講シリーズ)、朝倉書店ISBN 978-4-254-11483-6 (1989年8月25日).
  • 永田 雅宜:「群論への招待」、現代数学社、ISBN 978-4-76870371-7 (2007年4月1日).
    • 永田 雅宜:「初学者のための群論」、現代数学社、ISBN 978-4-7687-0575-9 (2022年1月21日)上記の書名と判型を変更したもの。
  • 横田一郎:「初めて学ぶ人のための群論入門」、現代数学社 (1997年).
  • 山内恭彦杉浦光夫:「連続群論入門」、培風館(2010年).
  • 雪江明彦:「代数学1 群論入門」 (代数学シリーズ)、日本評論社 (2010年).
  • 佐藤隆夫:「群の表示」、近代科学社(大学数学スポットライト・シリーズ 第6巻)、ISBN 978-4-76490533-7 (2017年3月1日).
  • 脇克志:「見える! 群論入門」、日本評論社、ISBN 978-4-535-78796-4 (2017年6月)。

群の表現論を主に取りあげた本

  • 服部昭:「群とその表現」、共立出版(共立数学講座18)(1967年11月1日).
  • 横田一郎:「群と表現」、裳華房、ISBN 4-7853-1110-X (1973年5月1日).
  • J.-P.セール:「有限群の線型表現」、岩波書店(1974年3月4日).
  • 島和久:「連続群とその表現」、岩波書店 (1981年4月24日).
  • 永尾汎、津島行男:「有限群の表現」、裳華房、ISBN 4-7853-1310-2 (1987年8月20日).
  • 吉川圭二:「群と表現」、岩波書店、ISBN 4-00-007979-4 (1996年10月18日).
  • 髙瀨幸一:「群の表現論序説」、岩波書店、ISBN 978-4-00-005271-9 (2013年5月30日).

群論と物理学・化学との関係を解説する文献

関連項目

外部リンク

  • History of the abstract group concept
  • Higher dimensional group theory This presents a view of group theory as level one of a theory which extends in all dimensions and has applications in homotopy theory and to higher dimensional nonabelian methods for local-to-global problems.
  • Plus teacher and student package: Group Theory This package brings together all the articles on group theory from Plus, the online mathematics magazine produced by the Millennium Mathematics Project at the University of Cambridge, exploring applications and recent breakthroughs, and giving explicit definitions and examples of groups.



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