既約表現とは? わかりやすく解説

既約表現

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/06/22 14:52 UTC 版)

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数学のとくにあるいは多元環表現論における(代数的構造の)既約表現(きやくひょうげん、: irreducible representation; irrep) とは、真の閉部分表現を持たない非零表現を言う。

複素内積ベクトル空間 V 上の任意の有限次元ユニタリ表現は、既約表現の直和である。既約表現は常に直既約である(すなわち、別の表現の直和にかくことができない)であり、この二つはしばしば混同されるが、例えば上半三角冪零行列として作用する実数の二次元表現など、一般には可約だが直既約な表現が無数に存在する。

歴史

群の表現論は1940年代頃からリチャード・ブラウアー英語版により一般化され、行列作用素が(または複素数を成分とするベクトルではなく)任意標数 K 上作用するモジュラー表現論が与えられた。そうした理論における既約表現の類似構造物を単純加群と呼ぶ。

概観

ρ を F 上のベクトル空間 V における群 G表現 ρ: G → GL(V) とする。V の基底をとれば、ρ を群から正則行列からなる適当な集合の上への写像(準同型)と見做すことができて、この文脈では行列表現と呼ばれるが、基底をとらずに空間 V を考えるほうが物事は非常に単純になる。

V線型部分空間 W G-不変であるとは、任意の gG および wW に対して gwW が成り立つことを言う。表現 ρ を G-不変部分空間 W制限したものは部分表現と呼ばれる。表現 ρ: G → GL(V) が既約であるとは、それが自明でない部分表現を持たないことをいう(任意の表現は自明な G-不変部分空間、つまり全体空間 V{0} を部分表現として必ず含むことに注意)。 真の非自明な不変部分空間を持つ表現 ρ は、可約 (reducible) であると言う。

群表現の記法と語法

群の元は行列として表現することができる。この文脈で「表現する」というのは特定の明確な意味を持つことに注意すべきである。群の表現は、群の元全体の成す集合から行列の成す一般線型群への写像のことを言う。記法として、G の元はラテン小文字 a, b, c, … で表し、群の乗法は記号を省略して G の元 ab とは ab との積のこととする。表現を D とするとき、群の元 a の表現行列

の形に書ける。群の表現の定義により、群の元の積の表現行列は

として各元の表現行列のに翻訳される。群の単位元 e(即ち ae = ea = a を満たす元)に対し、D(e) は単位行列あるいは同じことだが単位行列からなるブロック行列にならなければいけないことが、

から分かる(群の他の元についても同様である)。

直可約および直既約表現

表現が直可約 (decomposable) であるとは、その表現の任意の行列を対角化する相似行列 P による相似変換[1]

によって表現の各行列が同じパターンの対角ブロックに写されることを言う(各ブロックが互いに独立な群の表現を与える)。表現行列 D(a) と P−1D(a)P同値な表現であるという[2]。表現行列が k 個の行列の直和英語版

に分解できるとき(つまり D(a) が直可約のとき)、各直和因子行列には D(n)(a) (n = 1, 2, …, k) のように普通は上付きの添字を括弧書きするが、括弧を付けないで書く文献もある。

D(a) の次元は、各ブロックの次元の総和

に一致する。

表現行列がこのようなブロック対角行列にできないとき、その表現は直既約 (indecomposable) であると言う[1][3]

リー群

ローレンツ群

J を回転の生成系、K を励起の生成系としたとき、D(K)D(J) の既約表現はローレンツ群のスピン表現を作ることに使うことができる。なぜならば、量子力学のスピン行列と関係しているからである。このことから相対論的波動方程式英語版を導出することができる。[4]

関連項目

結合代数

リー群

参考文献

図書

論文

関連文献

外部リンク


既約表現

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/15 14:18 UTC 版)

群の表現」の記事における「既約表現」の解説

詳細は「既約表現」を参照 { T ( g ) ∣ g ∈ G } {\displaystyle \{\,T(g)\mid g\in G\,\}} で不変な表現空間 V ≠ {0} の部分空間が Vと {0} のふたつ以外に存在しないとき、表現 (V, T) は既約であるという。既約でない表現可約という。特に表現空間いくつかの既約不変部分空間直和分解できる場合、その表現を完全可約であるという。マシュケの定理より複素数体上における有限群有限次元表現は常に完全可約である。既約表現に対して次の重要な補題成り立つ: シューアの補題 T を群 G の代数的閉体上における有限次元既約表現とすると、すべての T(g) と可換変換恒等変換定数倍に限られる。 また適当な相似変換によってブロック対角型になる(簡約できる)表現を直可約表現、直可約でない表現直既約表現という。 有限群同値でない複素数上の有限次元既約表現の数は、群の共役類の数と等しい。

※この「既約表現」の解説は、「群の表現」の解説の一部です。
「既約表現」を含む「群の表現」の記事については、「群の表現」の概要を参照ください。

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