既約多項式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/25 09:13 UTC 版)
代数学において既約多項式(きやくたこうしき、英: irreducible polynomial)とは、多項式環の既約元[注 1]のことである。
概要
より冗長には次のようになる。
R を整域とし、その単数全体を R×、一変数多項式環を R[X] とおく。
多項式 ƒ ∈ R[X] が2条件
- ƒ ∉ R×
- ∀ g, h ∈ R[X] ƒ = gh ⇒ g ∈ R× or h ∈ R×
を満たすとき既約であるという。そうでないとき可約であるという。
元々、整数係数多項式(有理数係数多項式) f(x) が、2 つの1次以上の整数係数多項式(有理数係数多項式) g(x),h(x) の積として因数分解できる時、すなわち
f(x) = g(x) h(x)
の形にできることを可約、そうでないときを既約として多項式の性質を調べる事はあったが、係数の範囲を一般化して、特定の無理数や複素数の四則演算で得られる係数での因数分解を考え、既約性を導入したのはニールス・アーベルである。
係数環 R が整数環や実数体、複素数体のような一意分解整域の場合には既約多項式は多項式環における素元でもあるので、これは整数環における素数の類似物である。
例
- 整数環上の一変数多項式 X2 + 1 は既約多項式である
- 整数環上の一変数多項式 X2 − 1 は X2 − 1 = (X + 1)(X − 1) より可約多項式である
- 有限体 F2 上の一変数多項式 X2 + 1 は X2 + 1 = (X + 1)2 より可約多項式である
- 円分多項式 Φd(X) ∈ Q[X] は既約多項式である
- 最小多項式は既約多項式である
判定法
整域 R の素イデアル P とモニック多項式
既約多項式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 08:21 UTC 版)
φ 2 = φ + 1 {\displaystyle \varphi ^{2}=\varphi +1} すなわち、黄金数 φ の有理数体 Q {\displaystyle \mathbb {Q} } 上の既約多項式は x2 − x − 1 である。 φ は無理数であり、 φ = 1 + 5 2 = 1.6180339887 ⋯ {\displaystyle \varphi ={\frac {1+{\sqrt {5}}}{2}}=1.6180339887\cdots } φ − 1 = φ − 1 = − 1 + 5 2 = 0.6180339887 ⋯ {\displaystyle \varphi ^{-1}=\varphi -1={\frac {-1+{\sqrt {5}}}{2}}=0.6180339887\cdots } 黄金長方形では、(長辺 - 短辺) : 短辺 = 短辺 : 長辺 が成り立つことを表した図。 黄金長方形から最大正方形を切り取っていった図(残った長方形も黄金長方形になる)。 黄金数 φ について、φ(φ − 1) = 1 を、面積で表した図。青線が、縦横の長さ 1, φ の黄金長方形2個を表し、右上の赤網目部分が φ(φ − 1)、左下の赤網目部分が 1 を表す。 黄金数 φ について、φ(φ − 1) = 1 を、面積で表した図。縦横の長さが 1, φ の黄金長方形(青線)において、斜線部分が等積となる。また、赤網目部分は √5φ = 1 + φ2 を表している。
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