交代群
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/10 00:51 UTC 版)
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交代群(こうたいぐん、英: alternating group, 独: Alternierende Gruppe)とは、有限集合の偶置換全体がなす群である[1]。集合 {1,...,n}
上の交代群は n 次の交代群、もしくは n 文字の交代群 (the alternating group on n letters) と呼ばれ、An もしくは Alt(n),
群ホモロジー
交代群の群ホモロジーは安定ホモトピー論における意味で安定である。つまり(有限個の小さい次元のホモロジー群を除いて)十分大きな n に対する n-次ホモロジー群が(同型の意味で)一定となる。
アーベル化 H1
群の一次元ホモロジー群は群のアーベル化に一致する(また、An は知られた例外を除いて完全である)から、
が得られる。これは以下のようにすれば直接確認することも容易である。まず、A3 は長さ 3 の巡回置換によって生成され、位数 3 の元は位数 3 の元に写らなければならないから、非自明なアーベル化写像は準同型 An → C3 のとり方のみによって決まる。
n ≥ 5 ならば、長さ 3 の巡回置換はすべて互いに共軛であるから、これらの元はアーベル化の中で同じ元に写る(共軛変換は可換群には自明に働く)。したがって、(123) のような長さ 3 の巡回置換はその逆元 (321) ともども同じ元へ写るが、その行き先は位数が 2 も 3 も割り切るものである単位元でなければならない。ゆえにアーベル化は自明群である。
n < 3 のときは An 自身が自明群だから、そのアーベル化も同様に自明である。A3, A4 については直接そのアーベル化を計算して確かめればよいが、注意すべきは長さ 3 の巡回置換の全体はすべてが共軛というわけにはいかず、ふたつの共軛類に分かれることである。したがって、非自明な全射準同型
が存在する。前者は実際には同型である。
シューア乗因子 H2
n ≥ 5 の場合の An のシューア乗因子は(n = 6, 7 の場合を除いて)位数 2 の巡回群である。n = 6, 7 の場合、三重被覆が存在し、シューア乗因子は位数 6 の巡回群となる[10]。これらの計算は (Schur 1911) において初めて成されている。
脚注
- ^ Scott 1987, p. 267.
- ^ たとえば基本交代式(差積)
- ^ Vilyams 2001.
- ^ ガロワは素数位数でない単純群の最小位数は 60 であると予想していた (Kline 1992, p. 766)。
- ^ Scott 1987, pp. 298–300, §11.1 Conjugacy classes.
- ^ Wilson 2009, p. 18(Theorem 2.3, Exercise 2.16 参照)
- ^ a b c Scott 1987, p. 295.
- ^ a b Coxeter, Harold S. M.; Moser, William O. J. (1980). Generators and Relations for Discrete Groups (4th ed.). p. 66. ISBN 978-3-662-21945-4
- ^ Huppert 1967, p. 138, Beispiel 19.8(Aufgaben 75, Beispiel 19.9 も参照)
- ^ Wilson, Robert (October 31, 2006), “Chapter 2: Alternating groups” , 2.7: Covering groups
参考文献
- Huppert, B. (1967), Endliche Gruppen I, Die Grundlehren der Mathematischen Wissenschaften, 134, Springer-Verlag, doi:10.1007/978-3-642-64981-3, ISBN 978-3-642-64982-0, MR0224703, Zbl 0217.07201
- Kline, Morris (1972), Mathematical Thought from Ancient to Modern Times, Oxford University Press, ISBN 0-19-501496-0, MR0472307, Zbl 0277.01001 (Review by Gian-Carlo Rota in Bull. Amer. Math. Soc.)
- Schur, Issai (1911), “Über die Darstellung der symmetrischen und der alternierenden Gruppe durch gebrochene lineare Substitutionen”, J. Reine Angew. Math. 139: 155–250, doi:10.1515/crll.1911.139.155
- Scott, W. R. (1987) [1964], Group Theory (Second ed.), Dover, ISBN 978-0-486-65377-8, MR0896269, Zbl 0641.20001
- Wilson, Robert A. (2009), “Chapter 2. The alternating groups”, The Finite Simple Groups, Graduate Texts in Mathematics, 251, Springer, pp. 11–39, doi:10.1007/978-1-84800-988-2, ISBN 978-1-84800-987-5, MR2562037, Zbl 1203.20012
外部リンク
- Vil'yams, N. N. (2001), "Alternating group", in Hazewinkel, Michiel (ed.), Encyclopaedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4。
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