3DCGアニメーションの登場
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「デジタルアニメ」の記事における「3DCGアニメーションの登場」の解説
1993年に全編3DCGによるアニメ番組『ネオ・ハイパー・キッズ』(日本テレビ)内の4週連続アニメ番組が先駆けとして登場した。アニメ業界からは、1995年に全編コンピューターによる色塗りが行われたテレビシリーズ『ビット・ザ・キューピッド』が制作された。なお、アーケードゲームでは既にリアリティを体感できる水準のフル3DCGの作品が制作されており、『バーチャファイター』や『リッジレーサー』等がヒット作となっていた。また家庭用ゲーム機も3Dに特化したプロセッサや光ディスクを採用した第5世代機が登場し、アーケードの3DCGゲームを遜色ないレベルで遊ぶことが可能となっていた。3DCGゲームのヒットによりCG技術を有するゲーム会社も多く登場し、CG業界はゲームを中心に活性化していった。 1998年、GONZO制作のOVAシリーズ『 青の6号』は当時珍しかった3DCGを多用したことでも注目され、OVA初のフルデジタルアニメとして宣伝された。 2000年代以降は市販のPCでも高性能モデルであれば3DCGを取り扱えるようになり、1台数百万円の専用機を使用していた時代に比べコストは低下したものの、ソフトウェアの高度化により学習時間が長くなったことから、フルCGアニメを単独で制作できるのはポリゴン・ピクチュアズなどノウハウと人材が揃った会社に限られる。このため3DCG部分のみサンジゲン、グラフィニカ、オレンジなどの専門業者に委託したり、自動車や銃器など正確な描写が求められる機械類に市販のCGモデルを利用するなど部分的な導入が普及している。 2000年1月に全編3DCGで製作された「ポピーザぱフォーマー」は、少人数、低予算、短期間という条件ながら、DVD売上が12万枚を記録する人気番組となった。 2014年の『シドニアの騎士』では、人物のCGモデルを原作のデザインに近いモデルとキャラクターデザイン担当の絵をモーフィングして作成、多数登場する同型ロボットは形状は全く同じだかテクスチャを変更することでキズや汚れが異なる、CGモデルを配置したシーンを作成した後にカメラアングルの位置を決める、作品完成後もカメラの移動や追加ができるためパッケージ版では同じシーンでも放送時とは異なるアングルで収録される、など3DCGの利点を生かした工程で制作が行われた。 日本では手描きアニメに需要があるため、あえて背景など一部を手描きにする(シドニアの騎士)、フル3DCGであってもキャラクターは手描きに近い仕上がりを目指す(蒼き鋼のアルペジオ)、パーツの一部を変形させることで手描きの誇張表現を再現する、表情を強調するため顔のみ手描き、激しいダンスなど手描きでは負担が多いシーンにのみ使用するなど、様々な手法が模索されている。特にダンスに関してはダンサーの動きをモーションキャプチャしCGモデルに適用することで振り付けの忠実な再現が可能となる他、口の動きを歌唱に忠実な形にしたり、カメラワークの詳細なコントロールが可能となるなど演出面でのメリットが大きい。また『Wake Up, Girls!新章』では実際に行われたライブでのパフォーマンスを再現するため、声優のダンスを担当するキャラクターに適用している。 プリティーシリーズやアイカツ!など、3DCGを使用したゲームのアニメ化作品においては、ゲームに使用されるCGモデルの流用にとどまらず、ゲーム開発側がアニメ向けの調整を行うなど連携も行われている。 3DCGはディテールを追求したモデルを劣化なしで使い回せるため、描きでは避けられない絵のばらつきや作画崩壊が無い、カメラアングルの変更が容易であるなどメリットは大きい。ただし2017年時点ではCGモデルの構築作業があるため手描きに比べ製作開始時に時間がかる、プロ仕様のソフトウェアのライセンスと処理性能の高いCG向けワークステーションが人数分必要などの理由で製作費用が手描きの倍というコスト面の問題、スーツや白衣などの布の質感表現や日本のアニメ的な感情演出が難しい、モーションキャプチャしただけでは「人形感」が出てしまうため細かな調整が必要という技術的な課題、CGに関する知識を持つアニメーターが少なく、プロ用のソフトウェアを使いこなせるCGデザイナーは専門業者に集まっているため後発の会社では人材確保が難しいという人的な問題があるという。人材不足の解消を目指し、2017年7月にスタジオカラー・ドワンゴ・学校法人麻生塾の3社により人材育成を重視したプロジェクトスタジオQが設立された。 アニメ制作は分業化が進んでいたが、デジタル化により作画担当者が自ら彩色するなど、他工程の補助作業や分野を横断した交流が行われている。 機材を揃えてソフトウェアを使いこなせれば少人数や個人でフルCGアニメを製作できるようになり、会社に所属せず作品を製作する者も現れている。しかしマリンポストのCGデザイナーだった粟津順は独立してフルCG映画(惑星大怪獣ネガドン)の製作を始めたが、一部に協力を受けても25分の本編を完成させるまで2年4ヶ月を要しているなど、商業レベルの作品を作るには経験者であっても長い時間がかかる。 3DCG制作のソフト以外にも、2010年代からゲームエンジンはプログラミングによりリアルタイム表現や作業の自動化が可能ながら、専用ソフトよりも低価格で市販のパソコンで動作する軽量の汎用エンジンが登場しており、背景やエフェクトなどに活用されている。 手描きアニメにおいてもデジタル化によりソフトウェア処理が可能となったことや、撮影時のズレが無くなるなど3DCGとの相性が良くなっている。また自動彩色や中割りの自動生成など省力化技術の開発も行われ、一部で使われている。また『Re:ステージ! ドリームデイズ♪』ではモーションキャプチャで3DCGを動かした映像を元に手描きで作画するなど、3DCGのモデルを作画の参考として利用する例もある。逆に3DCGの表情パターンは手描きの設定資料をベースに作成される。
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