音楽院の演奏会の想い出;ピアノ独奏のためのスコアとは? わかりやすく解説

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アルカン, シャルル=ヴァランタン:音楽院の演奏会の想い出;ピアノ独奏のためのスコア

英語表記/番号出版情報
アルカン, シャルルヴァランタン:音楽院の演奏会の想い出;ピアノ独奏のためのスコアSouvenirs des concerts du Conservatoire: partitions pour piano seul出版年1847年  初版出版地/出版社: Brandus 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 マルチェッロ詩篇18番《神は天の栄光語り》 Marcello: I cieli immensi narranoNo Data No Image
2 グルック:《アルミード》より  Gluck: Jamais dans ces beaux lieux d' ArmideNo Data No Image
3 グルック: 《タウロイイフィゲネイア》より〈スキタイ人合唱〉  Gluck: Choeur des Scythes d'Iphigenie en TaurideNo Data No Image
4 ハイドン: 《交響曲36[94]番》のアンダンテ Haydn: Andante de la 36e Symphonie de HaydnNo Data No Image
5 グレトリ: 《二人金銭守》より合唱 Gretry: La Garde passe, il est minuit, choeur des Deux AveresNo Data No Image
6 モーツァルト: 《交響曲 変ホ短調[第39番、K543]》よりメヌエット Mozart: Menuet de la Symphonie en mi bemole No Data No Image

作品解説

2010年6月 執筆者: 上田 泰史 

本曲集は、後年の《音楽院演奏会想い出 第2集》(Richault, 1860)、《室内楽想い出》(Richault, c. 1866) に先立ってアルカン1847年出版した編曲シリーズ第1集である。1848年アルカン自身の師であり、パリ音楽院ピアノ教授P.-J.-G. ヅィメルマンの引退に伴いピアノ教授候補に名前があがるが、結局A.-F. マルモンテルにその座を与えてしまう。当時アルカンマルモンテル比べれば、すでに独創的な作曲家演奏家教育者として注目されていた。そのため、彼は当然自分教授になるものと信じていたのであるそれだけに、自分教授候補選出されなかったことへの落胆長年尾を引いた

この曲集は、まだこの一件で心が折られるまえの野心燃え青年アルカンの作である。《音楽院演奏会想い出》というタイトルは、この曲集に含まれる曲がパリ音楽院演奏教会Société des concerts du Conservatoir (音楽院付属オーケストラ)によって演奏されレパートリーであることに由来する。この音楽院オーケストラは、1828年創設以来、その高度な演奏技術によってヨーロッパ随一楽壇称されベートーヴェンの交響曲序曲中心にモーツァルトハイドンウェーバーといった古典曲や同時代作曲家新作演奏していた。

この曲集には、編曲についての考え述べたアルカンによる長い序文付されている。その要点以下の通りである。


美学上の前提 ― 編曲は2手用でなければならない

ピアノのため4手編曲は、よりいっそう扱いすいものの、例外的な場合においてのみしか、決し純粋な耳を満足させてこなかった。2人演奏者間を同一着想が行来するのは意図解釈統一全体支障をきたす

19世紀4手用のピアノ編曲その実用性から非常に多く書かれた。それは2手よりも広い音域を扱うことができるために、より「扱いやすい」ものであったからである。実際4手編曲は他のいかなる演奏形態よりも、19世紀音楽家にとって演奏会レパートリー普及させるために重要であった。つまり、アルカンが「意図解釈統一」という理由で「耳を満足させる」2手用の編曲取り組んだことは、4手編曲様々な実用的メリットをあえて拒否したことを意味している。


原曲について知識ピアノ独自の表現効果統合

独奏ピアノ編曲が可能で、同時に明確かつ完全で、手ごろ難しさ範囲内にあるオペラ交響曲からの抜粋morceauxは、[・・・] 多く効果音色、私が声と楽器幻影とよぶもの […] についての知識同様に現代ピアノ固有響きとそれらとの関係についての完全な知識要求している。これは確かなことである。なぜなら、さまざまなアタックの手法や特定の指使い、手の交差などの賢明な使用によってこれらの響き獲得する方法を知るのに応じて、その音響多岐に亘るものとなるからである。これらの作品からの抜粋選択とそれらを扱う才気は、いわば独自の技術形成し、そしてその技術何よりもまず、長く骨の折れる仕事極度繊細さ機転優れた直観、われわれが今日用いることのできるあらゆる手段適応求める。[・・・]要するに、全てを聴かせながらも、どのパート際立たせられなくてはならないか、どのようにそのパートあるべきか、さらに、それらがどのように伴われ、光が当てられ、あるは暗闇残されるべきなのかということを知ること、こうしたことがこの技術[・・・]なのである



ここには、ピアノ表現効果についてあらゆる知識演奏技術駆使しながら、原曲表現内容直観的に把握し、それを鍵盤上に定着させようとする編曲方針提示されている。編曲において重要なのは、知性演奏技法直観力創造力統合のであるということアルカン理解させようとしている。つまり、アルカンにとって、編曲とは知りうる限りピアノ表現力を、可能な限り探究しながら原曲効果生かすことである。


原曲楽譜テクスト対す忠実

私は、この最初の曲集が、劇場或いは演奏会聴いた美しい曲を、あらゆる種類変奏オブリガート伴奏アルペッジョ装飾[・・・]なしで思い出し再生したいと思う人々、そして同時に、ある曲の中に練習の糧を、つまりある程度克服したいようだが克服できなくはないある種難しさを見い出さんとする人々満足させるはずだと思う。[・・・]これら6つ断片に関する限り、私は可能な限りで最も高い忠実度を達成するために、公共図書館個人的なコレクションによって提供されあらゆる資料調べつくした。私は長い熟慮細心点検経て、ようやくこのヴァージョン決定した疑わしいが、いずれを採るべきかさして重要ではないよう思われ場合は、大多数エディション従った

ここでアルカン編曲における忠実性に言及している。前の引用述べられていた「すべてを聴かせるということは、どのパート省略せずに、できる限り忠実にピアノ書き換えるということである。彼は原曲に「忠実な編曲を書くに際して原曲さまざまなエディション参照して客観性確保しようとした

彼の編曲は、ピアノ演奏技術向上という実用的な要素を含むと同時に、「忠実性」あるいは「オーセンティシティ」を確保することで、一般愛好家に「大作曲家」の作品の「偉大さ」を理解するよう促すという啓蒙的教育的な意図全面押し出している。

彼がこの曲集の副題編曲/改作 [arrengement] という言葉用いずピアノ独奏のためのスコア [partitions pour piano seul] 」としたのは、アルカン楽譜そのまま原曲スコアあるようあり方目指したからに他ならない。ここで具体的にアルカン楽譜原曲突き合わせることはしないが、彼はあらゆる手を尽くして、しかしピアノ演奏可能な範囲原曲パート巧みにピアノ上に移しかえている。この点は、演奏機能性優先させるリストトランスクリプションとの大きな違いである。ピアノ音楽とどまらない教養と、ピアノ演奏技法知り尽くしたアルカンならではの成果である。             



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