間接侵害(かんせつしんがい)-contributory infringement-
”間接侵害”とは、侵害の一歩手前の行為あるいは実質的に侵害と同じとみることができる行為であり、特許権や商標権、著作権の侵害とみなされるものをいう(特許法第101条、商標法第37条、著作権法第113条)。
他人が特許発明に係る物(特許製品)を、無断で生産、販売等すると、特許権侵害となる。同様に、他人が特許発明に係る方法(特許方法)を使用すると、特許権侵害となる(直接侵害)。
これに対し、他人が特許製品の生産にのみ用いる物を生産、販売することや、特許方法の使用にのみ用いる物を生産、販売等することは、直接侵害に該当しない。しかし、このような特許品を作るための部品を販売する行為等は、それを購入した人による特許権侵害を引き起こすことになる。したがって、特許品を作るためにしか用途のない部品(専用品)や特許発明の目的を達成するために必要不可欠な部品(不可欠品)を、生産、販売などする行為は、特許権を侵害するものとみなされる(特許法101条1号、2号)。
なお、専用品は特許品を作るしかその用途がないためこれを生産や販売すれば、それだけで間接侵害になるが(101条1号)、不可欠品は特許品以外にも使える可能性があるため、「不可欠品を購入した者が侵害品を作ること」を販売した者が知っていた場合に限り間接侵害となる(101条2号)。
他人が、無断で商品に登録商標を付けたり、その商品を販売すると、商標権侵害となる(直接侵害)。これに対し、他人が商品に付けるための登録商標のラベルを製造、所持したりする行為は、間接侵害として侵害とみなされる。
他人が、無断で著作物を複製すると著作権侵害となる(直接侵害)。これに対し、我が国の著作権の効力が及ばない外国で複製した著作物を輸入すること等が間接侵害として侵害とみなされる。
このような行為も侵害と同等に扱うことによって、特許権、商標権、著作権が十分に保護される。
知的財産用語辞典ブログ「間接侵害」
(執筆:弁理士 古谷栄男)
間接侵害
間接侵害 (二次侵害)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 23:22 UTC 版)
「著作権法 (アメリカ合衆国)」の記事における「間接侵害 (二次侵害)」の解説
たとえば、一般ユーザがインターネットサービスを介して著作権侵害コンテンツを投稿・シェアすることがある。このような場合、直接的な責任は当該ユーザ個人が負うが、権利侵害の場や手段を提供したり、侵害行為を止めることができたにもかかわらず監督を怠ったインターネット関連事業者にも間接侵害 (二次侵害) の責任が発生するケースがある。以下では間接侵害について解説する。 著作権侵害を行った主体別の責任分類直接侵害 間接侵害 (二次侵害(英語版)、secondary liability)寄与侵害(英語版) (または寄与責任、contributory infringement)狭義の寄与侵害 誘引侵害責任理論(英語版) (積極的誘引行為、inducing) 代位侵害(英語版) (または代位責任、vicarious infringement) 著作権法における「寄与侵害」とは、直接的に著作権侵害は行っていないものの、そのような侵害行為が起こりうると分かっていながら、誘発するような間接的な関与をしている場合である。つまり、第三者に著作権侵害を行うよう指示・そそのかす (法律用語で教唆という) か、または直接手は下していないものの著作権侵害に重大な「貢献」をしていれば、寄与侵害の責任を負うことになる。寄与侵害では、著作権侵害が実際に起こっていることを知っているケースだけでなく、知っていて当然であり合理的であろうと推定されるケース (擬制的認識、constructive knowledge) も含まれる。 一方「代位侵害」とは、侵害行為を行わないよう監督責任・権限を有する者が、その義務を怠った結果、侵害が発生した場合である。寄与侵害とは異なり、侵害行為の認識の有無は問われないが、代わりに権利侵害によって直接の経済的な利益を得ていることが責任成立の要件となる。「代位」とは、最も分かりやすいのが従業員と雇用主の関係であり、服務中に従業員が著作権侵害を行えば、雇用主にも代位責任がおよぶ。ただしこの「代位」の概念は、英米法における代理法に基づいており、雇用主 (使用者) だけでなく信託や組合といったあらゆる個人・法人の信認関係 (fiduciary relation) を有する代理人 (エージェント) 全般に適用される:1–2。 寄与侵害や代位侵害のリーディングケースとしては、通称「ソニー・ベータマックス判決」(1984年最高裁判決)や通称「ナップスター判決」(2001年第9巡回区控訴裁判決)、通称「チェリー・オークション判決」(1996年第9巡回区控訴裁判決)が知られている。ソニー・ベータマックス判決では、(特許法とは異なり) 著作権法上では寄与侵害や代位侵害が明文化されていないものの、第三者に責任を負わせる正当性を認めている。ナップスター訴訟では、Peer to Peerの通信環境下で個人が楽曲を無断シェアしたことから、ファイルシェアの場を提供し、著作権侵害のアクセスを停止するなどの監督責任を怠ったとして、ナップスター社に寄与侵害と代位侵害が認められている。チェリー・オークション訴訟はフリーマーケットで著作権侵害の海賊版が販売されていた事件だが、販売していた出店者 (直接侵害者) だけでなく、場貸ししていたフリーマーケット開催者にも寄与侵害が認められた。 ただし無限の間接侵害を認めているわけではなく、1998年制定・施行のデジタルミレニアム著作権法 (DMCA) によって著作権法が改正され、著作権侵害がインターネットを介して行われた場合、その通信環境を提供したインターネットサービスプロバイダー (ISP) またはオンラインサービスプロバイダー (OSP)、あるいは検索エンジンなどのデータキャッシング事業者各社は、一定の条件下で損害賠償を免責されることとなった (第512条)。第512条はいわゆるセーフハーバー(英語版)条項とされ、「ノーティスアンドテイクダウン手続」(notice and takedown) や「DMCA通告」などと呼ばれている。第512条が1998年に新設される以前は、インターネットサービス事業者が直接侵害の責任を負う判例と、間接侵害のみと解される判例が混在していたが、第512条によって間接侵害に責任範囲が留まることとなった。 インターネット関連事業者の免責が問われた判例については「デジタルミレニアム著作権法#判例」を参照 なお、2020年5月に公表された著作権局 (USCO) の調査報告書によると、著作権侵害でDMCA通告 (削除依頼) をオンラインサービス事業者が受け付ける件数は、日次で100万件を超えると見られている。
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