媒体特許とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 言葉 > 関係 > 媒体 > 媒体特許の意味・解説 

媒体特許(ばいたいとっきょ)


”媒体特許”とは、コンピュータプログラムデータ記録した記録媒体与えられる特許のことをいう。平成9年4月より認められるようになった

以前は、ソフトウエアの処理に特徴のある発明であっても当該ソフトウエア記録した記録媒体CD-ROM等)単独特許取得することはできなかった。このためハードウエアコンピュータ)と一体となったシステムとして特許取得していた。たとえば、新しアルゴリズムに基づくデータ圧縮ソフト開発した場合当該ソフトがインストールされた状態のシステム、つまりデータ圧縮処理装置として特許取得していた。

ここで、他社が、当該圧縮アルゴリズム用いたソフトウエアインストールした状態のコンピュータ販売すれば、特許権侵害として追求できる。しかし、他社が、当該ソフトウエア記録したCD-ROMだけを販売している場合には、追求が困難であった。つまり、データ圧縮処理装置についての権利では、直接的にCD-ROM侵害であるとして追求できなかったのであるCD-ROM間接的な侵害であるから間接侵害として追求せねばならず権利行使上に困難がある指摘されていた(理由下記従来問題点”)。

そこで、ソフトウエア特許による保護強化するため、プログラムデータ記録した記録媒体CD-ROMなど)に特許与えるようにしたものである(1997年改正審査運用指針)。

なお、記録されデータ内容にのみ特徴のあるデータ記録した記録媒体は、単なる情報提示であるとして特許対象ならない。たとえば、通常の音楽CDは、その音楽新しからと言って特許対象となるものではない。しかし、データ構造特徴がある場合当該データ記録した記録媒体特許対象となる。さらに、データ記録した記録媒体において、情報提示仕方特徴のある場合にも特許対象となる。たとえば、伴奏合わせて歌うべき歌詞の色が変化するように記録され記録媒体は、データ構造特徴がないが、単なる情報提示ではないとして特許対象となる(ビデオ記録媒体事件東京高裁平成11・526)。

媒体特許の請求項記載例は、ソフトウエア特許の明細書例参考のこと。

なお、米国が、記録媒体特許認めて以来我が国の他に、韓国、台湾記録媒体特許認めている。また、ヨーロッパ特許庁記録媒体特許認め方向である。記録媒体特許認められたことにより、ソフトウエア特許保護強化されたが、インターネット通じたソフトウエア配信行為については、記録媒体特許でも十分な保護がされない指摘されていた。米国では、搬送波重畳された状態のプログラムについて特許付与することにより、このような問題解決してきた。

日本では2002年特許法改正により、プログラムそのものを物として取り扱うことにより、プログラム自体特許対象とすることを可能にした。したがって記録媒体介さず取引されるプログラムダウンロードよるもの)についても特許権による保護確実に及ぶこととなった

参考のため、従来問題点付記する
データ圧縮装置についての特許権持っているだけの場合データ圧縮プログラム記録した記録媒体についての特許持ってない場合)、上記CD-ROM販売間接侵害として追求するためには、当該CD-ROM特許品であるデータ圧縮装置生産に「のみ」用いられる物であることを立証しなければならない特許法101条)。つまり、そのCD-ROM特許製品専用品であることを立証しなければならないCD-ROM当該アルゴリズムによるデータ圧縮ソフトウエアだけが記録されている場合には、そのCD-ROMは、特許品であるデータ圧縮装置生産に「のみ」用いられる物であるといえそうである。そのCD-ROMコンピュータ装着してインストールすることにより、特許品であるデータ圧縮装置得られるからである。

しかしながら、そのCD-ROMに他のアルゴリズムによるデータ圧縮ソフト一緒に記録されていた場合はどうであろうか。この場合CD-ROMは、特許品ではないデータ圧縮装置生産にも用いられることになり、特許品であるデータ圧縮装置生産に「のみ」用いられる物という要件満たさない、という侵害者の反論予想される(たとえば、マイクロソフトアッセ事件)。

たがってCD-ROMそのもの権利認めなければソフトウエア関連発明の保護が十分ではないと言われていたのである

なお、2002年特許法改正では、プログラムそのもの特許対象としただけでなく、「のみ」を要件としない寄与侵害導入することにより、ソフトウエア保護強化図っている。


ソフトウエア特許過去における問題点につては、特許法によるソフトウエア保護の現状と課題ソフトウエア媒体特許と用尽理論参照のこと。

執筆弁理士 古谷栄男)

「媒体特許」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



媒体特許と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「媒体特許」の関連用語

媒体特許のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



媒体特許のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
古谷国際特許事務所古谷国際特許事務所
(C)1992-2025 FURUTANI PATENT OFFICE
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS