開発とテスト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/19 05:29 UTC 版)
逸話によると、1943年にウォルト・ディズニーが制作したプロパガンダ映画『空軍力の勝利』に、これと似た架空の爆弾が描かれており、イギリス海軍の将校の一団がこの映画を観た後、本爆弾の構想が萌芽し、その結果「ディズニー」という名称が与えられたと云われている。イギリス海軍は艦隊航空隊でこれを搭載できる航空機を持たなかったにもかかわらずこの爆弾を開発した。コンクリート貫通兵器に対して海軍が興味を示したのは、UボートとSボートを防御するためドイツ海軍が強固なブンカーを広範囲に使用しており、その中に艦船が停泊している時に空から攻撃することにあったと説明できる。 ディズニーボムはイギリス海軍予備員の大尉で英国海軍諸兵器研究部に勤めていたエドワード・テレルにより開発された。戦前のテレルはニューベリー で弁護士と市裁判所判事の職にあったが、発明家でもあり、野菜の皮むき器や万年筆のインク壜を含む幾つかの特許を戦争前に取得していた。 この爆弾の開発は1943年9月に始まった。開発計画に対して海軍本部内部の、最高レベルからの支援があったが、生産は航空機生産省(MAP)の監督下で行われた。道路交通研究所(RRL)は、アメリカ合衆国が持っていた、鉄筋コンクリートに対する15インチ (380 mm)砲弾の性能データから貫通力に関する理論式を提供し、ハルステッド基地の兵装開発の主任技術者はMAPに提出するための事前設計を準備した。しかし計画は、チャーチルが議長を務める対Uボート委員会(the Anti-U-Boat Committee)に対して第一海軍卿が意見書を準備するという反対に直面した。テレルは、チャーチルの科学技術顧問であるチャーウェル卿の元を訪れ、この計画は技術的な可能性の評価であると信じさせた。首相の病気欠席のため、1944年1月まで、チャーチルがこの爆弾に対する委員会の検討を望んでいることは表明されなかった。関連部署の多さから、多数の技術者や科学者により、技術的可能性を確認するための会合が持たれた。 アメリカ陸軍航空隊(USAAC)の航空技術部門を通じた援助を受け、テレルはB-17 フライングフォートレスの翼下に懸架したモックアップを海軍本部上層部へ披露することができた。依然として航空省は幾つかの技術的背景からこの兵器の開発に反対であり、この計画に"P プラス"優先度を与えるかどうかを決めるための戦時内閣の会議(テレルはこれに出席した)が5月に持たれた。この会議の副産物は、Uボートのブンカーへの攻撃方法と、その年の8月にイギリス空軍が実施する、26発のトールボーイ爆弾投下によるブンカーへの攻撃という議題に焦点が当てられたことであった。 ディズニーボムがアメリカ合衆国の第8空軍とイギリス海軍の共同開発となったことから、イギリスの兵器であったにもかかわらず、この爆弾はUSAAFでのみ使用され、英爆撃機軍団が使用することは無かった。第92爆撃群がこの兵器を使用する最初の任務を担わされ、第305爆撃群と第306爆撃群によっても投下されることになった。第94爆撃群はこの爆弾を使用する準備をしていたが、ヨーロッパでの戦争終結までに作戦飛行を行うことはなかった。これらの部隊で使用されたB-17 フライングフォートレスは、この爆弾が爆弾倉に収納するには長すぎたため、左右の主翼下面に各1発を吊り下げて搭載した。ディズニーボムはエアランカ GB-1 滑空爆弾を吊り下げるものと同じ外部懸架装置を使用することができた。爆弾搭載機にはカメラも取り付けられていたため、爆弾の落下軌跡とその効果を記録することが可能であった。 ディズニーボムの試験は1945年初めに開始された。落下軌跡の映像記録と爆撃照準器の測定のために、爆弾の投下は当初サウサンプトン近くの射爆場で実施された[要説明]。これは、ロケット推進式爆弾の落下軌跡が、自由落下爆弾のそれとはかなり異なるために必要な措置であった。その後に投下試験は北フランスのウトン近郊にあるウトン・ブンカー、ドイツ側秘匿名「北西発電所」(Kraftwerk Nord West:現在はBlockhaus d'Éperlecquesとして知られる)と呼ばれる、ドイツ国防軍の大きなコンクリート製ブンカーで実施された。試験に当所を使用したのは、1944年9月にこの地域が連合国軍の手中に落ちたためであり、爆撃試験後に構造物に与えた効果を調査することができた。2機のB-17に搭載された4発の爆弾が使用され、この内2発が目標に命中した。地上のイギリス海軍の調査員によると、与えた効果の結果は非常に満足すべきものであった。
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