結婚
『金色夜叉』(尾崎紅葉)前編 鴫沢宮は明治音楽院に通っていた17歳の時、ドイツ人教授から求愛され、院長からも「我が後妻に」と望まれる。それ以来宮は、「自分の美貌は、少なくとも奏任官以上の富貴な夫を持つに値する」と信ずるようになり、将来の学士たる間貫一を捨て、銀行の跡取りで3百円の金剛石の指輪をする富山唯継に嫁す。
『ボヴァリー夫人』(フロベール) シャルル・ボヴァリーの父は旧軍医補で、自らの美貌を利用して、6万フランの持参金つきの、メリヤス雑貨商の娘と結婚した。シャルル・ボヴァリー自身もまた、医者になり、千2百フランの年収がある45歳の未亡人と結婚した。しかし、不器量な年上女房の尻にしかれる生活に、シャルルはうんざりする。彼は往診先の農場主の娘エンマに恋し、妻が病死したのを幸いに、エンマと結婚する。
『女相続人』(ワイラー) 定職を持たぬ美貌の青年モリスが、財産家の医師の1人娘キャサリンに求婚する。それが財産目当てであることを父の医師は見抜き、結婚を許さない。キャサリンはモリスに夢中で、駆け落ちを決意するが、モリスは、それでは財産を得ることができないので、去って行く。やがて父が病死し、キャサリンは遺産を相続する。モリスが再び現れ、「君を無一文にしたくなかったので、駆け落ちしなかった」と釈明し、「今も愛している」と言う。しかしもはやキャサリンの心は、冷たく閉ざされていた〔*『ワシントン広場』(ヘンリー・ジェイムズ)の映画化〕。
『四つの署名』(ドイル) ホームズの所へ事件の依頼に訪れたメアリ・モースタンに、ワトソンは心ひかれるが、メアリは莫大なインドの財宝を受け継ぐ身であるゆえ、ワトソンは財産目当ての卑しい男と思われることを恐れて、求愛できない。しかし悪人スモールが財宝をすべてテームズ河に沈めたため、メアリとワトソンの間の障壁は取り除かれた。ワトソンはメアリに愛を打ち明け、メアリもそれを受け入れた。
*→〔未亡人〕7の『トレント最後の事件』(ベントリー)、『メリー・ウィドウ』(レハール)。
『百万長者と結婚する方法』(ネグレスコ) ニューヨークの美女3人が、大金持ちと結婚しようと策を練る。しかし1人は森林警備の青年を、1人は税金問題で逃亡中の男を、好きになって結婚する。残る1人は初老の富豪との結婚が決まるが、これは愛のない結婚であると気づき、結局彼女は、修理工のトムと結婚する。ところがトムは修理工ではなく、実は億万長者であり、それを知った3人の女は、その場で卒倒する。
*相手が財産家だと思って結婚したら、そうではなかった→〔醜女〕2bの『醜女(しこめ)の深情』(セネット)。
★4a.A家の息子とB家の娘が結婚することによって、AB二つの家系が一つに結び合わされる。
『嵐が丘』(E・ブロンテ) 嵐が丘のアーンショー家にはヒンドリーとキャサリンの兄妹があり、ヒースクリフは拾われた孤児だった。スラシュクロス屋敷のリントン家には、エドガーとイザベラの兄妹があった。キャサリンはヒースクリフを愛しながらも、エドガーと結婚し、娘キャサリン2世を産んで死ぬ。ヒースクリフはイザベラと結婚し、息子リントンをもうける。ヒースクリフは、リントンとキャサリン2世を結婚させるが、リントンはまもなく病死する。やがてヒースクリフも死ぬ。未亡人となったキャサリン2世は、ヒンドリーの息子ヘアトンと結婚し、アーンショーの家系とリントンの家系が1つに結び合わされる。
『失われた時を求めて』(プルースト) 「私」にとって、ブルジョアのスワン家と大貴族ゲルマント家とは、別々の方向にあるものだった(*→〔道〕2)。「私」は青年期に、スワンの娘ジルベルトに思いを寄せ、失恋した。また「私」は、ゲルマント家のサン=ルー侯爵と親交を結んだ。後にジルベルトとサン=ルーは結婚し、2人の間に娘(サン=ルー嬢)が誕生する。初老に達した「私」はサン=ルー嬢と出会い、2つの方向が、すなわちスワンとゲルマントの家系が、彼女の中に合一したことを知った。
『モンテ・クリスト伯』(デュマ) マクシミリアンは、モンテ・クリスト伯(エドモン・ダンテス)の恩人・モレル氏の息子だった。ヴァランティーヌは、モンテ・クリスト伯の仇敵・検事総長ヴィルフォールの娘だった。マクシミリアンが「僕はヴァランティーヌを死ぬほど愛しています」と言うので、モンテ・クリスト伯は驚愕し怒号するが、「ヴァランティーヌには何の罪もないのだ」と思い直す。モンテ・クリスト伯は、継母から命をねらわれているヴァランティーヌを救い出し、マクシミリアンと結婚させる。
『麦秋』(小津安二郎) 28歳のOL紀子は、学者だった父、母、医師である兄、兄嫁、兄夫婦の2人の子供とともに、一家7人で鎌倉に暮らしている。会社の上司が紀子に縁談を勧めるが、たまたまその時、戦死した兄の友人で隣家に住む医師・矢部が、秋田の病院へ赴任することになる。紀子は、自分が矢部を好きだったことに気づき、「矢部と結婚して秋田へ行こう」と決心する。父母は紀子の結婚を機に、郷里の奈良へ移り住む。7人の大家族から3人がいなくなり、夫婦と子供2人の核家族ができる。
『フィガロの結婚』(モーツァルト) アルマヴィーヴァ伯爵の従僕フィガロと、伯爵夫人の侍女スザンナは相思相愛で、今日は2人の結婚式である。ところが女中頭マルチェリーナがフィガロに横恋慕して、彼に結婚をせまる。しかし調べてみるとフィガロは、マルチェリーナの実の子だということがわかった。マルチェリーナは、かつて内縁関係だった医師バルトロとの間に、フィガロを産んだのである。フィガロとスザンナの結婚式にあわせて、この日、バルトロとマルチェリーナも、あらためて挙式することとなった。
★7a.年の差婚。
『義経記』巻3「熊野の別当乱行の事」 熊野の別当弁せうは老齢であったが、二位大納言の姫君に思いを寄せ、大納言家の婿となった。別当が61歳の時、姫君は19歳で懐妊し、やがて生まれたのが武蔵坊弁慶である→〔妊娠〕9。
★7b.高齢者どうしの結婚。
『封神演義』第15回 姜子牙は32歳の時に崑崙山へ登り、40年の修行を経て、72歳で下界へ降りた。彼は、義兄弟の宋異人の屋敷を訪れる。宋異人は、姜子牙が独身であることを知って、68歳の処女・馬氏を彼に娶(めあ)わせた〔*しかし後に彼らは離婚する〕。
★8.結婚詐欺。
『支払いすぎた縁談』(松本清張) 昭和30年代。地方の旧家・萱野家の娘幸子に、東京の大学講師高森と、会社社長の息子桃川が、相次いで求婚する。桃川は財産家で、結納金を300万円出すというので、萱野家は桃川の求婚を受け入れ、高森の方を破談にする。高森は怒り、慰謝料80万円を要求する。萱野家は、「桃川から結納金300万円を得れば、80万ひいても220万残る」と計算して、高森に80万円を支払う。すると、桃川からの連絡がバッタリ途絶えた。桃川も高森も詐欺師だったのだ。
*架空の5千ドルを当てにして8百ドルを失う物語(*→〔売買〕3bのO・ヘンリー『豚の教え』)や、手付金10両にだまされて40両を失う物語(*→〔共謀〕2の昔話『ぐるでだます』)と同類である。
★9.結婚の無効。
『トップ・ハット』(サンドリッチ) トップ・ハットをかぶって歌い踊るレビューのスター、ジェリーは、興行主ハードウィックのいるホテルを訪れて、美女デールと出会う。2人は互いに恋心を抱くが、ちょっとした行き違いから、ジェリーが既婚者だと思い込んだデールは、怒って他の男と結婚式を挙げてしまう。その直後にジェリーは、デールの誤解を解く。幸い、結婚式を行なった神父が、実はハードウィックの召使ベイツの変装だったので、式は無効であり、ジェリーとデールは天下晴れて結婚できることとなった。
結婚と同じ種類の言葉
品詞の分類
Weblioに収録されているすべての辞書から結婚を検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。
全ての辞書から結婚 を検索
- >> 「結婚」を含む用語の索引
- 結婚のページへのリンク