第7次イゼルローン攻防戦
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「銀河英雄伝説の戦役」の記事における「第7次イゼルローン攻防戦」の解説
宇宙暦796年/帝国暦487年5月。少将に昇進し、半個艦隊規模で新設された同盟軍第13艦隊の司令官となったヤン・ウェンリーに対し初の任務として命じられた、イゼルローン要塞の攻略戦。 過去のイゼルローン要塞攻略戦従軍の経験を踏まえて「イゼルローン要塞は外部からの攻撃では陥落しない」と考えていたヤンは要塞を内部から占領する事を考え、その実行役に帝国からの亡命者で組織され、同盟軍最強と名高い「薔薇の騎士(ローゼンリッター)連隊」を選んだ。まず、偽の救難信号によってゼークト大将の駐留艦隊を要塞から引き離し、その隙に拿捕した帝国軍の艦船を使って要塞内部に帝国軍兵士に変装したローゼンリッターを送り込んだ。 要塞内に潜入したローゼンリッターは、駆け付けた警備兵に「同盟軍がイゼルローン回廊を無事通過する手段を得ている」と嘘を伝え、要塞司令官シュトックハウゼン大将の元に案内させた。 原作ではID偽装もしていたが何らチェックも受けず、易々とたどり着いている。 『Die Neue These』では艦から司令室に至るまで相応の距離を移動する描写があり、その上でローゼンリッター隊員の身体スキャニングなど、詳細な「関門」を潜り抜けている。最後のIDチェックについては些か手こずったが、しびれを切らしたシュトックハウゼンが部下に一刻も早く連れてこいと急き立てたため、うやむやのうちにクリアした。 これらの関門を上手くクリアし、最終的にシェーンコップが要塞司令室にてシュトックハウゼンを拘束、人質に取ることで要塞中枢部を制圧、要塞を無力化することに成功した。 こうして要塞への侵入・制圧に成功した第13艦隊だったが、誘い出された要塞駐留艦隊はいまだ健在であった。ゼークト側へ「要塞内部で叛乱」との偽情報を流し疑心暗鬼を誘う。これを受けて要塞へ引き返そうとする(ここで本当の敵の意図を察したオーベルシュタインは罠だと帰還するのを止めるため説得しようとするが、ゼークトはそれを聞き入れなかった。愚行に呆れた彼は軍務を放棄、要塞陥落寸前に単身シャトルで脱出している)。何も知らない帝国軍艦隊に対し、ヤンは要塞主砲を2回放って数千隻の艦艇を破壊したうえ、降伏あるいは逃亡を勧告する。しかしこれを侮辱と受け取ったゼークトは「全艦突入して玉砕し、以て皇帝陛下の恩に報いる」と返信、艦隊全艦に命令して突撃を開始した。自身の独りよがりな軍事ロマンチシズムを他の兵を巻き込んでまで展開するゼークトに対し、ヤンは要塞主砲の第3射でゼークトの旗艦ほか艦艇1000隻ほどを「消滅」させた。これを見た駐留艦隊の各艦は次々と艦首を翻し、帝国領方面へ撤退していった。 OVA版では要塞守備隊幕僚のレムラー中佐が要塞の全システムを凍結させ、外部の艦隊との接触の切断を試みており、シェーンコップらがロック解除のため中央制御室に赴いて帝国軍守備兵と戦うシーンが追加され、それに伴いヤンが第13艦隊の小規模性を生かし要塞に主力艦隊が入港しているように見せかけて時間稼ぎを行っている。またヤンの命令による要塞主砲の発射も2回のみで、1回目の発射後にシェーンコップの指摘が入り、ゼークトに降伏勧告を行うという流れとなっている。 コミックスでは、シュトックハウゼンの拘束とあわせて艦船内に搭載していたローゼンリッター本隊の揚陸艦を突入させている。 その後ヤンはハイネセンにイゼルローン要塞占領の通信を入れ、同盟軍は7度目にして悲願のイゼルローン要塞攻略を果たした。味方に一人の犠牲も出さずにイゼルローンを陥落させたため「奇跡のヤン(ミラクル・ヤン)」「魔術師ヤン(ヤン・ザ・マジシャン)」と称されるに至った。 この歴史的敗北は帝国を揺るがし、国事に無関心な皇帝フリードリヒ4世さえもが国務尚書を通して事情の説明を要求してきたほどである。帝国軍三長官(軍務尚書、統帥本部総長、宇宙艦隊司令長官)はそろって辞表を提出し、合わせてシュトックハウゼン・ゼークト両司令部唯一の生還者であるオーベルシュタインを、自分だけ生きて帰ってきたこと自体を白眼視して詰め腹を切らせようとした。しかし、オーベルシュタインはこの危機を逆用して、ラインハルトに己もまたゴールデンバウム王朝そのものを憎んでいるという本心を吐露して自らを売り込んだ。そしてラインハルトは皇帝に提示された三長官の地位を辞退し、彼ら全員の留任と引き換えにオーベルシュタインの助命及び元帥府への編入を取り付た。 この作戦は、当初よりローゼンリッターの連隊長のシェーンコップの裏切りの可能性が指摘されており、当の本人がその事を示唆しているが、ヤンは承知の上で「対策は無意味」としてあえて作戦を決行した。失敗しても自分とシトレが責任を取るだけでリスクは少なく、成功した場合は多大な成果をもたらすとの判断による。またオーベルシュタインは、艦隊を要塞からおびき出すこと、再度艦隊を要塞へ呼び戻すこと、この二点については「同盟の罠である」と看破し、意見具申を行っており、この点でも失敗の可能性があった。 ヤンと命令者であるシトレは、「この作戦が成功すればイゼルローン要塞の武力を背景に帝国と和平協定を結び、つかの間ではあっても有意義な平和が到来する」と期待した。しかし、その思惑とは正反対に、あまりにも鮮やか過ぎる成功が民衆に更なる戦果への期待をかきたて、後の自由惑星同盟軍による帝国領侵攻という無謀な作戦につながり、ひいては同盟滅亡の原因となり、ヤンはむしろこの作戦の成功を悔やむ事になる。
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