第4世代 1986年 - 92年
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「オールズモビル・トロネード」の記事における「第4世代 1986年 - 92年」の解説
第4世代であり且つ最後のトロネードは1986年から1992年まで販売された。この車は更に小型化されフレーム付きボディを捨て去りモノコック構造のボディを持ち、1969年以来となるリトラクタブルヘッドライトを採用したトロネードであった。 V8エンジンは廃止され、燃料噴射装置付きの231 cu in (3.8 L)のビュイック V6(Buick V6)のみが唯一のエンジンであった。このエンジンはかなり小型化、軽量化されたトロネードには十分な出力を持っていた。エンジン配置も初代モデル以来伝統的に採用されていた縦置きレイアウトを捨て、世界的に主流となっていたジアコーサ式の横置きレイアウトに移行した。 内部機構では新しいデジタル計器盤とオプションの音声警告システムが採用され、従来と同様に同じ豪華装備が標準装備とオプションとして提供された。標準の座席はセンターアームレスト付き布張りの60/40分割ベンチシートであった。初代の1970年以来のストラト・バケットシートはオプションで提供され、この仕様には1960年代と1970年代のビュイックとシボレー車の幾つかに見られた馬蹄形の"バスケット・ハンドル(basket handle)"型シフトノブ付きの前後席に渡るセンターコンソールが装着されていた。内装は布張りと革から選択ができた。 不運なことにGMのこの小型化は的外れであった。GMの予測ではガソリン価格は1ガロンが3USドルかそれ以上とされていたが、 1985年秋の時点で劇的に下落(米国の多くの地域で1ガロンが1USドル以下)した。GMの販売モデル全般に渡る膨大な数の新型車の代わりに消費者はリンカーン・タウンカーや1986年モデルで販売記録を立てたクライスラー社の長寿のV8エンジンを搭載したフィフス・アヴェニュー(Fifth Avenue)の様な車を、1986年は「大きいを買う(buy big)」ことを選択した。 悲しむべきことに販売が縮小していく姉妹車のエルドラドとリヴィエラと共にトルネードは回復することの無い重大な販売不振に見舞われた。この販売危機は小型化と同様により安価で高級感に欠けるGMのコンパクトカーであるオールズモビル・カレイス(Oldsmobile Calais)やポンティアック・グランダム(Pontiac Grand Am)に酷似した"クッキー型(cookie cutter)"で打ち抜いて作った様なスタイリングに起因していた。 1987年中盤にオールズモビルは陳腐化したトロネードの販売を下支えすることを意図してトロフェオ(Troféo)と呼ばれる標準で革製バケットシート、見かけだけの2本出し排気管、より精悍になったスタイリングと引き締められたサスペンション(リターンショック、ストラットやその他の部品から構成される工場オプションのFE3パッケージとして名高い)を備えたスポーティモデルを導入した。 1988年モデルではトロフェオは外装にはもはやトロネードのバッジを着けていなかった。トロフェオのその他の変更点は新しい座席と単色メタリック塗装で、トロフェオとトロネードの双方に大型化されたエアコンディショナー操作ボタンと後部座席の3点式シートベルトが備えられた。加えて出力を増強した新しいビュイック 3800 LN3型(Buick 3800 LN3)V6エンジン搭載モデルが導入された。ワイアーホイール(Wire wheel)風カバーはオプションから外され、その他の変更点は僅かで主に加飾関連のものであった。 1989年モデルのトロフェオには自動温度調節装置、ラジオやトリップコンピュータ(trip computer)の様な先進的な計器を操作するダッシュボードに備え付けられたタッチパネル式ディスプレーの視覚情報装置(Visual Information Center:VIC)を注文することもできた。VICは車内で携帯電話のハンズフリー機能に使用することもできた。トロフェオはアンチロック・ブレーキ・システムとラジオ、エアコンディショナー操作ボタン付きの新しいハンドルも標準で装備していた。今やトロネードの座席は標準でコンソール付きのバケットシートであったが、分割式ベンチシートもまだオプションで提供されていた。 1990年にオールズモビルは文字通り象徴的なトロネードとトロフェオの販売を復活させる強化策を断行した。オールズモビルのデザイナーは前年のモデルから引き継いだのはボンネットのみという特に車体後部に重点を置いたボディの完全な再デザインを行い、これにより全長は約1フィート (30 cm)延長された。この再デザインは室内容積の拡大には貢献しなかったが、トランク容積が不足しているという苦情には応えていた。トロネード/トロフェオの持主は長期休暇用に充分な荷物やゴルフバッグ4つを車室内に持ち込むことなく収納することができた。 前部座席の安全のために1976年以来となるエアバッグが装着された。この時点では運転席のみに標準で取り付けられ、双方のモデルで共通の新しいハンドルが装着されていた。新しいアナログ式計器と視覚情報装置は運転者がこの新しいハンドルの中を通して読み取れるようにまとめて配置された。1990年代のトロフェオとトロネードの分厚い取扱説明書も容量の大きなグローブボックスに収納することができた。 不運なことに新しいスタイリングは下降する販売の流れを変える助けとはならなかったが、それでも尚オールズモビルはあきらめなかった。1991年モデルでは幾つかの装備が追加料金なしで装着された。以前はオプション品であったリモート・キーレスエントリー(remote keyless entry)とアンチロック・ブレーキ・システムが全モデルに渡り標準装備となり、エンジンは別の低出力のものに格下げされた。トロフェオには標準の革張り内装より上等のウルトラスエード製が用意されたが販売数は僅かで、現在では非常に希少である。バケットシートを注文した場合はムーンルーフのオプションは選択できなかった。 1992年モデルは新しい復刻オプションを装着して発売され、ワイアーホイール風カバーの愛好者は1987年以来久しぶりに満足感にひたれた。トロフェオには堅い標準サスペンション(以前はオプションであったFE3パッケージ)が装着された。 トロネードとトロフェオはこの時点でGMのデザイナーと技術者が造り出すことのできた最善の車であったが、消費者はこれを購入しなかった。燃料消費率は悪く、SUV車の流行はまだ到来していなかったが単純にクーペという形状の車を所有すること自体が時流から外れていた。オールズモビルの幹部はこのことを理解し、1992年モデル限りでトロネードとトロフェオを販売停止にする決定を下した。この2車種は1994年初めに1995年モデルとして発表されたオーロラ(Aurora)に代替された。
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