太乙救苦天尊とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 太乙救苦天尊の意味・解説 

太乙救苦天尊

(東極妙厳青華大帝 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/16 08:09 UTC 版)

太乙救苦天尊(清代の絵画)

太乙救苦天尊(たいいつきゅうくてんそん)は、道教の神格で、苦難からの救済と地獄の亡魂を救う慈悲の神として信仰される。正式神号を東極妙厳青華大帝(とうごくみょうごんせいかたいてい)といい、六御の一柱に列される[1]仏教地蔵菩薩と習合される救済神的性格を持つ。

概要

六御の高位神として昊天至尊玉皇上帝の慈悲的側面を体現し、主に『太上洞淵神呪経』『太乙救苦護身妙経』などの道教経典に説かれる[2]。地獄解脱の儀礼「煉度儀」において中核的な役割を果たす。

信仰

神格的特徴

  • 十方世界を照らす「九色蓮華」を神座とする
  • 地獄の十殿を巡り亡者を救済(「三途川」の概念と関連)
  • 動物霊の救済を通じ畜生道解脱を司る
  • 頭部に九陽巾を戴き、九頭獅子に騎乗する

祭祀文化

中元節(旧暦7月15日)に祭祀が集中し、斎醮(道教儀礼)では霊宝派が重要視する。台湾や香港では盂蘭盆会と習合した「青玄醮」が行われる[3]。日本では陰陽道の影響で泰山府君祭との関連が指摘される[4]

道教体系における位置付け

正式名称 通称・別称 職掌
昊天至尊玉皇上帝
(こうてんしそんぎょくこうたいてい)
玉皇大帝 天道の統治
中天紫微北極大帝
(ちゅうてんしびほっきょくたいてい)
北極紫微大帝 四季・日月星辰の管理
勾陳上宮天皇大帝
(こうちんじょうぐうてんこうたいてい)
天皇大帝 三才万物・兵革の統率
承天效法后土皇地祇
(しょうてんこうほうこうどこうちき)
后土 陰陽調和・万物生育
東極妙厳青華大帝
(とうごくみょうごんせいかたいてい)
太乙救苦天尊 救済事業・地獄解脱
南極神霄玉清大帝
(なんきょくしんしょうぎょくせいたいてい)
南極老人
(長生大帝)
寿命管理・雷法統括

※「六御」は三清に次ぐ道教最高神群。神霄派では「長生大帝」の称が用いられるが、日本では「南極老人」の名で寿老人信仰と習合[5]

図像学的特徴

  • 神容:青年帝王形と老君形の二系統が存在
  • 持物:甘露瓶(苦痛洗浄)・蓮華(清浄象徴)・仙杖(冥界開扉)
  • 坐騎:九頭獅子(「九霊元聖」の称号あり)
  • 光背:九色円光(九つの慈悲を表現)

脚注

  1. ^ 野口 1994, p. [要ページ番号].
  2. ^ 窪徳 1996, p. [要ページ番号].
  3. ^ 岩波書店 2002, p. [要ページ番号].
  4. ^ 『日中宗教比較史』法藏館、2005年、[要ページ番号]頁。 
  5. ^ 『道教と星神信仰』東方書店、2010年、[要ページ番号]頁。 

参考文献

  • 野口鉄郎 監修『道教大辞典』雄山閣出版、1994年。 [要文献特定詳細情報]
  • 窪徳忠『道教の神々』講談社〈講談社学術文庫〉、1996年7月。ISBN 4-06-159239-4 
  • 三浦國雄『道教と天文歴算』汲古書院、2012年。 [要文献特定詳細情報]
  • 道教文化研究会 編『神霄道教の研究』文理閣、2015年。 [要文献特定詳細情報]
  • 『東アジアの死生観』岩波書店、2002年。 [要文献特定詳細情報]
  • 山田利明『道教儀礼と東アジア文化』勉誠出版、2018年。 [要文献特定詳細情報]

関連項目

  • 東岳大帝 - 冥界の最高神。
  • 閻魔 - 仏教やヒンドゥー教などでの地獄、冥界の主。
  • 酆都大帝 - 道教における冥界の最高神格の一尊。

外部リンク




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  太乙救苦天尊のページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「太乙救苦天尊」の関連用語

太乙救苦天尊のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



太乙救苦天尊のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの太乙救苦天尊 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS