二郎神
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二郎神(じろうしん)は、道教の治水の神、武神。二郎真君、顕聖二郎真君、灌口二郎(かんこうじろう)、灌江二郎(かんこうじろう)、灌江神、赤城王、清源妙道真君とも呼ばれる。
- ^ 二階堂善弘「二眼の二郎神」『東アジア文化交渉研究』第7号、関西大学大学院東アジア文化研究科、2014年3月、217-228頁、NAID 120005687925。
- ^ 焦杰「灌口二郎神的演変」四川大学学報(哲学社会科学版)1998年第3期、59-63頁。
- ^ “二郎神醉射鎖魔鏡” (中国語(繁体字)). 2016年12月5日閲覧。
- ^ 『西遊記戯曲集』胡勝・趙毓龍校注、遼海出版社、2009年。
- ^ “雜劇·楊景賢·西遊記·第二本” (中国語(繁体字)). 2016年12月5日閲覧。
- ^ “雜劇·楊景賢·西遊記·第三本” (中国語(繁体字)). 2016年12月5日閲覧。
- ^ “寶蓮燈 - 教育部重編國語辭典修訂本” (中国語(繁体字)). 2016年12月5日閲覧。
- ^ 『西遊記資料彙編』蔡鉄鷹編、中華書局、2010年、上冊 466-473頁、ISBN 978-7-101-07414-7。
- ^ a b 『董永沈香合集』杜穎陶編、古典文学出版社、1957年。
- ^ 『清源妙道顕聖真君一了真人護国祐民忠孝二郎宝巻(二郎宝巻)[8]』、弾詞『新編説唱宝蓮灯華山救母全伝[9] 』、太平歌詞『新出二郎劈山救母全段[9]』などで語られている。
- ^ 『二郎宝巻』では斗牛宮の仙女・雲花侍長。弾詞『新編説唱宝蓮灯華山救母全伝』や太平歌詞『新出二郎劈山救母全段』などでは張仙姑・張三姐(張雲台)という名前をつけ、玉帝の妹または王母の娘とされる。
- ^ 『二郎宝巻』・『新出二郎劈山救母全段』では玉帝が母親を閉じ込めるのではなく、孫悟空がさらい、山の下に閉じ込めることになっている。
- ^ 成行正夫「孫悟空と白猿伝説」『芸文研究』第34号、慶應義塾大学藝文学会、1975年2月、30-40頁、NAID 120005286116。
二郎神
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二郎神は当初から道教神として生じた神格で、『西遊記』では玉皇大帝(天帝)の甥とされる。神犬を連れた三つ目の堂々たる美丈夫で、義兄弟である梅山六兄弟を引き連れ、変化の術を使って孫悟空とも互角に戦う英雄として描かれる。楊劇西遊記では、観音菩薩から三蔵法師を守護するために任命された十大保官の第四に灌口二郎の名が見え、悟空の依頼で神犬を使って猪八戒を捕らえるなど、元代から取経物語に加わっている。 二郎神のモデルとなった人物は複数の候補があり、それらが混淆しているため、文献によって「李二郎」「趙二郎」「王二郎」などと姓が異なる上、称号も灌口二郎神、顕聖二郎真君、清源妙道真君など様々なものがある。このうち李二郎は戦国時代の秦の蜀郡郡守・李冰がモデルとされ、蜀の灌江(都江堰)の水利工事を行ったことが、後世に水龍を退治した話に変化し、灌口などに廟が建てられて灌口二郎神となったという。趙二郎の方は隋代の道士趙昱(字は仲明)がモデルで、煬帝から嘉州太守に任命された際に、地元民を苦しめた蛟を退治したという伝説を持つ。宋の真宗時代に清源妙道真君の号が贈られている。このように二郎神は様々な伝説が混ざり合って形成された神である。三つ目という特徴も密教の影響が見られる。 『西遊記』の場合は楊二郎としている(第6回で孫悟空が「玉帝の妹が下界の楊君に嫁いでお前が生まれた」と言っている)が、この楊姓の由来は不明である。後の『封神演義』では名を楊戩とするが、これは北宋徽宗時代の宦官で、『水滸伝』で悪役として登場する人物の名である。『醒世恒言』に収める「勘皮靴単証二郎神」なる小説で、宦官の楊戩が二郎真君の名を騙る道士・孫神通の悪事を暴く話があり、この説話が民間で広まる中で混同された可能性がある。 なお二郎神に従う神将の梅山義兄弟(康太尉、張太尉、姚太尉、李太尉、郭申、直健)は、『捜神大全』で趙二郎が蛟を退治した際にともに水に入った「七聖」(眉山七聖とする文献もある)が元になったと思われる(眉と梅は明代以降méiで同じ発音)。この七聖が二郎神を含めた7人と解釈されて、6兄弟になったと考えられる。『封神演義』では「梅山七怪」として登場し、楊戩と敵対して退治されてしまう役割となっている。
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