大司命
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大司命(だいしめい)は、中国・楚の祭祀詩『楚辞』「九歌」に登場する生命と死を司る神格。人間の寿命を定める神として、巫女との対話形式で描写され、少司命と対となる存在として詩的祭祀劇を構成する。後世の道教神学への影響は限定的で。
『九歌』における定位
『九歌』(戦国時代成立)の「大司命」篇は、楚の巫覡が神霊を迎える祭祀儀礼を詩化したもの。王逸『楚辞章句』によれば、天帝直属の高位神と解され、以下の特徴を持つ:
- 天門を開き「陰陽の気」を操り、人間の寿命を裁定する超越的存在
- 「空桑(くうそう)」(伝説の神木)を従え、旋風と雲霓(うんげい)に乗って降臨
- 巫女との問答を通じ「老いゆく定め」への諦観と神威の不可抗力を象徴
詩的描写の分析
神格表現
- 空間性:天界と人間界を往来する「乗清気兮御陰陽」(清気に乗り陰陽を御す)の描写が神の超越性を強調
- 両義性:人間に寿命を授ける慈愛と、冷酷に命を奪う峻厳の二面性を併せ持つ
- 擬人化:神自ら「孰寿夭兮在予」(寿夭いずれかは我に在り)と宣言する劇的表現
少司命との対比
大司命 | 少司命 |
---|---|
老年・死の管理 | 幼子・生の守護 |
厳格・孤高 | 優美・情愛的 |
抽象的な「定め」の象徴 | 具体的な子孫繁栄の神 |
(小南一郎『楚辞の神話学』による解釈を基に作成)
祭祀儀礼との関係
- 楚地の「儺(nuó)祭」における疫神払いの要素を反映するとの説(藤野岩友説)
- 神霊降臨の過程:「広開天門→神将降→逾空桑→霊衣翻曳→玉佩鏘鳴」の5段階構成
- 巫女(主祭者)との交感描写から、古代の「神婚儀礼」の痕跡を指摘する研究あり
後世への影響
研究史
- 日本における主な論考:
参考文献
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- 藤野岩友『巫系文学論』大学書林、1951年。NDLJP:1659553。
- 星川清孝『楚辞の研究』養徳社、1961年。NDLJP:1670490。
- 石川三佐男「九歌大司命篇の構造」『日本中国学会報』第43巻、1991年。[要文献特定詳細情報]
関連項目
- 大司命のページへのリンク