戦後の輸送状況と63系の追加導入
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「国鉄63系電車」の記事における「戦後の輸送状況と63系の追加導入」の解説
戦後、国鉄における通勤通学の輸送人員は増加を続け、1947年度は1936年度の3.27倍、1951年度は同じく3.66倍となっており、特に大都市附近においては、復興・復員によって人口の流入があった一方で、都市中心部の戦災被害に伴う近郊部への疎開・転居等によって遠距離通勤が増加し、通勤通学列車の混雑度が増していた。一方で、国鉄電車における戦災車両数は全焼・大破358両、半焼・中破39両・小破166両の計563両であり、これは全電車の26%にあたり、このうち361両が廃車となっている。これに加えて、保守の低下に伴い、1947年における電車の稼動率は戦前の50%程度となり、都心の路線で使用する車両を確保するため、1945年6月から横須賀線、1946年2月から阪和線、同年8月からは中央線で機関車牽引の列車が運行されている。 この状況の改善のため、戦時設計の63系を大量生産用設計に手直し、かつ改良を加えた上で1945年度から1948年度にかけて導入している。1945年9月11、12日の全国工作課長会議において蒸気機関車287両、電気機関車95両、電車600両、客車1380両を1946年9月までに補充することを計画し、1945年9月14日にその発注が実施され、電車に関しては1945年度300両、1946年度310両の製造予定であったが、資材、特に電装品を中心とする資材不足により計画通り進捗せず、1946年10月に制御電動車460両、付随車60両の計画に修正されている。戦後製の63系はまず1945年度末までに41両が製造(車体竣工ベース)されたが、その後は1946年10月制定の臨時物資需給調整法に基づく指定生産資材割当規則により製造に必要な資材の配給統制が行われたことにより大幅に増産されており、1950年までに688両が導入されて戦後復興の一翼を担った。こういった63系の増備に加え、車両の保守に関しても戦前のレベルまで復旧させた結果、通勤通学列車の輸送力は1951年度には1936年度の2.95倍に増強されている。 しかし、終戦後すぐの時期に製造された車両は電装部品不足により、運転台付きの電動車として計画されながら主電動機や主制御器などの電装品がない状態のまま制御車代用となった車両も多く、さらに、運転台に装備する主幹制御器やブレーキ弁などの機器も省略して付随車代用となった車両も少なからずあった。なお、これらの車両の識別のため、1948年4月8日付の形式称号の特別措置により、「モハ」の記号を使用する電動車のうち、電動機を装備しない車両に対し「クモハ」(制御車代用)、電動機と主幹制御器を装備しない車両に対し「サモハ」(付随車代用)の記号を使用し、「クハ」の記号を使用する制御車のうち、主幹制御器を装備しない車両に対し「サクハ」の記号を使用することとなった。 1937年から1952年までの国鉄における年度別の電車の運用状況および導入状況は下表の通り。 年度別の電車運用状況および導入状況項目1937年1938年1939年1940年1941年1942年1943年1944年1945年1946年1947年1948年1949年1950年1951年1952年備考運用状況配置両数1597両 1626両 1641両 1701両 1758両 1806両 1951両 2134両 1998両 1888両 2202両 2402両 2416両 2604両 2658両 2660両 運用両数1486両 1513両 1527両 1582両 1633両 1667両 1776両 1868両 1596両 1399両 1677両 1892両 2102両 2322両 2357両 2405両 予備両数111両 113両 114両 119両 120両 134両 164両 235両 334両 374両 361両 352両 264両 244両 253両 229両 休車両数- - - - 5両 5両 11両 31両 68両 115両 164両 158両 50両 38両 48両 26両 廃車前提の車両を含む 使用効率93.5 % 93.3 % 92.5 % 93.0 % 94.0 % 92.5 % 94.2 % 91.0 % 87.7 % 80.0 % 73.8 % 75.5 % 78.5 % 84.1 % 88.5 % 90.5 % 導入状況40系16両 26両 57両 76両 41両 25両 - 1932年より導入、1940年以降準戦時形 50系65両 22両 67両 71両 45両 50両 - 4両 9両 1934年より導入、鋼体化改造車 51系30両 5両 3両 4両 - 3両 - 1935年より導入、1940年以降準戦時形 52系8両 - 62系- 6両 - 鋼体化改造車 63系- 30両 - 374両 307両 122両 - 4両 - 戦時形 70系- 67両 51両 34両 以降1957年まで導入 72系- 21両 以降1957年まで導入 80系- 73両 113両 24両 20両 以降1958年まで導入 ^ 鋼体化を除く他形式からの改造車および、戦時買収による鉄道省編入車を除く ^ 私鉄割当の116両を除く ^ クハ79形8両を含む ^ 資材難やメーカーの戦災、人員不足等にの理由で製造ができなかった1945年度予算と1946年度予算を統合
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