平成12年 (2000年) 鳥取県西部地震とは? わかりやすく解説

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鳥取県西部地震

(平成12年 (2000年) 鳥取県西部地震 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/01 09:51 UTC 版)

鳥取県西部地震
震源の位置(USGS)
地震の震央の位置を示した地図
本震
発生日 2000年平成12年)10月6日
発生時刻 13時30分17.9秒 [1]
震央 日本 鳥取県西部
座標 北緯35度16.4分 東経133度20.9分 / 北緯35.2733度 東経133.3483度 / 35.2733; 133.3483座標: 北緯35度16.4分 東経133度20.9分 / 北緯35.2733度 東経133.3483度 / 35.2733; 133.3483 [1]
震源の深さ 9 km
規模    M7.3
最大震度    震度6強: 鳥取県日野町境港市
津波 なし
地震の種類 直下型地震、左横ずれ断層型
余震
回数 1316回
最大余震 2000年10月8日20時51分 (JST)、M5.0、最大震度5弱
被害
死傷者数 負傷者182人
被害総額 約566億円[2]
被害地域 中国地方東部、近畿地方西部
プロジェクト:地球科学
プロジェクト:災害
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鳥取県西部地震(とっとりけんせいぶじしん)は、2000年平成12年)10月6日13時30分に鳥取県の西部で発生した地震である[3][4]。地震の規模はマグニチュード7.3で、鳥取県西部で最大震度6強を観測した[3][4][5]地震空白域とされる地域で発生した[3]

同日、気象庁はこの地震を平成12年(2000年)鳥取県西部地震命名した[4]

概要

1996年震度階級改正以来初めて震度6強を記録した[4]気象庁マグニチュードが7を超える大地震であったにもかかわらず、何人かは生き埋めとなったが救助され、死者は無かった[4]。これは、震源地が山間部であったことや、市街地の一部を除き人口が密集していない地域であった[6]ことや、積雪の多い地域のため頑丈な造りの民家が多かったこと、そして地盤が比較的強固であったことも挙げられる[3]

鳥取県では、この地震の2か月前に震度6強の震災が鳥取県西部で発生することを想定して防災訓練を実施しており、訓練の成果として地震発生から10分後には行政および消防当局が対策を実施することができた[7]。しかし、境港市街の液状化を始め日野町、米子市などで住宅の倒壊、損壊など物理的な被害は顕著であった[8][9][10][11]。なお、震源地が大山にほど近い事もあり大山の噴火も懸念されたが、全く火山活動はなく津波は観測されていない[12]

震源断層

発震機構は東西方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型である[3][14]震源断層は、北北西-南南東走向の左横ずれ断層(長さ約20km・幅10km)と推定されている[14][15]

この地震は、既知の断層の活動によるものではなく、未確認の地下断層(未知の活断層)の活動による地震であり、地表地震断層も出現しなかった[3]。ただし、地表には地下の変位に伴い複数の地割れが現れている[8][16][17]

余震域は本震の震源断層に沿って分布し、島根県の安来市から鳥取県の日野郡まで南南東 - 北北西方向に長さ約30 km、深さは約15 kmまでに分布している。

この地震に先行し断層の深部延長線上で1989年、1990年、1997年にはM5程度の群発的地震活動が発生している。本震発生の約12時間前には、震源域でM1.7が観測されている。トレンチ調査により前回の活動は西暦800年 - 1200年であることが判明した。

各地の震度

震度5弱以上が観測された気象庁の発表地点[1]
震度 都道府県 観測点名
6強 鳥取県 境港市東本町・鳥取日野町根雨
6弱 鳥取県 境港市上道町・西伯町法勝寺・会見町天万・岸本町吉長・淀江町西原・溝口町溝口・日吉津村日吉津
5強 鳥取県 米子市博労町
島根県 安来市安来町・宍道町昭和・仁多町三成
岡山県 新見市新見・大佐町小阪部・哲多町本郷・落合町西河内・美甘村美甘
香川県 土庄町
5弱 鳥取県 鳥取東郷町龍島・関金町大鳥居・北条町土下・鳥取大栄町由良宿・東伯町徳万・鳥取大山町国信・名和町御来屋・鳥取中山町赤坂
島根県 松江市西津田・島根鹿島町佐陀本郷・東出雲町揖屋・八雲村西岩坂・玉湯町湯町・八束町波入・島根大東町大東・島根加茂町加茂中・三刀屋町三刀屋・斐川町荘原町・湖陵町二部・仁摩町仁万・桜江町川戸
岡山県 神郷町下神代・岡山勝山町勝山・新庄村役場・岡山川上村上福田・八束村上長田・中和村下和・岡山市大供・玉野市宇野・笠岡市笠岡・岡山御津町金川・岡山瀬戸町瀬戸灘崎町片岡・早島町前潟・船穂町船穂・真備町箭田・有漢町有漢・北房町下呰部・賀陽町豊野
兵庫県 津名町志筑
広島県 広島高野町新市・福山市駅家町川尻町西・広島大崎町中野・新市町新市・府中町大通り
徳島県 徳島市大和町・徳島市新蔵町
香川県 香川白鳥町湊・香川池田町池田・庵治町役場・観音寺市観音寺町・国分寺町新居・三野町下高瀬・豊中町本山

このほか大阪府大阪市など)・兵庫県(神戸市姫路市豊岡市など)・京都府山口県愛媛県松山市など)・広島県(広島市など)・島根県(隠岐島含む)・鳥取県(鳥取市など)・岡山県・香川県・徳島県・高知県など西日本の広い範囲で震度4を記録した[18]。揺れは東は茨城県鉾田町まで、西は鹿児島市まで伝わった。また、兵庫県では兵庫県南部地震阪神・淡路大震災)以来初めて震度5弱以上を観測した地震となった[18]

被害

消防庁による被害の状況[2]
都道府県 人的被害(人数) 住宅被害
死者 負傷者 全壊 半壊 一部損壊
鳥取 - 141 394棟 2494棟 14134棟
その他 - 41 41棟 607棟 4410棟
合計 - 182 435棟 3101棟 18544棟
  • JR伯備線他4線で落石、土砂崩壊、プラットホーム傾く[19]
  • 米子自動車道で、段差発生や路面亀裂等[20]
  • 鳥取県国道180号等で路肩決壊等11箇所、岡山県国道181号等で落石6箇所等[19]
  • 米子空港で滑走路亀裂(10月11日より再開[21])。
  • 中国電力 停電 17,402戸
  • 四国電力 停電 1,874戸

救助活動

  • 自衛隊:10月6日より:10月7日(最大人員340、車両50両)、18日撤収。
  • 海上保安庁:巡視船艇50隻、航空機11機、10日撤収。

法的措置

静穏化と活動域

1980年代末以降、日本海沿岸域の広域で地震活動は静穏化していたが京都府北部から鳥取県西部地域のこの地震の震源域では、M5クラスの地震が数回(1990年[24]、1991年、1997年[25])発生し1997年は群発地震の様相を呈していた[26]、日本海沿岸の静穏域の中では活発な活動が起こっていた場所である。この様な静穏域中の活動域は、応力の集中しているアスペリティとして注目されていたが、2000年 M7.3 の地震の予見までには至らなかった[27]

その他

  • 1925年の美保地震 (M5.8) と同じ震源で発生した地震である[28]

脚注

  1. ^ a b c 震度データベース検索”. www.data.jma.go.jp. 気象庁. 2023年3月5日閲覧。
  2. ^ a b 平成12年(2000年)鳥取県西部地震(確定報)” (PDF). 消防庁 (2002年10月10日). 2025年7月28日閲覧。
  3. ^ a b c d e f 鳥取地震:M7クラスの内陸型地震 発生メカニズムなど探る」『毎日新聞毎日新聞社、2000年10月6日。オリジナルの2001年4月19日時点におけるアーカイブ。2025年2月9日閲覧。
  4. ^ a b c d e 鳥取地震:「平成12年鳥取県西部地震」と命名 気象庁」『毎日新聞』毎日新聞社、2000年10月6日。オリジナルの2001年4月18日時点におけるアーカイブ。2025年2月9日閲覧。
  5. ^ 鳥取県西部地震:マグニチュード下方修正せず 気象庁長官」『毎日新聞』毎日新聞社、2000年10月19日。オリジナルの2002年8月5日時点におけるアーカイブ。2025年7月28日閲覧。
  6. ^ 鳥取・島根の2県で人口が10万人以上の都市は、鳥取県の米子市鳥取市、島根県の松江市出雲市の4市である。また他の市も鳥取県倉吉市を除いて日本海に面しており、今回の震源地から遠い。
  7. ^ 鳥取県西部地震で活かされた鳥取県の地震防災対策 (PDF)
  8. ^ a b 地震:家屋倒壊、土砂崩れ 各地に被害」『毎日新聞』毎日新聞社、2000年10月6日。オリジナルの2001年4月18日時点におけるアーカイブ。2025年2月9日閲覧。
  9. ^ 鳥取地震:1府8県で負傷者110人など被害拡大 余震続く」『毎日新聞』毎日新聞社、2000年10月7日。オリジナルの2001年2月22日時点におけるアーカイブ。2025年2月9日閲覧。
  10. ^ 鳥取県西部地震:余震続く 2千人以上が避難所で朝迎える」『毎日新聞』毎日新聞社、2000年10月9日。オリジナルの2001年4月19日時点におけるアーカイブ。2025年7月28日閲覧。
  11. ^ 鳥取県西部地震:東部の被害総額は14億4千万円 島根県集計」『毎日新聞』毎日新聞社、2000年10月9日。オリジナルの2001年6月28日時点におけるアーカイブ。2025年7月28日閲覧。
  12. ^ 鳥取県西部地震:大きな余震が発生する危険はほとんどなくなる」『毎日新聞』毎日新聞社、2000年10月16日。オリジナルの2001年6月28日時点におけるアーカイブ。2025年7月28日閲覧。
  13. ^ 2000年10月6日 鳥取県西部地震の強震動”. 防災科学技術研究所 (2000年10月6日). 2025年7月28日閲覧。
  14. ^ a b 鳥取県西部の地震活動の評価”. 地震調査研究推進本部 (2000年10月6日). 2025年8月1日閲覧。
  15. ^ 2000年鳥取県西部地震 (PDF) 日本地震学会
  16. ^ 鳥取地震:西伯町の中学校グラウンドに段差生じる」『毎日新聞』毎日新聞社、2000年10月8日。オリジナルの2001年4月17日時点におけるアーカイブ。2025年2月9日閲覧。
  17. ^ 鳥取県西部地震:地面が5・6センチ隆起=宇宙開発事業団発表」『毎日新聞』毎日新聞社、2000年10月16日。オリジナルの2000年12月8日時点におけるアーカイブ。2025年7月28日閲覧。
  18. ^ a b 鳥取地震:各地の震度=詳報」『毎日新聞』毎日新聞社、2000年10月6日。オリジナルの2001年4月19日時点におけるアーカイブ。2025年2月9日閲覧。
  19. ^ a b 鳥取地震:被災地に雨 震度5弱の余震で再び避難所に」『毎日新聞』毎日新聞社、2000年10月9日。オリジナルの2001年6月28日時点におけるアーカイブ。2025年7月28日閲覧。
  20. ^ 鳥取県西部地震:被害が広がる 負傷者は1府8県で121人に」『毎日新聞』毎日新聞社、2000年10月8日。オリジナルの2001年2月22日時点におけるアーカイブ。2025年7月28日閲覧。
  21. ^ 鳥取県西部地震:発生から1週間 約500人が避難所で過ごす」『毎日新聞』毎日新聞社、2000年10月11日。オリジナルの2001年4月18日時点におけるアーカイブ。2025年2月9日閲覧。
  22. ^ 鳥取県西部地震:全壊家屋1世帯当たり百万円を給付 国土庁」『毎日新聞』毎日新聞社、2000年10月12日。オリジナルの2001年12月27日時点におけるアーカイブ。2025年7月28日閲覧。
  23. ^ 鳥取県西部地震:深刻な悩みや不安の声が相次ぐ 毎日新聞調べ」『毎日新聞』毎日新聞社、2000年10月14日。オリジナルの2001年4月19日時点におけるアーカイブ。2025年7月28日閲覧。
  24. ^ 鳥取県西部の地震活動(1990年11月~12月)(気象庁) (PDF) 地震予知連絡会 会報 第46巻
  25. ^ 鳥取県西部の地震活動(1989年1月-1997年10月)(気象庁) (PDF) 地震予知連絡会 会報 第59巻
  26. ^ 1989~90年に引き続き鳥取県西部地域に再び発生した1997年9月4日M5.2に代表される群発的地震活動について(京大防)(鳥取大) (PDF) 地震予知連絡会 会報 第60巻
  27. ^ 吉田明夫、青木元、「大地震の前に日本海沿岸の広域に現れた地震活動の静穏化」 地学雑誌 2002年 111巻 2号 p.212-221, doi:10.5026/jgeography.111.2_212
  28. ^ 気象庁震源カタログの延伸と部分改訂 (1923年8月から1964年12月まで) (PDF)

参考文献

関連地震

外部リンク




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