平成10年台風第7号とは? わかりやすく解説

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平成10年台風第7号

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/01 07:28 UTC 版)

台風第7号(Vicki、ヴィッキー)
カテゴリー2の タイフーンSSHWS
台風第7号
発生期間 1998年9月17日 21:00
23日 9:00
寿命 5日12時間
最低気圧 960 hPa
最大風速
(日気象庁解析)
40 m/s (75 knot)
最大風速
米海軍解析)
90 knot
被害総額
死傷者数 死者18名、行方不明者1名、負傷者611名(台風第8号によるものも含む)
被害地域 フィリピン日本
プロジェクト : 気象と気候災害
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平成10年台風第7号(へいせい10ねんたいふうだい7ごう、国際名:ヴィッキー/Vicki)は、1998年(平成10年)9月フィリピンに上陸後、最盛期勢力で紀伊半島に上陸した台風である[1][2][3]

概要

進路図

1998年9月17日21時頃、南シナ海(ルソン島西海上)で台風7号発生[4]。19日にはフィリピンのルソン島に上陸。その後発達しながら南西諸島の東海上を北東方向に進み、22日13時過ぎに和歌山県御坊市付近に強い勢力で上陸した[5]。上陸直前の中心気圧は、最盛期勢力の960hPaであり、上陸後も勢力はあまり衰えなかった[6][1]。その後台風は近畿地方を北上して富山湾から日本海沿岸を進み、22日22時過ぎに山形県鶴岡市付近に再上陸[7]。そして東北地方北部を通り、23日9時頃に北海道の東海上で温帯低気圧に変わった[5][3]

この台風は、台風7号としては統計史上最も遅い日時に発生した[8]。また、9月になってようやく台風7号が発生したのはこの年のみである[8]

9月21日に台風8号、9月22日にこの台風7号と、2日連続で台風が近畿地方に上陸した[9][10]。この年の9月は、9月16日台風5号東海地方に上陸しており、年間の台風発生数が少ない割に日本への上陸数が多かった[11]。なお、台風6号台風9号は日本に接近しており、9月に発生した全ての台風が日本に接近したことになる[12][13][14][15]

記録

広い範囲で暴風を記録した。台風の移動速度が比較的速かったため、風の記録がより大きくなったと考えられる(なお、この台風と同じく9月に日本上陸した平成19年台風第9号は、対照的に上陸前の台風の移動速度が自転車並みの遅い速度であった)。

被害状況

日本

台風第8号によるものも含む。2つの台風の北上に伴って前線活動が活発となったため、台風による被害は広い範囲に及んだ[16]

  • 死者18名、行方不明者1名、負傷者611名[16]
  • 住宅全壊87棟、半壊1,121棟、一部損壊49,027棟[16]
  • 床上浸水1,757棟、床下浸水8,822棟[16]
  • 道路損壊1,310箇所、山・がけ崩れ543箇所、堤防決壊44箇所

この台風7号の被害総額は約130億円に上った[17]。中でも特色は、文化財建造物が密集する関西地方を直撃したために、文化財建造物の損壊、損傷被害が顕著であったことが大きい[2][18]奈良県で室生寺(後述)など52件(細かい事象を含めると90件近くに上る)、滋賀県で18件、京都府二条城など5件の被害が報告されている[2][18][19]。とりわけ、室生寺五重塔は近隣にあった高さ50mの杉の古木が吹き倒された折、倒れる幹に巻き込まれて屋根が損壊する被害を受けた[2][20][3]。塔の修復のため、秘仏などの寺宝を博物館で特別展示するなどして、修復費用を集めることとなった[21][22]。また、高野山奥の院参道では杉の巨木が相次いで倒れるなど、文化財損傷の主たる原因は、隣接する木々の倒伏によるものが多い(古い寺社の場合の境内には樹齢の高い老木、古木が多いために樹勢が弱っていたことも指摘されており、室生寺の場合は、樹齢650年の老杉であった[23][24][25]

その他、農業の被害も大きく、奈良県、和歌山県にまたがるの特産地は果樹の落果、樹木の枝折れなど深刻な被害を受けた[26][27]

台風通過後の24・25日には、前線の影響で高知県記録的な大雨となった[28][29]

フィリピン

9月19日に、フィリピンマニラセブ島を結ぶ定期航路「PRINCESS OF THE ORIENT」(旧さんふらわあ11)が台風の暴風雨の中を航行中に、ベルデ島水路のフォーチュン島付近で沈没し[30]、死者51人と行方不明者216人を出す海難事故が発生した。

脚注

  1. ^ a b 読売新聞』1998年9月23日 全国版 中部朝刊 社会31頁「"暴風7号"東海を暴走 見回りの78歳ら死亡 帰宅の足マヒ、駅に殺到」(読売新聞中部支社
  2. ^ a b c d 朝日新聞』1998年9月23日 朝刊 1社27頁「駆け足台風 ツメ跡深く 7号直撃で史跡などに被害 【大阪】」(朝日新聞大阪本社
  3. ^ a b c 毎日新聞』1998年9月24日 東京朝刊 1面1頁「国宝・五重塔も台なし 台風7号被害、死者9人に--警察庁まとめ」(毎日新聞東京本社
  4. ^ 『朝日新聞』1998年9月19日 夕刊 2社18頁「台風7号発生 気象庁」(朝日新聞東京本社
  5. ^ a b c d e 台風第8・7号 平成10年(1998年)9月20日~9月23日”. www.data.jma.go.jp. 2020年4月29日閲覧。
  6. ^ 『朝日新聞』1998年9月22日 夕刊 1総1頁「台風7号、近畿・四国を直撃 雨量250ミリ超も 【大阪】」(朝日新聞大阪本社)
  7. ^ 『毎日新聞』1998年9月23日 北海道朝刊 1面1頁「台風7号、けさ道東沖に」(毎日新聞北海道支社
  8. ^ a b デジタル台風:台風リスト”. agora.ex.nii.ac.jp. 2020年7月7日閲覧。
  9. ^ 『読売新聞』1998年9月22日 全国版 中部朝刊 一面1頁「台風7号、紀伊上陸も 愛知・三重で強い風雨 8号は熱低に」(読売新聞中部支社)
  10. ^ 『朝日新聞』1998年9月22日 夕刊 1社11頁「台風7号上陸で空・海、相次ぎ欠航 各地で臨時休校も 【大阪】」(朝日新聞大阪本社)
  11. ^ 『朝日新聞』1998年9月16日 夕刊 1総1頁「台風5号通勤網直撃 静岡に上陸、東日本縦断か」(朝日新聞東京本社)
  12. ^ 『読売新聞』1998年9月18日 全国版 西部夕刊 夕一面1頁「台風6号 今夜、九州南岸に接近へ」(読売新聞西部本社
  13. ^ 『読売新聞』1998年9月19日 全国版 西部夕刊 夕2社10頁「台風6号あす熱帯低気圧に 九州は強風域から抜ける」(読売新聞西部本社)
  14. ^ 『読売新聞』1998年9月30日 全国版 西部朝刊 2社30頁「台風9号が勢力を強め北上 九州が強風域に入る恐れ」(読売新聞西部本社)
  15. ^ 『読売新聞』1998年9月30日 全国版 西部夕刊 夕社会11頁「台風9号、フェリー欠航相次ぐ 九州北部に影響、関門橋は速度規制」(読売新聞西部本社)
  16. ^ a b c d 被害状況”. www.data.jma.go.jp. 防災白書. 2025年11月1日閲覧。
  17. ^ 『毎日新聞』1998年10月2日 地方版/京都 23頁「台風7号被害概況 全府で総額130億円 /京都」(毎日新聞大阪本社
  18. ^ a b 『読売新聞』1998年9月24日 全国版 大阪朝刊 一面1頁「台風7号、近畿直撃 奈良の国宝など文化財73件被害 法隆寺、春日大社でも」(読売新聞大阪本社
  19. ^ 『朝日新聞』1998年9月24日 朝刊 1総1頁「室生寺、無残 文化財75件に台風7号の被害 【大阪】」(朝日新聞大阪本社)
  20. ^ 『読売新聞』1998年9月23日 全国版 東京朝刊 2社30頁「台風7号の影響で奈良・室生寺五重塔が損傷 境内の杉の木が倒れて」(読売新聞東京本社
  21. ^ 『朝日新聞』2000年2月15日 夕刊 らうんじ3頁「修復へ つち音響く 技と心意気、再生 ルポ・室生寺五重塔」(朝日新聞東京本社)
  22. ^ 『朝日新聞』2000年7月15日 朝刊 3社会29頁「工夫の建築 室生寺五重塔、台風被害から修復完了(検証)【大阪】」(朝日新聞大阪本社)
  23. ^ 『朝日新聞』1998年9月24日 朝刊 1社31頁「文化財に台風7号の痛手 奈良・室生寺の五重塔も」(朝日新聞東京本社)
  24. ^ 『朝日新聞』1998年9月24日 朝刊 和歌山0頁「県内につめ跡深く けが29人、全半壊34戸 台風7号被害 /和歌山」(朝日新聞大阪本社)
  25. ^ 『毎日新聞』1998年9月24日 地方版/和歌山「台風7号 文化財の被害、次々と 負傷者は29人に /和歌山」(毎日新聞大阪本社)
  26. ^ 『朝日新聞』1998年9月23日 朝刊 和歌山0頁「最大瞬間風速51メートル 御坊に上陸大暴れ 台風7号 /和歌山」(朝日新聞大阪本社)
  27. ^ 『朝日新聞』1998年10月17日 朝刊 奈良0頁「葉もの野菜暴騰 台風・長雨で入荷激減 /奈良」(朝日新聞大阪本社)
  28. ^ 『朝日新聞』1998年9月25日 朝刊 高知0頁「県内各地に豪雨 床下浸水や住民避難 陸と空の交通も大混乱 /高知」(朝日新聞大阪本社)
  29. ^ 『朝日新聞』1998年9月25日 夕刊 1社17頁「高知の豪雨、4人死亡1人不明 総雨量は約900ミリ【大阪】」(朝日新聞大阪本社)
  30. ^ Sulpicio loses court case on Princess of the Orient fatality”. ABS-CBN Interactive (2008年7月4日). 2011年1月19日閲覧。

関連項目

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