尊氏の肖像とは? わかりやすく解説

尊氏の肖像

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 04:45 UTC 版)

足利尊氏」の記事における「尊氏の肖像」の解説

京都国立博物館所蔵の「騎馬武者像重要文化財)」は、京都守屋家の旧蔵だったことから、現在でも他の尊氏像と区別する必要もあって「守屋家本」とも呼ばれる。本像は江戸時代松平定信編纂の『集古十種』で、尊氏の肖像として初め紹介されその後1920年大正9年)に歴史学者黒板勝美論文の中で改め尊氏像という説を発表したことで定着した。しかし、1937年昭和12年)に美術史家谷信一早くもこの説に疑問呈しており、1968年昭和43年)にも、古文書学者の荻野三七彦尊氏像説を否定する論考発表している。それらの論拠とは、主に以下のようなのである画像上部書かれ花押は、2代将軍義詮のものである。父の画像の上に子が自らの名を記すのは、即ち親を下に見ていることになり、当時慣習からして極めて無礼な行為となるため、有り得ない出陣時の整った姿ではなく、兜のない髻の解けたざんばら髪の頭、折れた矢抜き身の状態の刀など、征夷大将軍という武将として最高位人物描いたにしてはあまりにも荒々しすぎる。 刀や馬具描かれている輪違の紋が、足利家ではなく高家家紋であり、像主は高師直もしくは子師詮、師冬である。 こうした動きがあることから、2000年代頃から学校の歴史教科書では尊氏像として掲載されなくなり、「騎馬武者像」として掲載されるとどまっている。 反面、『梅松論』における多々良浜の戦いに臨む尊氏出で立ちが本像に近く京都凱旋した尊氏がこの時の姿を画工に描かせたという記録が残る ことから、やはり尊氏像で正しいとする意見もある。『太平記』によると、尊氏後醍醐天皇叛旗翻す直前に寺に籠もって元結切り落としたといい、「騎馬武者像」の「一束切」のざんばら髪は、その後翻意して挙兵した際の姿を髣髴とさせるものではあり、その点をもって尊氏像と見なされてきたと考えられている。『太平記』では挙兵の際に味方武士たちがみ尊氏ならって元結切り落とした逸話伝えている。 鎌倉時代藤原隆信描いたとされる神護寺三像のうちの「伝平重盛像」は、平重盛描いたものと考えられてきたが、1995年美術史家米倉迪夫歴史学者黒田日出男らによって尊氏像であるとの説が提示された。すぐさま美術史家から、画風様式南北朝期に下るものではないとする反論出て論争になったが、近年総じて新説認められる傾向にある。 その他、広島県尾道市浄土寺尊氏描いた伝え束帯姿の肖像画(右最上部に掲示)が所蔵されており、京都市天龍寺にも室町時代後期描かれとされる束帯姿の絹本着色足利尊氏肖像画」が伝わっている。また、守屋家本とは異な騎馬姿の尊氏像が神奈川県立歴史博物館にあり、「征夷大将軍源朝臣尊氏卿」と明記され江戸時代後期肖像画現存している。 2017年栃木県立博物館研究員らによって、尊氏描いたものとされる肖像画発見され個人絹本着色束帯姿の肖像画が同博物館公開された。この肖像画は「天神菅原道真)絵賛」として伝来しいたもので、原本ではなく室町時代中期複製されたものである推測される。同肖像画には臨済宗大覚寺派の僧伯英徳儁による讃が付され、そこには尊氏を指す「長寿寺殿」の業績記されている。 江戸時代描かれ錦絵には、歌川国芳の「太平記兵庫合戦」(兵庫福海寺尊氏探す白藤七郎)、歌川芳虎の「太平記合戦図」(尊氏兵庫福海寺避難する図)、橋本周延の「足利尊氏兵庫合戦図」(尊氏兵庫福海寺避難する図)等がある。 尊氏木像は、大分県国東市安国寺重要文化財)のものが最も古い。面貌表現写実的理想化少なく尊氏生前死後間もなく造像されたと見られる尊氏木像というと足利氏菩提寺である京都市北区等持院のものがよく知られている。こちらは体部表現にやや時代が下る造形見られるものの、頭部安国寺木像浄土寺肖像共通する図様造られており、中世下らない時期作品考えられる。他には、静岡県静岡市清見寺文明17年1485年以前の作)、京都市右京区天龍寺16世紀の作)、栃木県さくら市龍光寺寛文6年1666年)の再興像)、神奈川県鎌倉市長寿寺元禄2年1689年)の再興像)、栃木県足利市鑁阿寺江戸時代19世紀の作)、同市の善徳寺同県真岡市能仁寺などに所蔵されている。また、現代になって作られ銅像足利市鑁阿寺参道京都府綾部市安国寺町設置されている。

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