堆積作用
【英】: sedimentation
主として削剥{さくはく}により既存の岩石から分離した岩石の粒子、一部には火山から噴出した岩漿性{がんしょうせい}の放出物、さらに一部には生物の遺がいが水または空気の運動あるいは単に重力によって移転し、別の場所に至って水圏または気圏の下底に静止することにより、また既存の岩石、火山放出物または生物の遺がいからの水中への溶出物が水圏の下底に沈殿静止することにより、さらにまた水底に定着する生物の遺がいがその場に累積することにより、それらの物質が集積する過程をいう。それらの物質またはその集積したものを堆積物という(→堆積盆地) |

堆積


堆積(たいせき、英: sedimentation、deposition)とは、堆積物(地層)を形成するに至るまでの過程の総称をいう[1]。
概要
常温常圧の下で、既存の岩石の風化・侵食によって生成された砕屑物(粘土・シルト・砂・礫)や、火山砕屑物、生物遺骸などが、流水・氷河・風、火山活動などの作用と重さによりふるい分けられて集積される過程、及び化学的作用により水溶液中から沈殿し集積される過程を示す。
集積した構成物が岩石の風化・侵食などから、分解、運搬、ふるい分けられて集積される作用を堆積作用という。この作用には機械的作用によるものの他、化学的作用(沈積)や、生物学的作用によるものを含み、それぞれ多様な堆積物の層(地層)を形成する[1]。
火山
火山のはたらきでできた地層は、火山から吹き出た火山堆積物が堆積してできる。
時期 | 山名 | 影響 |
---|---|---|
2011/01/26 | 新燃岳 | 道路に火山灰が積もるなどの深刻な被害が出た。[2] |
1977/05/02 | 桜島 | 堆積物によって公共交通に破損などの被害が出た。[3] |
火山堆積物
(詳しくは「火山砕屑物」を参照)
大小の区別
成分の区別
堆積作用から固結まで
流水作用による堆積は、主に河川及び波や沿岸流、潮流によって成される。河川が、それまで河床勾配の急な山岳部から勾配の緩やかな平野部にでる箇所や、湖沼、海洋に流れ込む箇所においては、流速や流量が減じて浮力が低下し、それまで運搬されていた砂礫が重力によって流れから取り残され、ふるい分けられて集積し、扇状地や三角州等の堆積地形を形成する。沿岸流や潮流による堆積の例として、砂嘴や砂浜があげられる。また、流水による堆積の場合、堆積環境によっては漣痕や斜交層理などの堆積構造が形成され、堆積環境の推定や地層の上下判定に用いられる。
堆積作用は、必ずしも流水の作用を必要とするものではない。氷河や、風によっても分解、運搬、集積は行われ、それぞれ特徴的な堆積物を形成する(氷成堆積物、風成層)。
上記のような砕屑物の他、岩塩や石膏、苦灰岩のように、蒸発等によって湖水等の水溶液中で飽和するなど、化学的過程を経て沈殿したものも堆積物として扱われる。
堆積物が続成作用を受け、固結して形成されたものが堆積岩である。主な堆積岩として、礫岩、砂岩、泥岩などがある。
多くの鉄鉱石を産出している縞状鉄鉱床は、かつて海洋中に大量に溶解していた鉄が酸化鉄になり沈殿したものであり、その大半が生物学的な堆積(藍藻によると考えられている)によってできたと言われている。他に生物遺骸が集積し堆積したものとしては、チャート(珪藻等、珪質微化石が起源)や石灰岩(珊瑚等の石灰質殻を持つ生物が起源)が代表的なものとしてあげられる。
泥炭は草本・樹木類やコケ類などの植物遺骸が還元状態で堆積したもので、現在も主に寒冷な地域の湿地などで形成され続けているのが観察できる。
石炭は潟や湖沼などの水中に植物遺骸などが堆積、泥炭化した状態で堆積物中に埋没し、さらに熱や圧力等の作用によって変性する(石炭化作用という)ことで形成されたもの、さらに石油や天然ガスは堆積した生物遺骸が非常に長期に渡って石炭同様に変性を受けて炭化水素に分化したものであるとする説が主流となっている。
堆積によってできた地形
関連項目
脚注
- ^ a b 松井・志岐 1996, p. 743.
- ^ “2011 年霧島山新燃岳の噴火活動福岡管区気象台*・鹿児島地方気象台”. 2024年7月13日閲覧。
- ^ “桜島 有史以降の火山活動”. 2024年7月13日閲覧。
参考文献
- 砕屑性堆積物研究会編 『堆積物の研究法 : 礫岩・砂岩・泥岩』 地学団体研究会〈地学双書〉、1983年。
- 松井愈・志岐常正 著「宙水」、地学団体研究会新版地学事典編集委員会 編 編『地学事典』(新版)平凡社、1996年、830頁。ISBN 4-582-11506-3。
- 堆積作用とは - コトバンク (kotobank.jp)
外部リンク
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堆積作用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 05:32 UTC 版)
詳細は「堆積」を参照 川が運搬する粘土や砂礫は、勾配の緩やかな下流付近で川の流速が弱くなることにより、その粒径によってふるい分けられながら、徐々に川底や河岸に集積され、堆積物となる。このような川の作用を堆積作用と呼ぶ。 山岳地帯から平野部に河川が流出する地点においては、山岳地帯で流れ込んだ大量の土砂が扇型に広がって堆積し、扇状地を形成する。特に中流域において、地殻変動により地面が隆起した場合、河川が下刻してそれまでの河岸平野を高原上に取り残してしまう場合がある。これは河岸段丘と呼ばれ、段丘という名の通り河道に沿っていくつかの段をなすことが多い。流れのうち、緩やかでよどみがあり深い地点は淵と、浅く急流となっている地点は瀬と呼ばれる。また、堆積物が川の中央部にたまって陸地となることがあり、これを中州という。河川が運んできた堆積物によって河川の下流部には広い平野が形成されることが多く、これを沖積平野と呼ぶ。後述の氾濫原や三角州も、沖積平野の一部である。また、山岳部においても勾配の緩やかな地点においては上流からの土砂が堆積し、しばしば谷底平野が形成される。 河川の増水時に河道から水が氾濫する一帯を氾濫原と呼び、水が得やすく土地が肥沃なため古くから農業に利用されてきたものの、河川が増水した場合には当然本来なら水没してしまうため、それを抑えるために様々な治水が行われてきた地域でもある。氾濫原の河道のそばには河川が運んできた土砂が堆積して微高地をなすことが多く、これを自然堤防と呼ぶ。これに対し、その背後に広がる低地は後背湿地と呼ばれる。なお、人類が堤防を建設して河道を固定した場合、上流から流れてきた土砂は河道の中に限定して堆積するため、河道自体が周辺の平野よりも高くなってしまう場合がある。これを天井川と呼ぶ。特に下流部においては河道は蛇行することも多いが、洪水などでその流れがショートカットされた場合、残された旧河道にはしばしば河道の形の湖が形成される。これを三日月湖と言い、自然の流路変更のほか人間による河川改修によって流路が変更された場合などにおいても形成される。 河口部には上流から流れてきた砂やシルトなどの堆積物が集まりやすく、大型の河川では三角州を形成することが多い。三角州といっても、堆積物の量や注ぎ込む海の状況によって様々な形状があり、海流が弱い場合はミシシッピ川のように海に長く張り出す形を取り、また強い場合はニジェール川のように、河口部では海岸線が膨らむものの直線的な海岸線となる。またガンジス川のように潮汐の影響が強い場合は、三角州のそれぞれの洲は沖合に細長く、また三角州全体では扇形に幅広く広がる。三角州は上流からの肥沃な土が堆積しており、また河川の水も豊富なため、各地で農業開発が進められ、大穀倉地帯となっていることが多い。ガンジス川やメコン川、ナイル川のデルタ地帯がその例である。
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