パレスチナ問題への各国の対応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 06:09 UTC 版)
「パレスチナ問題」の記事における「パレスチナ問題への各国の対応」の解説
アメリカ合衆国はユダヤ人のロビー活動もあって、イスラエルと極めて関係が深く、国連安保理でイスラエル非難決議案が出されると、ほぼ確実に拒否権を発動している。民間レベルでも、2010年2月のギャラップ社の世論調査によれば、イスラエルへの好感度は67%で、調査した20ヶ国・地域中上から5番目(上からカナダ、イギリス、ドイツ、日本の順)と比較的高い。逆にパレスチナ自治区への好感度は20%で下から4番目(下からイラン、北朝鮮、アフガニスタンの順)と低く、米国は親イスラエル・反パレスチナの国民感情を示している。また、同じくギャラップ社が2010年2月に中東問題に関して行った世論調査では、米国民のイスラエル支持率は63%、パレスチナ支持率は15%を記録している。逆に英BBCと読売新聞社が22カ国で「良い影響を及ぼしている国」と「悪い影響を及ぼしている国」を調査した結果、悪い影響を及ぼしている国では、1位イラン55%、2位のパキスタン51%に続き、3位に北朝鮮とイスラエルで50%となり世界的には否定的に捉えられている事が判明した。 また、軍事援助も継続して行っている。2007年7月29日にイスラエルのオルメルト首相が明かしたところによると、イスラエルは米国に対し、従来の25%増となる、10年間で300億ドル(約3兆5000億円)の軍事援助を取り付けた。従来は年間24億ドル(約2,800億円)(AFP通信 「米政府、イスラエルに10年で300億ドルの軍事支援に合意 * 2007年07月29日 21:35 発信地:エルサレム/イスラエル」)。この金額は、イスラエルの軍事費の2割以上に相当する。2016年には、アメリカはイスラエルに対し、2019年 - 2028年の10年間で380億ドル(約3兆9000億円)の軍事援助を行うことで同意した。 これは無償援助のみの額で、有償での借款や兵器の売買などを含めると、米国による出資はさらに巨額になる。 また、英オックスフォード大学の講師サラ・ヤエル・ハーシュホーンによると、2015年現在、ユダヤ人入植地の入植者の15%はアメリカ合衆国国籍であるという。 ドイツは、ナチスによるユダヤ人大虐殺(ホロコースト)の負い目もあって、イスラエルの全面支援を表明している。その他の欧州諸国は、パレスチナは未承認だが、米独に比べるとイスラエルに批判的である。アラブ諸国はパレスチナへの援助を削減しており、米国に至っては全く打ち切ったので、相対的に欧州諸国によるパレスチナ援助の比重が増している。 アジア、アフリカ諸国は、大部分がパレスチナを承認している。中国はパレスチナを承認する一方、2007年1月10日 - 11日には胡錦涛国家主席、温家宝首相がイスラエルのオルメルト首相と会談するなど、両にらみの態度を取っている。中南米諸国は、2010年12月3日にブラジルが承認したのを皮切りに、承認国が大勢を占めるようになった。 イスラエルを除く中東アジア・アフリカ諸国は、従来は「パレスチナの大義」を旗印にパレスチナを支援してきた。しかしエジプト、ヨルダンを皮切りに、2020年にはアラブ首長国連邦、バーレーン、モロッコもイスラエルを承認し、サウジアラビアがパレスチナへの批判を強めるなど、アラブ諸国は徐々にイスラエルに接近している。しかし、アラブ諸国の国民には、イスラエルへの反発が根強く存在するため、政府レベルの接近と食い違いが生じている。一方、非アラブ諸国であるシリア、イラン、トルコはイスラエルと対立し、パレスチナ支援を続ける一方、アラブ諸国にとってはイスラエルに代わって主敵となって来ている。 日本は、パレスチナは未承認であり、現在は将来の承認を予定した自治区として扱っている。パレスチナに物資の援助は行うが、ハマースへの対応は欧米に歩調を合わせている。日本はハマースとの公的な接触を禁じており、援助など実務者レベルの協議に必要な、最小限の接触に留まっている。また、日本の援助で建てられたパレスチナの施設が、イスラエルにしばしば破壊されているが、これについてイスラエルに抗議は行っていない。2008年2月25日、イスラエルのオルメルト首相は来日し、2月27日、福田康夫首相と会談した。福田首相は、「平和と繁栄の回廊」構想の具体化を急ぐ考えを改めて表明し、会談後両国の関係強化などを盛り込んだ共同声明を発表した。また、イスラエルが北朝鮮によるシリア、イランへの軍事協力を示す情報を提供することも分かった。しかし、イスラエルのガザ地区などへの攻撃については、日本は何も触れなかった。翌2月28日、オルメルト首相は、日本の記者クラブの講演で「北朝鮮とイラン、シリア、ヒズボラ、ハマースは悪の枢軸だ」と述べた。北朝鮮はこの動きに反発し、「イスラエルこそ危険な反動勢力」と主張した。国際協力機構によると、日本は1993年のオスロ合意以降、2018年12月までに約19億ドルのパレスチナ支援を実施している。 報道については、双方が相手に有利な偏向報道を行っていると主張している。2008年3月12日、イスラエルはカタールの放送局アルジャジーラの取材を、ハマース偏向報道を理由に拒否した。さらに、アルジャジーラ本社やカタール政府に懸念を表明する文書の送付や、アルジャジーラ記者のビザ発給制限も検討している。 当事者の宣伝も活発で、インターネットでも互いの関連サイトが多数存在する(イスラエルの広報宣伝活動は、Hasbara(説明)と称している)。2008年12月29日には、イスラエル国防軍によるYouTubeチャンネルが設けられた。
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