オペラ、楽劇作品
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「リヒャルト・ワーグナー」の記事における「オペラ、楽劇作品」の解説
主なオペラ、楽劇作品: 『さまよえるオランダ人』 (Der fliegende Holländer )3幕歌劇、1842年完成。ワーグナーの遺志により1幕形式で上演される。救済のない荒々しい音楽の初稿と、救済のある幾分穏やかな音楽の改訂稿がある。 『タンホイザー』 (Tannhäuser und der Sängerkrieg auf Wartburg 『タンホイザーとワルトブルクの歌合戦』)3幕。主人公のミンネゼンガー(恋愛歌人) タンホイザーと、ワルトブルク領主の姪 エリーザベト(Elisabeth )との愛の物語。 1845年完成、初演ドレスデン。初版の他に改訂を経た「ドレスデン版」や、1861年にパリオペラ座で上演されたフランス語による「パリ版」とそのドイツ語版、更に事実上の最終稿である「ウィーン版」などがあり、それぞれ曲の構成などが微妙に異なっている。今日では、序曲が管弦楽作品として単独で、第2幕の一場面が管弦楽などに編曲され「タンホイザー行進曲」などとして演奏される。また、第3幕で歌われる「ああ、我が優しい夕星よ」は、バリトン独唱の曲として「夕星の歌」の名で親しまれる。 『ローエングリン』 (Lohengrin )3幕の歌劇。1848年完成、1850年にヴァイマルで初演。初稿には「グラール語り」が入っているが普通は演奏されない。白鳥の騎士ローエングリンが窮地に追い込まれたブラバント王女エルザを救って結婚するが、のちに自らの素性を明かして去ってゆくという筋書き。前記バイエルン国王ルードヴィヒ2世が主人公ローエングリンに憧れ、自らをローエングリンと空想し、逃亡中の作者ワーグナーをエルザとみなして保護した。 音楽的には「第1幕への前奏曲(チャップリンの「独裁者」で有名)」「第3幕への前奏曲」「婚礼の合唱」がとくに知られる。なお、本作におけるライトモティーフ「質問禁止の動機」とチャイコフスキーのバレエ『白鳥の湖』(1877年)の旋律的に延長された主題に、類似性が指摘されている。 『トリスタンとイゾルデ』 (Tristan und Isolde )1857年から1859年にかけて作曲、1865年6月10日ミュンヘンの宮廷歌劇場で初演された3幕の楽劇。「楽劇」は世称であり、実際はワーグナー唯一のジャンル無銘作品。トリスタンはコーンウォール国王マルケの甥で、王妃となるイゾルデを迎えに行くが、その帰路、彼女の媚薬により2人は愛し合うようになり、最後は悲劇で終わる。ヴェーゼンドンク夫人マティルデとの悲恋が投影されていると言われる。音楽的には半音階和法を徹底し、前奏曲、第2幕の愛の二重唱、最終場面の「イゾルデの愛の死」がよく知られる。 また、本楽曲は音楽史を変え、調性崩壊の引き金になったトリスタン和音が使われている曲としても有名。 『ニュルンベルクのマイスタージンガー』 (Die Meistersinger von Nürnberg )1867年完成、3幕楽劇。実在のニュルンベルクの詩人ハンス・ザックスを主人公とした喜劇調の楽劇だが、内容的にはショーペンハウアーの哲学が色濃く反映されている。前作トリスタンとイゾルデとは異なり、音楽的には全音階和法を展開し、ライトモティーフの使用も円熟している。「第1幕への前奏曲」「愛の洗礼式」「ヨハネ祭の場面」が有名。 『ニーベルングの指環』 (Der Ring des Nibelungen )4つの独立した楽劇からなる連作で、4夜にわたって上演される壮大な作品。ワーグナー自身の意図は4夜での通し上演だが、演奏家・聴衆の疲労を考慮し、最近はバイロイトでも2日の休みを入れ6日間で、一般の歌劇場では更に間隔をあけて上演される。実質的に音楽史上最大規模の作品。 ワーグナー自身、本作品群をみずからのライフワークと定め、26年間にわたって作曲し続けた。その間に作曲を休止して『トリスタン』や『マイスタージンガー』を作曲している。 内容的には、それを手にした者は世界を支配できるという「ニーベルングの指環」をめぐり、小人族(アルベリッヒほかニーベルング族)やヴァルハラの神々(ヴォータンほか)、巨人族(ファーフナーほか)、人間(英雄ジークフリートほか)が争うというもの。『ヴァルキューレ』第3幕冒頭における「ワルキューレの騎行」が音楽的に有名。序夜『ラインの黄金』 (Das Rheingold ) 第1夜『ヴァルキューレ』 (Die Walküre ) 第2夜『ジークフリート』 (Siegfried ) 第3夜『神々の黄昏』 (Götterdämmerung ) 『パルジファル』 (Parsifal)3幕の神聖舞台祝典劇でワーグナーの楽劇では最も重々しく荘厳であり、初演に際しては全幕の拍手を禁止した。現在でもウィーンやバイロイトでは、第1幕の終わりで拍手をしてはならない。 本作はキリスト教の救済思想が色濃く反映されており、これによってニーチェは最終的にワーグナーと決別した。 なおライトモティーフ「聖杯の動機」は、古いコラール旋律「ドレスデン・アーメン」をそのままドミナントまで使用しており、この旋律はメンデルスゾーンの交響曲第5番『宗教改革』の冒頭でも使用されている。音楽的には「聖杯行進曲」「花の乙女たちの踊り」「聖金曜日の奇跡」が有名。 その他の舞台作品: オペラ: 婚礼 WWV.31(2つの断片のみ現存) 妖精 WWV.32 恋愛禁制、またはパレルモの修道女 WWV.38 貴き花嫁 WWV.40(未完)この作品は台本のみで作曲はしなかったが、ボヘミアの作曲家ヤン・ベドルジフ・キットル(ヨハン・フリードリヒ・キットル)が歌劇『ビアンカとジュゼッペ、あるいはニースに攻め寄せるフランス軍』として完成させた。 リエンツィ、最後の護民官 WWV.49 サラセンの女 WWV.66(未完) ファールの鉱山 WWV.67(未完) フリードリヒ1世 WWV.76(未完) ナザレのイエス WWV.80(未完) アキレウス WWV.81(未完) 鍛冶屋のヴィーラント WWV.82(未完) 勝利者たち WWV.89(未完) 劇付随音楽: ロイバルト WWV.1(未完) 新しい年1835年を迎えて WWV.36 プロイセンにおける異教徒の最後の陰謀 WWV.41(断片) その他: 牧歌劇 WWV.6(未完) 喜歌劇 女の浅知恵に勝る男の知恵 WWV.48(断片) 1幕の喜劇 WWV.100(未完) 喜劇 降伏 WWV.102(未完)
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