待ち行列の通信への応用とは? わかりやすく解説

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待ち行列の通信への応用

読み方まちぎょうれつのつうしんへのおうよう
【英】:applications of queueing theory to communication

概要

望ましい情報通信ネットワーク構築するには, 方式, 構成, 品質, コスト等の関係を定量的評価分析する必要がある. 需要(トラヒック)と供給(設備数, 処理能力等)の関係により, ユーザ感じ通信品質に満足/不満足生じる. 特に需要時間的, 空間的に確率的に変動するものであり, 待ち行列理論必須である. 電話出現とともに上記評価分析開始され, さらに情報通信発展待ち行列理論研究促進した.

詳説

はじめに 1878年電話機発明からほどなくして, 電話交換設備に関して通信トラヒック面からの検討始められた. その後, デンマーク電話会社技師 アーラン(A. K. Erlang)により体系的に研究された. これが待ち行列理論始まりといわれる. このように待ち行列理論情報通信ネットワーク進展革新とともに発展してきた [1]. 通信網において接続される単位, すなわち電話網における通話パケット網におけるパケット等はトラヒックよばれる. トラヒック発生継続時間確率的に変動しており, 通信網においてそれを運ぶための回線, 交換機あるいはコンピュータなどの設備を, 大多数利用者満足できるサービス品質のもとでシステム設計するための理論通信トラヒック理論という. 待ち行列理論通信への応用とはすなわち通信トラヒック理論そのものである [2] [3].

電話交換, 電話網, ディジタル網への応用 1965年頃から交換機制御系蓄積プログラム制御となり, 処理能力評価あるいは処理能力向上させる方式考案大きな課題であった. リアルタイム性要求される交換機特有の周期処理スケジュール方式に関して, 優先クラスごとの平均遅延時間近似式求められた [4]. ISDN (サービス総合ディジタル網) では, 性質異なトラヒック同一設備に加わる. このトラヒック多元トラヒックとよび, マルチメディア通信網においてはさらに各所出現する. 多元トラヒック処理方法には即時式/待時式, 優先権待ち行列 (回線留保を含む) 等がある. パケット網や計算機随所バッファ設置しており, 待時式処理が基本となる. これらを評価・分析するモデルとして待ち行列ネットワークが有効である.


パケット網, データ網への応用 パケット網については, 1970年頃に, 米国インターネットルーツであるARPA網が活発に研究・開発された. ルーチング方式ウィンドウ制御, ACK返送方式に関して, 遅延時間や処理量の観点から多く研究なされた. データ通信LANに関するトラヒック研究活発に展開された [5].

 CSMA/CD方式対す平衡状態仮定した理論解析, ポーリング方式に関するモデル解析およびLAN性能評価への応用, ALOHAシステム解析等がなされた.


ATM方式への応用 マルチメディア通信対す通信方式として, 1980年代初め, ATM (AsynchronousTransfer Mode)方式考案された. ATM方式では, 情報セルという固定長情報単位分割されて, 網内を流れる. セル待ち行列理論の客そのものであり, ATM方式検討には待ち行列理論必須である [6]. 当初, セルヘッダによるハードウェアルーチングが注目され, バッファ設置形式含めて通話路網が多数研究された. ビデオ情報のセルストリームはバースト的であるということで, トラヒック入力モデル活発に研究された. さらに, LAN長時間のトラヒックストリームが統計的に分析され, 長時間依存性, 自己相似性指摘されている [7]. ATM方式のサービスカテゴリーとして, CBR (Constant Bit Rate), VBR (VariableBit Rate)等が提案されその標準化なされた. 並行して, セル統計的多重効果に関する実に多く研究がなされ, トラヒック制御として, コネクション受付制御使用パラメータ制御活発に研究された [8].


移動通信網への応用 1980年代初頭自動車電話サービス開始され, 1993年ディジタル方式提供され始め, 1990年代後半急速に普及している. 移動通信方式では, 有限無線周波数をいかに有効活用するかが最も重要であり, トラヒック理論が非常に有効な分野である. 電波強度の関係と周波数繰り返して使用するため, 地域比較小さなゾーン分けている. そこで無線チャネル割り当て法の研究が必要となる. また, ユーザ移動のため, 位置登録信号, 通話チャネル切り替え, 一斉呼び出し等の信号使用される. これら運ぶ制御チャネル動作分析に関してトラヒック理論使える [9].


インターネットへの応用 爆発的に成長しているインターネットは待時式処理が基本であり, その評価分析には待ち行列理論利用できる. たとえば, WWW画像データ取込む大きなデータが動く. これはテキスト情報情報量比較すると数以上も大きい. WWW発生間隔情報量統計的分析ベースに, 待ち行列理論利用して応答時間等が評価できる.



参考文献

[1] 高橋幸雄, 「待ち行列研究変遷」, 『オペレーションズ・リサーチ』, 43 (1998), 495-502.

[2] 秋丸春夫, 川島幸之助, 『情報通信トラヒック』, 電気通信協会, 1990.

[3] 村田正幸, 宮原秀夫, 「通信トラヒック理論とその応用[I]~[VII]」, 『電子情報通信学会誌』, 77 (1994), 968-975, 1043-1051, 1249-1255, 78 (1995). 85-90, 195-202, 264-270, 482-488.

[4] 藤木正也, 「トラヒック理論応用 5. 交換機制御系への応用」, 『電子通信学会誌』, 64 (1981), 50-58.

[5] 秋山稔, 川島幸之助, 木村丈治, 『LANシステム設計』, オーム社, 1989.

[6] 川島幸之助, 町原文明, 高橋敬隆, 斎藤洋, 『通信トラヒック理論の基礎とマルチメディア通信網』, 電子情報通信学会, 1995.

[7] 小沢利久, 「いろいろな入力過程モデル」, 『オペレーションズ・リサーチ』, 43 (1998), 680-686.

[8] 滝根哲哉, 村田正幸, 「通信網における待ち行列 -理論応用課題-」, 『オペレーションズ・リサーチ』, 43 (1998), 264-271.

[9] Davide Grillo, Ronald A. Skoog, Stanley Chia and Kin K. Leung, "Teletraffic Engineering for Mobile Personal Communications in ITU-T Work: The Need to Match Practice and Theory," IEEE Personal Communications Magazine, 5 (1998), 38-58.



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