『徐霞客遊記』とは? わかりやすく解説

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『徐霞客遊記』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 14:48 UTC 版)

徐宏祖」の記事における「『徐霞客遊記』」の解説

客は生涯旅行記綴った。これが後世の人によってまとめられたものが『徐霞客遊記(游記)』である。 旅先綴った日記帰郷後に編集したとされる17篇の「名山日記」と逝去後成立した西南日記」をまとめたものが、親族とみられる徐鎮によって清の乾隆41年1776年)にはじめて刊行された『徐霞客遊記』(乾隆刊本)である。これ以降、この乾隆刊本翻刻なされるが、20世紀丁文江校勘加え中華民国17年1928年)に改めて『徐霞客遊記』を刊行、これが端緒となり1940年代学術的な研究広がった1980年には、上海古籍出版社から徐霞客訪れた名勝写真絵図などを含む校注本が刊行されている。 明末動乱の中で客の日記大部分散逸し、現在伝わっている抄本全体3分の1程度と言われているが、なおも60万余字に及ぶ大部である。その足跡は、現在の江蘇山東河北山西陝西河南浙江安徽福建広東江西湖北湖南広西貴州雲南16省に及んでいる。 日記には、景勝言うに及ばず洞窟をはじめ、奇岩怪石動物草木といった自然の風物記述史実人物の論評危険に遭遇した経験、さらに物価高低飲食のような日常的ことまで様々描かれている。中でももっとも特徴的なのは地形記述であり、山の高低河川大小、距離や方向事細かに書き記している。日記その日のうちに記すこともあれば、数日間まとめて書くこともしばしばあったが、情報の詳しさからしてその場その場メモ取っていたもの考えられる。 『遊記』の記述きわめて詳細かつ合理的で、貴地方に多く見られる石灰岩地帯の円窪地落水洞・地下水侵食沖積作用岩石特徴火山現象変化に富む植生記述などは科学的に高く評価されている。イギリス中国科学史家のジョゼフ・ニーダムはこれを称えて、「彼の旅行記17世紀学者書いたものでなく、20世紀野外観察家が書いた考察記録のようである」と述べている。とりわけカルスト地形鍾乳洞記述については、西洋初めてこれらを体系的科学的に記録したアタナシウス・キルヒャーやヴァルヴァソル(英語版)のそれに数十先んじており、世界的な洞穴学の祖と見なすことができる。その鍾乳石形成要因などに関する見解多く現代科学原理符合する。 彼はまた水脈起源なかんずく長江源流の探索にも力を入れており、日記付属する数篇の散文のなかに論考溯江紀源」を著している。黄河長江比べて水量少ないにもかかわらず過去多く地理書長江水源近くに、黄河水源遠く置いていることに疑問覚えた彼は、「岷山 江を導く」という『書経』禹貢以来謬説正して、その水源金沙江にあることを突き止めた。 唐錫仁ら主編の『中国科学技術史 地学巻』(2000年)では、『本草綱目』の李時珍、『楽律全書』の朱載堉、『幾何原本』『農政全書』の徐光啓、『天工開物』の宋応星ならべて徐霞客を「当時五大科学家」と評する客が生きた時代は、西洋からキリスト教宣教師通じて中国自然科学伝来した時期に当たり、彼自身利瑪竇の『坤輿万国全図』や艾儒略の『職方外紀(英語版)』などに影響受けた可能性がある。彼の日記また、宣教師衛匡国が『中国新図志』を編纂する際の史料にもなった。 徐霞客士林に名を成さなかったため、1641年逝去したのちしばらくは、彼の日記江南文人の間でのみ読み継がれていた。清初文壇領袖だった銭謙益は、彼の伝を記したが、その日記を見ることはできなかった。客の死から135年経った1776年乾隆41年)、子孫の徐鎮がこれを刊行し1808年嘉慶13年)には江陰蔵書名門廷甲が復刊した。徐霞客旅行記保存伝播においては江陰郷党ネットワーク重要な役割果たした。 徐鎮の刊行本は「乾隆本」、乾隆本の校訂にもとづく氏の復刊は「甲本」の名で知られる1928年丁文江甲本に注点を施したうえで、年譜晴山堂帖」と路線図36図を加えて刊行し以降依拠すべきテクストとされた。しかしのちに初期抄本である「季会明本」と「徐建極本」が発見され甲本相補可能な点のあることが分かり、これらが1980年に褚紹唐・呉応寿の手によって整理復刊され、今日まで底本となっている。

※この「『徐霞客遊記』」の解説は、「徐宏祖」の解説の一部です。
「『徐霞客遊記』」を含む「徐宏祖」の記事については、「徐宏祖」の概要を参照ください。

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