Scherzo h-Moll Op.20 CT197とは? わかりやすく解説

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ショパン:スケルツォ第1番 ロ短調

英語表記/番号出版情報
ショパンスケルツォ第1番 ロ短調Scherzo h-Moll Op.20 CT197作曲年: ca.1835年  出版年1835年  初版出版地/出版社: Breitkopf & Härtel  献呈先: T. Albrecht

作品解説

2008年7月 執筆者: 朝山 奈津子

 ショパンピアノ曲用いたスタイル観察する方法は幾通りもあるが、抒情的なものと物語的なもの、という分類がひとつ可能だろう前者の代表は《ノクターン》、《マズルカ》であり、後者典型が《バラード》と《スケルツォ》である。
 抒情的な構成において各フレーズや音型は羅列的で、その連結きわめて緩やかであるのに対し物語的な構成では、1曲の中にいわば起承転結感じることができる。なぜ明確なドラマ性が生じるかといえば、まず、和声進行明解で、とりわけドミナントトニック(転から結へ進む部分)の定型がよく守られるからである。また、動機変奏転回反復拡張などの手法を用いて発展することもあり、ヴィーン古典派ソナタのような労作はなされなくとも、複数主題複雑に組み合わされて曲が作られている。
 つまり、《バラード》、《スケルツォ》、《舟歌》、《ボレロ》など物語構成を持つ作品では、ダイナミックドラマティックな、始まりから終わり必然をもって突き進むような音楽的時間生み出されるのであり、こうした要素鑑賞上のポイントとなっている。(蛇足ながら抒情的な作品では、わずかずつ変容しながら留まり続け戻り進みそれほど明確でない、いわば音楽的空間中に鑑賞者の耳を遊ばせることになる。)
 さて、では、各4曲が残されている《バラード》および《スケルツォ》の違いはどこにあるのか。
 これらがジャンルとしてショパン創作の中で隣接していることは、音楽見れば何より明らかである。しかも、両ジャンル形式から明確に区別することはほとんどできないように思われる。ひとつには、これがショパン固有のジャンルであるからで、それぞれ由来する思われるジャンル伝統調べても、両者結びつけるものは出てこない。しかし、音楽外形からは区別できなくとも、それぞれの音楽内容、いわば物語の内容はやや異なっている。
スケルツォ》はイタリア語で「冗談」を意味し従来簡明な形式で明るく軽く小規模な曲を指したベートーヴェンメヌエット代えてソナタ第3楽章取り入れた時も、やはり極めて急速でユーモア富んだ性格与えられた。ショパンの《スケルツォ》は、一見するとこうした伝統にまったく反し暗く深刻なうえに大規模である。だが、《バラード》と比べてみると、《スケルツォ》がいかにユーモア内包しているかがよく判る4つの《スケルツォにはいずれも、きわめて急速でレッジェーロ動機がひとつならず登場し随所で「合いの手」を入れている。また、各部激烈なまでの音量コントラスト指定されている。
 こうした手法が《バラード》にはほとんどない。各動機、各音は前後しがらみ囚われており、逸脱許されない沈鬱主題次々と現われ、それらは鬱積し怒濤をなし、ついには破滅的な終末迎える。《スケルツォ》が軽妙な音型や滑稽なまでのコントラストでこの種のストレス解消するのとは、対照的である。
 なお、《バラード》4曲はすべて複合2拍子、《スケルツォ》は3拍子書かれており、これが唯一の外形的な特徴といえなくもない。が、《スケルツォ》は全篇通じてほとんどが2小節で1楽句作るため、やはり2拍子強烈な推進力内包している。


スケルツォはいずれもA-B-Aの形式をとる。これはハイドンベートーヴェン用いたメヌエット楽章代替としてのスケルツォ踏襲している。しかし、A部分には2つ対照的な主題現わること、A部分後半前半部分のほぼ完全な反復となっていることから、ソナタ形式志向することが見て取れる。さらに、ストレッタを含む華々しいコーダが曲の規模をさらに増し格調高めている。
 このようにみると、ショパンの《スケルツォ》は、ベートーヴェン完成させたピアノ・ソナタ第3楽章格式継ぎ、これを敷衍したもの考えることもできる一方自身の《ピアノ・ソナタ第2番および第3番においてはヴィーン古典派伝統から一歩踏み出しスケルツォ第2楽章置いた。特に第2番Op.35では、複数主題を持つ規模大きなスケルツォ用いられている。ショパンはおそらく、キャラクターピースとして《スケルツォ》を書きそのように命名したのではない。むしろ、彼自身ソナタへの布石だったのである

 第1番ヴィーン時代のごく初期書かれ作品のひとつである。
 ショパン1829年学生仲間とともにひと夏をウィーン過ごし自作演奏して喝采浴びた帰国してからは、彼の個性的な作品いまひとつ反応の鈍いワルシャワよりも、帝都ヴィーンでの本格的成功夢見るようになり、2曲の《ピアノ協奏曲》ほか大規模な作品準備取りかかったドイツの政治情勢のため出発何度延期され1830年11月にようやく国境越えることになった。しかしこの数週間後にワルシャワ武装蜂起起こった同道した親友ティトゥス闘いに加わるため帰国したが、ショパン両親ティトゥス説得に応じて芸術家として使命全うすべくヴィーン向かった
 しかし、カトリック牙城であるヴィーン居ながらクリスマス一人で過ごす寂しさと、祖国情勢不安は、ショパン格別郷愁へと駆り立てた。この《スケルツォ中間部現われるポーランドクリスマス・キャロル眠れ幼子イエス〉は、まさにその表れである。
 ここで旋律を担うオクターヴ跳躍の音型は、実はA部分第2主題末部、右手高音予示されている。とはいえ、A部分とB部分関連は、ソナタ形式の「展開部」ほどには明確でない。むしろ、調、テンポ雰囲気何もかも対照的で、互いに引き立てあう。
 なお、この作品について、ショパン熱狂的な支持者であったシューマンは、「《冗談》が黒いヴェール被って歩き回るなら、《真摯》はどのように装えよいのか」と、タイトル対す困惑表明している。



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