A型およびB型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/04 21:37 UTC 版)
「ニーマン・ピック病」の記事における「A型およびB型」の解説
A型およびB型は、神経組織の細胞膜を構成するリン脂質であるスフィンゴミエリンが蓄積することによって生じる。 神経線維は、細胞体と軸索によって構成されている。軸索にはミエリンと呼ばれる絶縁性のリン脂質が存在しており、これによってヒトは中枢神経系などを保護し、伝導速度を確保している。このミエリンを構成するのがスフィンゴミエリンであり、その量のバランスを合成経路と分解経路によって保っている。スフィンゴミエリンの代謝経路では、細胞内のリソソームに存在する加水分解酵素の一つである酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM、あるいはスフィンゴミエリン・ホスホジエステラーゼ;SMPD)が重要な役割を果たしている。酸性スフィンゴミエリナーゼはホスホリパーゼCの一種であり、スフィンゴミエリンの一部を除去しセラミドへと分解する。 ニーマン・ピック病A型,B型の原因は、遺伝子異常によって酸性スフィンゴミエリナーゼが欠損することである。代謝されずに残ったスフィンゴミエリンが、神経細胞や除去しようと集まったマクロファージに蓄積する。集まったマクロファージは脂質の小滴や粒子であふれ、細胞質内に細かい空胞や泡沫が形成される。このような泡沫が形成されたを細胞をニーマン・ピック細胞と呼ぶ。また、スフィンゴミエリンが分解されないため、分解産物であるセラミドも生じない。セラミドとセラミドをさらに分解してできるスフィンゴシンは、アポトーシス促進作用がある。そのため、ニーマン・ピック病の患者にはアポトーシス耐性をもつ細胞も生じる。
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A型患者の脳は全体的に小さく、特に小脳の障害が強い。一部の神経細胞は膨化し、その内部には大きな封入体がみられることもある。また、神経細胞の髄鞘形成不全を認めることもあり、脱髄を示す。B型においては神経異常はほとんど見られない。脾臓は10倍近くに腫大、肝臓は2倍近くに腫大する。 発症要因が同じであるため、A型とB型は症状が似ているが、より重症で急速に進むのがA型である。そのためA型は急性神経型と呼ばれる。A型は、生後数か月で肝臓や脾臓の腫大から発症することが多い。次いで神経症状として哺乳障害がおこり、この頃に筋緊張低下が生じる。また、反復性の嘔吐がみられるようになり、さらに骨髄や神経節を含むすべての中枢神経系が影響を受けるため、重篤な神経学的異常が生じる。生後6ヶ月以降、運動発達遅滞が明らかとなり、進行すると筋緊張によって生じる痙縮と固縮が著明になる。筋緊張の低下によって、座れるようになってから以降の発達は見られることはなく、首が座るなどのすでにできるようになっていたことも徐々にできなくなっていく。腱反射は弱くなるか、消失することが多い。眼底にはチェリーレッド斑(cherry-red spot)と呼ばれる黄斑が赤く見える症状が約半数の患者で現れる。進行すると、やせて手足が細くなり、腹部だけが目立つようになる。痙性などの症状も現れ、周囲への反応もなくなる。皮膚が黄色や黄土色を呈し、黄色腫が生じる場合もある。通常、生後3年程度で死に至る。 B型では内臓腫大や肝硬変をきたすが、神経学的症状は出現しない。1歳から2歳ごろに肝脾腫で発見され、肝硬変を呈するが、成年期まで生存することがある。A型ではほぼ同じような発症年齢、臨床経過をたどるのに対し、B型ではばらつきが大きい。通常の健康診断などによって乳児期から幼児期に発見されることもあれば、成人になってから脾腫から診断される例もある。肝脾腫は小児期には目立つが、発育とともに目立たなくなる。ほとんどの例で、肺レントゲン像において肺浸潤影などの所見がみられる。さらに年を重ねると労作時に呼吸困難、肺性心(心臓の右心室肥大)が生じることもある。神経症状が出現しないことが特徴であるが、A型と同じように網膜にチェリーレッド斑が現れる例や末梢神経のシュワン細胞に異常を示す例、小脳性運動失調を伴う例の報告もある。 A型からB型までの症状に多様性がおこる原因は明らかではないが、酸性スフィンゴミエリナーゼ活性の残存の程度が症状の多様性に関連していると考えられている。
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A型は著しく予後が悪く、生後3年程度で死亡する。B型では症状の程度によって成年期まで生存することもある。 治療法として骨髄移植がある。肝脾腫の改善などがみられるが中枢神経には無効であり、死亡が避けられるわけではない。B型でも肝脾腫大の縮小や肝臓内のスフィンゴミエリンの減少などが観察されているが、骨髄移植の有効性は明確に立証されていない。また、異常な酵素の代わりとして正常な酵素を外から補充する酸素補充療法の効果が期待されている。ただし、この療法もマウスの実験段階では中枢神経系への効果は認められず、治療によって生命予後は変化していない。そのため、神経症状のないB型に関しては、2015年現在欧米などで臨床試験中である。そのほかの治療は症状を緩和するための対症療法に限られ、2015年現在、有効な根治療法は存在しない。 2021年、サノフィ株式会社は、ヒト酸性フィンゴミエリナーゼ製剤「olipudase alfa」について、成人および小児における非中枢神経系病変に対する唯一の治療法として、世界で初めて日本で承認申請をしたと発表した。
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