1号機、2号機の廃炉と6号機の新設計画
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「浜岡原子力発電所」の記事における「1号機、2号機の廃炉と6号機の新設計画」の解説
1号機は2001年に11月に全熱除去系配管破断に伴い原子炉を停止した。その後、2002年4月より第19回定期検査を開始した。2号機は2004年2月に第20回定期検査を開始した。その後、1、2号機共2008年3月一杯までの予定で炉心シュラウド交換工事、耐震裕度向上工事が計画された。耐震補強工事は2,3,4号機を含め数百億円の計画で2005年に着手された。 この補強工事の内容は主に冷却水関係の配管のサポート増強、排気塔は地盤を強化し、振動を吸収する大型の油圧機構を設ける内容であり、後に完了予定時期は2011年3月に延期された。 この間、2001年夏より3年後の策定を目標に国の原子力安全委員会耐震指針検討分科会にて、耐震設計指針の見直し作業が開始されていたが、確率的安全性評価の採用の是非などを巡って地震学者と工学者の意見が対立し、策定されたのは2006年であった。そのため、中部電力は指針の改定を待たず、指針策定前の2005年1月、自主的に水平地震動1000ガル(Gal)に耐える仕様とすることを決断した。結局新指針では浜岡の基準地震動は800ガルとなったが、1000ガルという数字の根拠は「従来の600ガルと言う数字の2 - 3割増と言う以上の意味しかなかった」と言う。 なお、1000ガルと言う数字目標には政治的な意味合いもあったことが指摘されている。それは先進国特有の「「何が起きてもまったく問題がない」と周辺住民が納得する水準まで引き上げねばならない」と言う事情である。また中部電力はある雑誌の取材に対して「浜岡原発差し止め訴訟の判決が10月26日にあるだけに、一審敗訴となると逆転ができなくなることもあるわけで、全電力のためにも敗けるわけにはいかないでしょう。裁判に勝つために1000ガルにも耐え得る大規模な耐震補強をしているのです」と述べている。この点は反対派側の推量とも一致している。 この計画に従って3号機以降は必要とされる部位に耐震補強工事を実施し、2008年に完了した。しかしながら、1、2号機は経済性の観点から採算が合わないとされて計画は変更となり、2008年12月、従来の継続使用に代わって6号機新設によるリプレース(取り替え)計画に変更された。 問題は1000ガルという数字の大きさにあった。1、2号機の場合800ガルまでならば、補強工事の期間、費用ともに限定的であり、採算上も実行可能であったが、1000ガルの場合、費用の桁がひとつ跳ね上がることが検討を通じて判明した。特に大きな費用を要するのが、原子炉建屋の免震構造化であり、1000ガル対応のためには必要不可欠と分かってきたのは2008年7月頃のことだった。免震化のためには建屋の横から穴を掘削して土台を構築する必要があった。中部電力独自の強度試算では、1000ガルの地震動であっても、1,2号機の主要な原子力機器には問題が生じないとの結論を得ていたが、結局、下記のような経済性比較から、リプレースを決定した。 1,2号機原子炉建屋補強工事:各1500億円、計約3000億円内訳:免震化等建屋補強工事計1500億円、縦揺れ対策補強工事計1200億円、シュラウド交換工事計300億円 6号機新設コスト:約3500億円 1,2号機廃炉コスト:約900億円(原子力発電施設解体引当金より拠出) その他、ABWRを基本設計とする6号機の出力が1,2号機の合計出力にほぼ等しい点、2機→1機に統合と設備近代化によって運転員数が削減できる点などがリプレース案を有利なものとしていた。 (参考)3-5号機補強工事費:1機当たり数10 - 100億円 日本経済新聞などによれば、このようなリプレース計画の背景には運営費の面から見た経済的問題と、立地候補を失ったという2つの問題が影響を与えている。 中部電力は業界平均と比較し、原子力発電の比率が低位で推移しており、火力発電にて年間発電電力量の7割以上を賄わなければならず、それが業績の不安定要素として重くのしかかっており、2000年代後半の原油価格高騰の影響を受け、2008年7月、29年振りの赤字に転落した。 中部電力は浜岡の補強を計画していた2000年代に、珠洲原子力発電所計画と芦浜原子力発電所計画を中止しており、他に候補地が無くなった。また、両発電所の建設費が不要となったことでリプレースの資金的な折り合いはついた。 法的な強制力こそ無いものの当然のことながら、「(1000ガルと公約した)基準を引き下げることは企業として困難」という事情もあったことを日経新聞の記事は報じている。 このリプレース計画について、朝日新聞は地震発生域での建設であること踏まえ、CO2削減など環境上の要請は認めつつも、「他社の原発から調達する電力量を増やしたり、新たな立地を模索したり、といった代替策を広く検討すべきだ」などと述べた。日本経済新聞も「原発比率をさらに高めるためには、浜岡以外の立地も検討課題となる」と述べている。
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