飼育上の留意点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/26 21:17 UTC 版)
「シベリアン・ハスキー」の記事における「飼育上の留意点」の解説
仔犬の入手に当たっては獣医師など専門家の助言を求め、信頼できるブリーダー(繁殖元)の選定に努めることが望ましい。発情期の監視と精神的なケア・交尾相手の確保などに関する技術および時間のない環境にある飼主(ほとんどの飼主がこれにあたる)は、個体入手前後に去勢手術を施す方策をとるべきである。また、成長期の育成にあたって特に適切な「しつけ」を必要とする犬種であるため、生後1年半以上経過した個体を入手する場合には、入手前環境でどのように飼育されていたかを詳細に確認する必要がある。特に排泄のしつけなど基本的な生活規律については、忍耐強くかつ完全に習得させねばならない。 他犬種同様、誤った愛情からメリハリのあるしつけを怠ったり、常に犬体の要求どおりに餌を与えたり遊びに付合うといった甘やかした育成を行うと、勘違いを起こして自分がその集団(家庭)のリーダーであると自覚してしまい、そのまま成犬になった場合には、自分の意思に沿わない行動に対してやみくもに飼主に吠え付いたり、その家庭の幼児が自分の気に食わない行動をとると安易に噛み付いたり(あくまで仲間内の威嚇なのでじゃれ合いよりもやや強い程度の噛み付きなのだが、子供にとっては充分な脅威となる)するようになり、特に過大な外的ストレスの発生によって情緒不安定になった場合には大型犬であるだけに制御不能となるので充分注意が必要である。家族に小さい子供がいる家庭では、成長期にケージ(籠)内のみで飼育するのではなく、部屋内で育成して飼主がその家庭の長であることを充分認識させ、またケガのないよう注意深く子供に接しさせて早期に子供が家族の一員であることを認識させる必要がある。他に小動物などを飼育している場合についてもこれに準ずる。また家庭内順応の訓練のみでなく、成長期からなるべく外出運動を取り入れて外部環境に慣れさせ、付近に愛犬家が散歩に集う公園などがあれば注意しながら積極的に他犬と接触する機会を設けるのが望ましい。 この犬種はかつてそり犬として重用されて来ただけあって、極寒地における長時間の激しい作業にも耐えうる体力・持久力を有する。特に成犬では相当な運動量が必要であり、基本的には朝夕各1時間以上の早足散歩・ジョギング・サイクリングなどに同伴させることが最低限の目安となる。しつけが行き届いてからは、広敷地の公園や河川敷などに、自動車乗車のしつけができているならたまに遠場の砂浜や高原地帯などに同伴して自由行動をさせると非常に喜ぶ。 また当然ながら、その特性上必要とする豊富な運動量に比例してエネルギー消費や代謝が非常に活発であるため、摂食に際しては、高レベルのタンパク質と高品質脂肪の調和が取れた食事を必要とすることに留意する。逆に、飼育環境下の当犬種で肥満が見られる場合には、極度の運動不足による肉体・精神的ストレス両面において健康上非常に危険な状態にあり、早急な対処(摂食や運動をはじめとする生活習慣の改善および精神的ケア)を必要とする。 当犬種の運動不足によるストレス蓄積は他犬種のそれに比べて非常に大きいため、精神衛生上極めて好ましくなく、無駄吼えや情緒不安定はもちろん、しばしば異常脱毛・消化器官障害・神経障害・悪性新生物(ガン)発生の原因となるなどストレス性の諸疾病を誘発することがあるため充分な注意が必要である。 ツンドラ気候が原産地の犬種だけあって、極寒に耐えるのに適した皮下脂肪と豊富な体毛を備えており寒冷地(北海道や東日本の山間部など)での飼育には非常に適しているが、熱帯〜亜熱帯地域や、夏季に猛暑となるCfa(日本の半分以上を占める)地域での飼育は体調管理上好ましくない。酷暑に対しては極めて脆弱で、夏季には犬舎を日陰など涼しい場所に配置して適宜犬舎に大き目の氷袋や保冷材を置いて冷房してやったり、あるいは室内冷房を行っている家庭で余裕がある場合には日中の猛暑時間帯に玄関内に置いてやったり、毎日の運動についても日の出直後の早朝や夕刻ないし街頭照明の整った地域では早めの夜間など、比較的冷涼な時間帯を選んでやるなどの配慮が必要である。猛暑下に適切な涼をとらせぬまま放置し続けると、これに耐え切れずに機会があると飼主のもとを捨て、少しでも過ごしやすい環境を求めて家出放浪する個体が散見されるので、充分な注意が必要である。また体質上、換毛期には膨大な脱毛を見せるので、毎日のブラッシングによる手入れやこまめなシャンプーを施すことにより脂漏症等の発生がないよう気を配る。 付近に仲間を認識できない孤独な状態に長時間放置されると、習性上仲間に呼びかけるために遠吠えする傾向があり、度がすぎると近所迷惑となる恐れがあるので、家族がくつろぐリビングルーム内が見える場所に犬舎を設けたり、過ごしやすい季節には窓を多く開放して家族の体臭や家庭臭が鼻元に届くようにしたり、定期的に好奇心を満たすに足る新しい玩具を与えるなど、孤独を感じさせないような配慮が必要である。遠吠えが聞こえる度に毎回すぐに相手をしに行ってやる行為は、吼えればすぐに仲間が来てくれると自覚させてしまうので、まったく逆効果であることに留意する。 当犬種は比較的疾病に罹患しづらい犬種ではあるが、股関節やヒザ関節を中心に骨格・関節系の疾患やケガ、角膜の栄養障害・白内障・緑内障などの眼球系疾患を好発する傾向がある。このため、肉体的健康管理にあたっては他犬種同様の感染症の予防接種を受けさせるだけでなく、検診時には触診のほか特に骨格系検診・眼科検診も受診させるように心がける。
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