統合・プロリーグ発足までの課題
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「プロリーグ構想 (バスケットボール)」の記事における「統合・プロリーグ発足までの課題」の解説
2016年9月22日に、完全プロリーグである『B.LEAGUE』が発足したが、悲願だった国内のトップリーグ(NBL・bjリーグ)の統合において様々な課題が生じていた。 レギュレーション等の一本化 bjリーグはJBLスーパーリーグを反面教師としたプロリーグを標榜していたため、上記のようにレギュレーションなどの違いが多々見られた。そのため、リーグ統一に当たってはリーグ間で協議を重ね、理想に近いものに変えていく必要があった。 プロ化反対派 上記の日本協会役員刷新に伴い、完全プロ化及びbjリーグとの統合に反対する役員は減少したが、一方でJBL→NBL(当時)に参加していた企業チームの中にはアイシン、トヨタ自動車、東芝のように頑なに反対しているものも少なくなかった。そんな中、当時JBLに所属していたオーエスジーは2008年からbjリーグに転籍し、プロクラブ「浜松・東三河フェニックス(現:三遠ネオフェニックス)」が発足した。また、Bリーグ発足において、トヨタ自動車は三井物産の子会社との共同出資による運営会社(トヨタアルバルク東京株式会社)の設立などで解決した。中でも東芝は頑なに反対しており、当時の東芝は所属している日本人選手全員が東芝の社員のままだったという。こうした事情もあり、JBL・NBLに移行する際もこれらの企業チームに妥協する形で完全プロ化を断念した経緯がある。企業が反対に回る理由として興行権を行使するに当たっての諸経費、試合数増加による遠征負担及び選手・指導者とのプロ契約にかかる報酬 が増大するのを嫌い、一方で企業の多くはサッカーやモータースポーツなど他のプロスポーツに関わっていてバスケットボールまで手が回らず、加えて長引く不景気もあり本業以外の支出を極力抑制したい各企業はプロ化に及び腰となっていた。協会側はこれらのチームを説得してプロリーグ参加へ方針転換させると見られるが、無理に参加を強いることはしない方針であるため、場合によってはこれら企業チームの不参加となる可能性もあった。また、反対派の意見にはオリンピックの商業主義に対する批判も少なくなかった。また、上記の企業名排除に反対するクラブの問題も挙げられていた。 環境整備 新リーグをトッププロリーグとして成立させるためには一定の環境整備も重要となる。bjリーグ球団及びJBL→NBLプロチームはJBL→NBL企業チームより劣悪な環境の中で活動しているケースが多かった。そのため、アイシンシーホースが長らくトップに君臨するなど企業チームがプロチームより実力が上となる逆転現象も起こっている。プロチームの場合、上記のように興行収入がなければチームが成り立たず、有力スポンサーのないチームは経費削減のため練習場の確保などもままならず、選手の収入も(サラリーキャップが敷かれているとは言え)JBLプロの日本代表クラスを除けば全体的に低水準だった。またbjリーグにおいては、プロチーム運営会社の経営状況も全体的に厳しく、観客動員の伸び悩みやスポンサーの撤退、大震災の発生などによって活動休止に追い込まれるケースもあった。環境向上にはリーグ全体で収入を増やすのも大事であるが、協会及びスポーツ界全体、行政などのサポートも必要不可欠である。 さらに、クラブチーム単位においても経営難であることが示唆されていることも挙げられる。2012年-2013年シーズン、bjの大分ヒートデビルズ(現:愛媛オレンジバイキングス)の運営会社「大分ヒート」が経営破たんし、選手の給与未払い問題に発展。これにより外国人選手や一部の日本人プロ選手が退団するなどした。この後大分ヒートは経営から撤退しbjリーグがリーグの安定運営を目的として設立した一般社団法人「テンポラリーゲームオペレーション」(TGO)に事業譲渡 し、そのシーズンは間接的ながらbjリーグの管理下での経営となった。あくる2013年-2014年シーズンから新法人「バスケで」を大分県バスケットボール協会の役員が中心となって設立し、今日に至る。なお、「バスケで」に譲渡後も、経営難は解消されないまま続いたため、2015年4月に愛媛県の学校法人河原学園と、その傘下の関連会社・ケービーシートータルサービスに経営権を譲渡することを決め、現行リーグ最終となる2015-16年度のシーズンはチーム名の「ヒートデビルズ」を維持したうえで、愛媛県をセカンドホームと位置付けて活動(当初は「大分ヒートデビルズ」とする予定だったが、ダブルホームタウンを定義づけるために「大分・愛媛ヒートデビルズ」に改称した後、Bリーグが発足した2016年以降は、ホームタウンを愛媛県に一本化し、「愛媛オレンジバイキングス」となった。)、2016-17年の新リーグ移行後は愛媛県にホームタウンを完全移転させて活動する方針としており、「バスケで」は新たに大分県を本拠地とする新チームの結成を目指し、まず地域リーグからの活動を念頭に取り組むとしている。 2014年-2015年シーズン、NBLでパナソニックトライアンズを引き継いだ和歌山トライアンズが前年度(2013年-2014年シーズン)の準優勝を記録したことで、選手に対する出来高払いが支払われていないことが分かった。チームは「支払いの準備をしているが資金がなく、調達のめどが立っていない」としている。同チームは大半が出来高払い契約で選手を雇用しているが、経営難を理由に通常の給与は支給されながら、報酬が未払いの状態となっていた。なお和歌山トライアンズは資金難と、チームの活動が事実上休眠状態であることを理由に、新リーグ第1回となる2016-17年度シーズンの参加承認は見送られる とともに、NBLについても2015-16年度のリーグ戦参加も認められないことが決まったが、今後も将来の新リーグ参加を念頭に活動を進めるとしている。 同シーズン、同じく当時のNBLのつくばロボッツ(現:茨城ロボッツ)を運営するいばらきスポーツアカデミーも経営難を理由として、NBLの直轄管理で運営を行い、選手の給料についてはNBLが支払うことを発表した。 統合断念説 朝日新聞2011年2月17日付けによると、2013年の新リーグ旗揚げ構想について「事実上断念した」と報道された。朝日の取材に答えた日本協会のある幹部は「新リーグの計画案が議決されず、2013年に一気にプロ化することは難しい」と語っており、プロ化を反対する日本リーグ所属の一部実業団チームからも説得ができなかったという。またbjリーグ側も新リーグの完全プロ化に疑問があるとして、不安視する意見もあった。結局設立されたNBLは完全プロ化を断念し、bjリーグとの統合もならなかった。こうして後の完全プロリーグであるB.LEAGUEが誕生するのは2016年まで待たなければならなかった。
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