米国著作権法の主な改正点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 21:19 UTC 版)
「デジタルミレニアム著作権法」の記事における「米国著作権法の主な改正点」の解説
DMCAの成立により、著作権法 (合衆国法典 第17編、DMCAと区別するため以下「17 U.S.C.」と表記) に対して加えられた主な改正点は以下の通りである。 コピーガードを始めとする技術的保護手段の回避禁止(英語版) (17 U.S.C. 第12章: 著作権保護および管理システム 《第1201条 - 第1205条》の創設) 著作権侵害コンテンツがウェブサイトなどに投稿された際、そのサイト運営者などが免責される条件を規定 (17 U.S.C. 第512条、通称告知と撤回手続(英語版)の創設) 応用デザインの一部を保護 (17 U.S.C. 第13章: 創作的なデザインの保護 《第1301条 - 第1332条》の創設) 著作権や貸与権を有しない第三者がコンピュータ・プログラムの保守に携わる際のライセンス許諾処理について規定 (17 U.S.C. 第117条の拡張改正) 著作権者の排他的権利 (独占性) に一定の制限をかけ、著作物の利用を促進する例外規定の拡充 (17 U.S.C. 第108条など) 一般的にDMCAと呼ばれるものは単一ではなく、4本の改正法案が統合されて構成されていることから、DMCAの各章に対応する個別4法案の名称が用いられることもある。なお、「DMCA 第512条は...」「DMCA 第1202条の...」などの表現が一部見受けられるが、下表のとおり改正立法たるDMCAそのものにはこれらの条項は存在しない:2。DMCAによって改正・追加された、17 U.S.C. の第512条や第1202条と混同した用法が一部存在することに注意が必要である。 DMCA章・条DMCA 章・条の題名 (試訳)対応する17 U.S.C. 側の改正点などデジタルミレニアム著作権法 (DMCA) の全体構成Title Ⅰ (第1章)WIPO諸条約の履行第101条略称 DMCA 第1章はWIPO著作権並びに実演・レコード条約実施法(英語版) (WIPO Copyright and Performances and Phonograms Treaties Implementation Act) の呼称使用可。 第102条テクニカル修正 (外形的な文言修正の意) 「条約」の文言が含まれる17 U.S.C. 第101条 (定義)、第104条 (保護対象者・要件)、第411条 (USCOへの登録) を修正。 第103条著作権保護システムと著作権管理情報 17 U.S.C. に第12章を新設。第1201条ではコピーコントロールを始めとする著作権保護の技術的手段を回避禁止としつつ、リバースエンジニアリングや非営利図書館での使用など一部例外を認める。第1202条は著作権管理情報の除去・改変を禁じる。これらに違反した者に対し、民事訴訟 (第1203条) ないし刑事手続 (第1204条) をとることができる。 第104条Eコマース発展および技術革新を踏まえた著作権法および改正の影響分析 Eコマースおよび技術革新が17 U.S.C. 第109条 (権利移転の例外規定) と第117条 (コンピュータ・プログラムの例外規定) に及ぼす影響について、著作権局長および通信情報担当商務次官が分析・報告する。 第105条施行日 n.a. Title Ⅱ (第2章)オンライン著作権侵害にかかる免責第201条略称 DMCA 第2章はインターネット著作権侵害責任明確化法 (Internet Copyright Infringement Liability Clarification Act) の呼称使用可。 第202条著作権侵害の免責 17 U.S.C. に第512条 (ノーティスアンドテイクダウン手続) を新設。 第203条施行日 n.a. Title Ⅲ (第3章)コンピュータ保守・改修にかかる著作権の例外規定第301条略称 DMCA 第3章はコンピュータ保守競争保証法 (Computer Maintenance Competition Assurance Act) の呼称使用可。 第302条著作権の排他的権利の制限; コンピュータ・プログラム 17 U.S.C. 第117条 (コンピュータ・プログラムの例外規定) の文言修正など。 Title Ⅳ (第4章)その他規定第401条特許商標庁長官(英語版)および著作権局長(英語版)に関する規定 特許法 (35 U.S.C.) 第3条(b)に規定された商務省次官に関する文言削除。政府組織及び職員規定 (5 U.S.C.) 第5314条の修正。著作権法 第701条 (著作権局の任務) の修正。 第402条一時的固定物 17 U.S.C. 第112条 (一時的固定物にかかる排他的権利の例外規定) の文言修正など。 第403条著作権の排他的権利の制限; 遠隔教育 著作権法とは別にUSCOが遠隔教育の実現に向けた勧告 (recommendations) を提出することを義務付ける。 第404条図書館および公文書館に適用される例外規定 17 U.S.C. 第108条 (図書館・公文書館の例外規定) の修正。 第405条音声録音および一時的固定物の排他的権利の範囲 17 U.S.C. 第114条 (録音物の例外規定) およびの第1002条 (コピー制御装置の組み込み) の修正。 第406条映像著作物の権利移転に関する契約上の義務前提 司法及び司法手続 (28 U.S.C. ) に第4001条を新設・挿入。 第407条施行日 n.a. Title Ⅴ (第5章)創作性の認められるデザインの保護第501条略称 DMCA 第5章は船型デザイン保護法 (Vessel Hull Design Protection Act) の呼称使用可。 第502条創作性を有するデザインの保護 17 U.S.C. に第13章を新設し、応用デザイン保護の一部がスイ・ジェネリス権(英語版)として認められた。 第503条条文補整 DMCAによって創設・修正される条文の番号や位置などに言及。 第504条当章の影響に関する共同調査 DMCA施行後、特許商標庁長官(英語版)と著作権局長(英語版)の共同責務において、影響分析を上院および下院に提出。 第505条施行日 n.a. これらの改正の背景には、DMCA成立の2年前に署名されたWIPO著作権条約 (WCT) とWIPO実演・レコード条約 (WPPT) がある。しかしながら、当時既に米国著作権法はWCTとWPPTで定められた権利保護水準の一部は満たしていた。したがって条約履行はDMCAの一目的でしかなく、Eコマースやデジタル著作物のネットワーク流通を促進しつつ、著作物の保護を強化するというより多角的な意図を以って連邦議会はDMCAを成立させた。その結果、DMCA 第5章 (船型デザイン保護法) のように、デジタル社会対応や著作権と直結しない改正も含まれている。 DMCAのうち、特に技術的保護手段の回避禁止 (第1章) とノーティスアンドテイクダウン手続 (第2章) が知られていることから、これら2点について以下詳述する。
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